帰属理論と性格特性の推論(対応推論理論)

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帰属理論の研究目的と性格理解に役立つ対応推論理論


性格特性の推測の誤りや原因帰属のエラー

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帰属理論の研究目的と性格理解に役立つ対応推論理論

『帰属理論(Attribution theories)』とは“行動・事象の結果”についてその“原因”をどこに求めるのかを明らかにする理論である。行動・出来事の原因について、『自分自身(内部要因)』に求めるか『他人・環境(外部要因)』に求めるかによって、その人の大まかな性格特性を推測することもできる。

“失敗・事故・トラブル・喧嘩”などのネガティブな出来事の原因を、『自分自身(内部要因)』に求めやすい人は“内向的・自罰的・自責的・抑うつ的な性格特性”を持っていることが多く、悩みや問題を自分だけで抱え込みやすい。反対にネガティブな出来事の原因を、『他人・環境(外部要因)』に求めやすい人は“外向的・他罰的・批判的・自己肯定的な性格特性”を持っていることが多く、悩みや問題があっても自分以外の原因を探してストレスを緩和しやすい。

帰属理論の主な研究目的とその役割は、以下の2つに大きく分けることができる。

1.因果関係の推論……行動・出来事の結果の原因を何(どこ)に帰属させるのかという理論。

2.性格特性の推論……その人の行動からどのような性格特性(態度の特徴)を持っているのかを推測する理論。

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心理学者のE.E.ジョーンズK.E.デーヴィスは、『人間の行動』と『人間の性格特性・態度』を照らし合わせて推測する『対応推論理論』を提唱したが、これは他者をどのように見るかという対人認知から内的特性(性格上の特徴)を合理的に推測するものであった。E.E.ジョーンズらは被検者の『行動の意図の有無』をまず調べて、『複数の行動の意図(複数の予測される結果)』の中から最も妥当なものを当てはめることで、『その人の内的特性』を推測しようとした。

対応推論理論では、『実際に選択された行動A』『実際には選択されなかった行動B』の間の違いが問題視され、行動Aと行動Bの間の『非共通結果』が多くあるほど、その人の内的特性(性格特性)が合理的に推測しやすくなるのである。例えば、『困っている人を助ける行動A』と『困っている人を助けない行動B』の間には、どちらの行動を選ぶかによって非共通結果が多くなるので、行動Aを選んだ人ほど『優しくて思いやりがある人・共感性が強くて情け深い人』といった性格特性があるという風に推論されやすくなる。

心理学者のY.トロペは人間の行動・表情からその人の性格特性を推論するための『二段階モデル』を考案した。この二段階モデルは、相手がどのような行動・表情をしているのかを認識する一段階目の『行動・表情の同定』、同定した行動・表情からその人がどのような性格特性や態度を持っているかを推測する二段階目の『性格特性の推論』を分けて考える性格理解のためのモデルである。

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性格特性の推測の誤りや原因帰属のエラー

Y.トロペの性格特性の推論についての『二段階モデル』では、『行動・表情の同定をする一段階目』『性格特性の推論をする二段階目』を分類したが、一段階目では原因や状況の要因はあまり考慮されないが、二段階目では原因や状況の要因が重視されやすい。例えば、家族とのつらい別離を経験した男性が泣いていても『悲しみの表情・泣きの行動』が同定されるだけで、その男性がどういった性格特性を持っているのかというところまでは『一段階目のモデル』では認識されないのである。

しかし、家族との別離という状況要因が明らかになる二段階目では、『家族思いで共感性の強い男性・人間関係を大切にしている男性』といった性格特性の推論が働いて、『つらいことに耐えられない弱い男性・脅されて怖がっている泣き虫な男性』といった方向での間違った推論は抑止されやすくなる。悲しみの感情だけに限らず、怒り・喜びといった感情やその表情が同定された場合でも、『なぜ怒っているのか(なぜ笑っているのか)の状況要因や原因の解明』によって、その人がどのような性格特性・態度を持っていると感じるかは大きく変わってくるのである。

自分にとっての出来事の原因を推測する『帰属理論』、外観的な行動から性格特性・態度を推測する『対応推論理論』では、『原因帰属のエラー』『対応バイアスによる推論の誤り』が問題になることがある。

例えば、行動や結果を引き起こした原因として『個人の内的要因(性格特性の要因)』ばかりが過度に注目されることで、『真の原因としての環境要因(状況要因)・他人の言動』が軽視されたり無視されたりしやすくなってしまう。その結果、『原因帰属のエラー』『対応バイアスによる推論の誤り』が起こってしまうのである。

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ある行動・出来事の原因には、『個人の内的要因(性格特性の要因)』だけではなくて『環境・状況の外的要因(他人の言動に影響される要因)』も関係しているはずなのだが、人間の性格特性・態度を推測することを研究目的とする“対応推論理論”では、人が何かの行動をすればその原因がすべて『個人の内的要因・性格特性』に求められてしまいやすくなる。

人間の行動を観察してからその人の性格特性を推測しようとする『対応推論理論(行動と中身を対応させて推論する考え方)』では、ある人の『本音・本当の性格』『建前・演じている性格』との区別をつけることが殆どできないという理論上の欠点がある。

D.T.ギルバートは、観察可能な行動からすぐにその人の固定的な性格特性がイメージされてしまうという『対応バイアス』の存在を指摘した。更にギルバートは、出来事や行動から原因が何なのかを選択するという『帰属理論』に反駁して、『行動観察・カテゴリー化』の後に原因が外的要因(状況)なのか内的要因(特性)なのかを選んで帰属するのではないとし、行動を観察してカテゴリー分類をした後には半ば自動的に『特性(性格特性)・態度の推論』が起こってしまうのだとした。

つまり、D.T.ギルバートの原因帰属理論の仮説では、激しく怒っている人を見た場合には、『怒りっぽい性格だから怒っている(内的要因への原因帰属)』『怒っても仕方がない状況・原因があったから怒っている(外的要因への原因帰属)』という二つの原因のどちらかを選ぶのではなく、ほぼ反射的・自動的に前者の『怒りっぽい性格だから怒っている(内的要因への原因帰属)』という性格特性の推論が為されてしまうのである。

性格特性の推論に誤り(エラー)があると気づいた場合には、事後的に『状況要因・環境要因・他者の言動といった外的要因』が考慮されて『推論の修正』が行われることがあるが、多くの人は『対応バイアス・固定観念』の影響によって初めに思い浮かべた性格特性の推論・仮説を修正することが出来ないまま(相手のことを誤解したまま)で終わってしまう。

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