“社会的な動物”である人間の行動原理を研究する興味深い社会心理学

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アリストテレスが述べたように、「人間」は他者とお互いに協力したり競争したりしながら生きる“社会的な動物”ですから、人間の行動メカニズムを解明する為には社会的環境における他者との関係性と相互作用を考えていかなければなりません。

個人心理学では、人間個人の環境との相互作用に注目し、個人が生活環境からどのような影響を受け、その影響を受けた個人が環境に対してどのような作用を及ぼすのかについて科学的に研究していきます。

他者から受ける影響よりも、環境や物理的刺激から受ける影響によって、個人の行動がどのように生起して変化していくのかを究明していこうとするのが個人心理学です。

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一方、人間が社会的な動物であることを前提として、個人の行動(心理)を他者に対する刺激あるいは反応として捉え、他者との相互的作用がどのような行動を生み出すのかを観察・実験によって科学的に究明していこうとする分野を、個人心理学に対して「社会心理学」と呼びます。

社会心理学は、更に大きく分けて、「社会学的社会心理学」と「心理学的社会心理学」に分類されます。

社会学的社会心理学は、社会学的な研究方法を基盤として、社会的諸要素や社会的現象が人間の行動の生起にどのように作用するのかといった立場から研究する社会心理学です。人間の行動メカニズムを、政治的・経済的・社会的な条件との相関関係によって明らかにしていこうとする学問だといえます。

一方、心理学的社会心理学は、心理学的な研究方法を基盤として、他者の行動や態度によって引き起こされる個人の心的過程を分析することによって、人間の行動メカニズムや心理機構を究明しようとする社会心理学です。社会的・環境的条件も考慮に入れますが、社会学的社会心理学ほどに社会学的な視点を強く導入することはありません。

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社会心理学は、『個人と集団の相互作用』を研究する学問で、その相互作用を引き起こすコミュニケーションや政治的・経済的・社会的条件、集団(組織)形成過程などを調査・観察していくことで、個人の行動が他者にどのような影響を与え、どのような過程を経て集団を形成していくのかを解明していきます。

社会心理学は、その調査研究活動を行う対象範囲によって以下のレベルに分けられます。

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恋愛関係、友人関係にしても、夫婦関係や職場の人間関係でも、私達個人の行動・態度・感情・行動が、他者の行動や思考に何らかの影響を与えることによって関係が生まれたり、関係が終わりを迎えたりします。

社会内で結ばれる人間関係の生成消滅や変化過程を研究するということは、個人と個人の間で取り交わされる相互作用や様々なメッセージの交換の影響について調査して考えていくということです。個人と個人が、様々な言葉や行動による影響を与え合っていく過程において、今までになかった集団が形成されたり、社会現象が生起してきたりもします。

私達は、他者と出会った時には、その相手が『どのような人間であるか?好意を抱ける人間か、悪意を感じる人間か?』を知覚し、理解して判断していますが、その理解や判断はどのような過程を経て行われているのでしょうか。

外部世界の情報は、一般的に、目・耳・鼻・口・皮膚といった感覚器官を通して知覚されますが、その知覚内容そのものには、『良い・悪い、好き・嫌い、美しい・醜い』といった価値や意味は内在していません。そういった価値や意味を判断する為には、過去の経験・学習・知識・論理などの集積であるスキーマ(認知の枠組み)が使用されることになります。

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過去に、霜降りの牛肉と赤身の普通の牛肉を食べた経験があって、霜降りの牛肉が美味しいという記憶が残っていれば霜降りの牛肉を赤身の牛肉よりも高く評価し判断します。知識と論理によって、数学問題の正誤を判断したり、ある行為や出来事が倫理的に間違っていないかどうかを経験的に判断したりすることも出来るようになります。

対人関係においても、派手・地味などの服装の違いや丁寧・無礼などの話し方、よそよそしさ・馴れ馴れしさなどの態度、内向的・外向的などの性格傾向などを総合的に判断して、過去の対人関係の経験や知識と照らし合わせて自分にとって好ましい人間かそうでないかを判断します。基本的に、自分にとって好意的で何らかの喜びや快感などの利益を対人関係の中から与えてくれる他者に対して、良い印象を抱いたり、高い評価を下したりしやすい傾向があります。

人間は、初めて出会った相手に対して必ず“第一印象(first impression)”を抱き、この第一印象によって相手への対人評価の判断や相手に接する際の態度を大きく左右されることが、多くの心理学実験によって確認されています。この無意識的な何気ない観察と雰囲気によって抱かされてしまう観のある第一印象ですが、ほんの僅かな短い時間の間に感じ取る第一印象にも過去の経験・知識・人間関係から形成されるスキーマ(認知の枠組み)が影響しています。

第一印象は、直接的に観察することは不可能なものであり、相手の表情・態度・言葉遣い・身振り・仕種・雰囲気などの情報を元にして幾つかの特徴的な性質を感じ取る事によって成り立ってきます。

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第一印象で読み取ることの出来る特徴としては、優しいか厳しいか、温厚か冷淡か、積極的か消極的かといった“性格特徴”、やる気があるかないか、精力的か無気力か、元気が良いか落ち込み気味かといった“精力的特徴”、知識が豊富か乏しいか、論理的か非論理的か、頭の回転が速いか鈍いかといった“知的特徴”などがあります。

第一印象は、相手を観察して獲得した“情報”を、過去の経験・学習・知識・論理から形成した“スキーマ”によって判断することで作られていきます。穏やかな口調で、相手に対する配慮のある話をする人に対しては『温厚で優しい性格』であるという性格特徴の判断をして、その人が『きっと温厚で優しい性格の持ち主に違いない』という推測をします。

色々な事柄に積極的に関心を持ち、様々なイベントや活動に進んで参加しようとする人に対しては『エネルギッシュで、何事にも一生懸命なタイプ』であるという精力的特徴の判断をして、その人が『きっと、何事に対しても積極的に取り組む意欲溢れる人に違いない』という推測をします。

会話の中で、多種多様な言葉や専門用語を用いて、淀みなく論理的に話す弁論の才覚に長けた人に対しては、『ボキャブラリー(語彙)が豊富で、論理的な頭脳をもっている』という知的特徴の判断をして、その人が『きっと頭の回転が早くて、知識も豊富な人に違いない』という推測をします。

第一印象から得られる対人評価につながる特徴の理解は、以下のような手順を踏んで行われます。

相手の外的特徴(表情・態度・話し方・話す内容・仕種)の観察→相手の外的情報の獲得→過去の経験・知識・学習・人間関係から形成されたスキーマを介在したその外的情報の判断→相手の性格特徴・知的特徴・精力的特徴の推測

このようにして認識され推測された『第一印象』は、その後の人間関係の中の相互作用によって、その第一印象を覆すような意外な行動や発言、態度が継続して観察されない限りはなかなか変わることがありません。

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