[イニシエーション(initiation)],[ユング派のカウンセリングとイニシエーション]

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イニシエーション(initiation)


ユング派のカウンセリングとイニシエーション

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イニシエーション(initiation)

イニシエーション(initiation)

イニシエーション(initiation)とは、『通過儀礼・加入儀礼・成人儀礼』のことであり、社会構成員(集団成員)の社会的身分(年齢・立場・役割)の移動に伴って行われる儀式のことである。

イニシエーションという言葉の概念的な起源は、ベルギーの民俗学者ファン・ヘネップ(1873~1957)の考案による"rites de passage(仏)"という概念である。

イニシエーションは、共同体社会を構成する人類全般に見られる文化の一様相であり、『子どもから大人への移行期・外部の集団から内部の集団への移行・社会的地位の大きな変化』などに行われる『苦痛・恐怖・苦難・試練』を伴う特殊な儀礼のことを意味する。

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未開文明社会におけるイニシエーションは、先進文明社会の価値観から、野蛮で人権侵害的な行為として非難されることがある。身体の傷害や極度の恐怖、性的な暴力、イスラム圏のFGM(Female Genital Mutilation:女性の陰核切除儀礼,女性割礼)などのイニシエーションに対して、先進文明社会に生きる人々がどのような価値判断をすべきなのか、どういった形で啓蒙や介入をすべきなのかという事については様々な議論がある。

人権思想が普及した現代社会で行われなくなったイニシエーションには、『抜歯・指や耳の切断・極太のピアッシング・処女膜の貫通・首や唇、耳たぶへの変形・頭蓋骨の変形』などがあり、そのイニシエーションを行う象徴的な意味は『死からの再生』であると文化人類学などでは考えられている。

現代社会における典型的なイニシエーションは、成人式や進学のための受験、新入生歓迎式、部活動における先輩から後輩への指導教育、新入社員の入社式と訓戒などであるが、それらはかつての未開文明のような肉体的な苦痛や精神的な恐怖を伴いものへ変質している。しかし、一般的にイニシエーションが有効に機能する為には、『一定の精神的緊張感・厳粛な儀礼式典の雰囲気・成長した自己の内省的自覚』の要素が不可欠なものとされる。

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ユング派のカウンセリングとイニシエーション

ユング派のカウンセリングとイニシエーション

ユング心理学(分析心理学)のカウンセリングでは、夢や想像の世界において象徴的な死を体験させるイニシエーションの要素を重視している。ユング心理学を応用したカウンセリングでイニシエーションが意識される時とは、無意識の世界からのイメージや連想を通して『過去の問題を抱えた自分・かつての未熟だった自分・過去の記憶に束縛されていた自分』を象徴的な死へと導く時である。

『象徴的な死』を経験することで『現在の問題を解決した自分・障害や困難に対処できる自分・過去の苦悩を克服した自分』を新たに誕生させることが出来ると考えるのである。受難や試練のカウンセリングを擬似的なイニシエーションに見立てることはできるが、象徴的な死を体験できるほどのカウンセリング場面を構成することは至難である。

ユング派の療法家であるカウンセラーの技量もさることながら、クライエント側のアクティブな想像力や無意識への興味がなければイニシエーションは体験できないし、また治療的意義も乏しい。

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また、イニシエーションを明確に意識したカウンセリングは、宗教的なセラピーと心理学的なセラピーの中間領域にある心理体験であると言ってよく、科学的根拠や統計データなどに基づくカウンセリングとは異質なものとして認識される。

発達心理学との関連では、『現代におけるイニシエーションの消滅』は、大人(成人)と子ども(未成年)の境界線を曖昧化する作用をもたらし、青年期前期(思春期)の長期化やモラトリアムの遷延の一因になっていると考えられる。

エリクソンのいうアイデンティティ拡散の心理的問題や就業拒否、NEETなどの問題も、『大人として社会的役割を享受するイニシエーションの消滅』が何らかの形で関与していると推測できるが、それは、現代社会の物質的な豊かさや親子関係の権威性の弱化(厳格な父性の衰退)を反映したものでもある。

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