このウェブページでは、[イド(id)]と[意図的カウンセリング(intentional counseling)]の心理学キーワードの用語解説をしています。
イド(id)
意図的カウンセリング(intentional counseling)
イド(id)
『イド(id)』とは精神分析用語であり、フロイトの自我構造論における『エス(es)』と同義の言葉である。ラテン語でイド(id)、ドイツ語でエス(es)と呼ばれる心的装置の原義は『それ』である。『それ』という指示代名詞で抽象的に名指しせざるを得ない精神機能(心的装置)をイド(エス)という。
イドは、言語化・象徴化(シンボル化)することの出来ない『原初的な欲動の源泉』であり、倫理判断や論理的枠組みのない無秩序な欲望の坩堝だと想定されている。食欲・性欲・睡眠欲といった生理学的な本能的欲求(原始的欲望)は、無意識領域のイド(エス)の領域の力動から生み出されてくる。
イドには、人間の生の本能(エロス)の源泉としての生理学的なエネルギーである『リビドー』が横溢していて、イドにあるリビドーをそのまま行動化すれば社会規範(法・倫理)から逸脱してしまう事となる。
フロイトの精神分析学の自我構造論(第二局所論,心的装置理論)では、無意識領域にエス(イド)と超自我(superego)を対応させ、意識領域に自我(ego)を配置している。
現実検討力(現実吟味力)を司る『自我』は、動物的本能を実現化しようとする『イド(エス)』と倫理規範を強制する力として働く『超自我』の力動的な葛藤を調整することで社会環境や自己の良心、現実的利害に適応した行動を取ろうとするのである。
意図的カウンセリング(intentional counseling)
アレン・アイビィ(A.E.Ivey)が構築したマイクロカウンセリングの『折衷的応用性・技術的多様性・問題解決力』に着目した場合に、『意図的カウンセリング(intentional counseling)』という呼称を用いることがある。
意図的カウンセリングの意図(intention)とは、『クライエントの抱える問題の解決の意図』という事であり、クライエントの問題の種類・性質・深刻度(重症度)に適応できる複数の技法と理論に精通し習熟していることが前提とされるものである。
問題解決を目標とする意図であることから、単一の理論の正当性や自分の得手とする技法の有効性に固執する態度と対極にある折衷的カウンセリングのことを意味する。一つの技法や理論をクライエントに適用してみて、一定期間を経過しても全く肯定的な変容や治療的効果が現れない場合には、それ以外の技法や理論を適用して効果を測定してみる。
カウンセラーの柔軟性や可塑性を最大限に機能させ、人間に関連する広範な学知と技法の習得に最善を尽くすというのが、意図的カウンセリングの基本態度である。その最大のベネフィットは、応用可能性の広さと人間理解の多様さにある。
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