相手にどのような印象を与えていますか?:人格理解と対人評価

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“内包的特性理論”に基づく対人評価では、『優しい・美しい・面白い・楽しい・頭が良い・論理的だ・礼儀正しい・攻撃的・暴力的』といった言語的に理解される第一印象の人格的特徴(性格特徴・知的特徴・精力的特徴)がとても重要なものとなってきます。

内包的特性理論では、言葉で表記される“概念(concept)”は、幾つかの要素を内包していて、その要素と共通的特性を持つ“他の概念(other concept)”と結びつきやすくなっています。

反対に、ある概念の内部に含まれている要素と共通的特性を全くもたない他の概念とは結びつき難い性質を持ちます。

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第一印象で、相手の性格特徴を『心が温かい人』と判断したとすると、その“温かい”という概念が内包する要素と共通的特性を持つ“他の概念”が自然に連想されてきます。

つまり、温かいという印象をはじめに受けた場合には、温かいという概念と共通性や類似性を持つ『優しい・他人への配慮ができる・利己的でない・穏やか・物分かりが良い・協力的』といった特徴が無意識的に連想されてくるという事です。

相手の性格特徴を『冷たい人』と判断した場合には、その“冷たい”という概念が内包する要素と共通的特性を持つ“他の概念(思いやりがない・無慈悲・冷酷・非協力的・愛想がない・偏屈)”が自然に連想されてくることになります。

『頭が良い』とはじめに判断してしまえば、その後に特別な無知や失敗を晒さない限り、その人の知的特徴は、頭が良いという概念と結びつきの強い“他の概念(論理的・博識・専門的・能弁・正確・頭の回転が速い)”という概念・特徴を用いて判断されることになります。

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この事から言えるのは、『第一印象で下された肯定的・否定的評価は、人間の言語的な理解の枠組みによって自然に拡大評価されやすい。相手の人格的特徴を指し示す肯定的な特徴(概念)は、他の肯定的な特徴と結びつきやすく、否定的な特徴(概念)は、他の否定的な特徴と結びつきやすい性質がある。第一印象で否定的な評価を下された場合には、その印象を大きく覆す“思考・感情・態度・行動”を明示的に示して、相手の自分に対する概念的理解を劇的に転倒させなければならない』という事になるでしょう。

私達は、相手との人間関係が長くなればなるほど、相手に対する人格の概念的理解が持続的なものとなり、対人評価は固定的なものとなっていきます。具体的な例でいうと、何年間も親密で気のおけない付き合いをしている恋人や親友に対する『肯定的な対人評価や“信頼できて一緒にいて楽しい”といった人格特徴の理解』は、一般的に持続的で変化しにくいといった特徴をもちます。

何年間も一緒の職場で、自分に対して不条理な叱責や要求をしてくる上司に対する『否定的な対人評価や“短気で自分勝手な振る舞いや要求の多い不快な人物である”といった人格特徴の理解』も、一般的に持続的で固定的な特徴をもちます。

こういった内包的特性理論によって少しずつ持続性や強度を増していく『概念的な人格的特徴と対人評価』は、相手の行動・態度・感情表現・思考内容を事前に予測することに役立ちます。

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この対人理解や対人評価は、悪くすると固定観念や先入見に基づく偏見になってしまいますが、私達は、日常生活の中で、一人一人の個別的な行動・発言・考え・理由・気持ちを綿密に丁寧に質問して理解するようなことは現実問題として不可能です。

その為、私達は、多くの場合、相手の行動・発言・態度などをある程度の期間、観察することによって、『相手がどのような人間であるのか・自分に対して好意的なのか攻撃的なのか・これからどのような対応や態度を相手に対してとるべきなのか』を推測して理解しようとします。

表面的に観察できる『相手の行動・態度・発言』は、内面的な『相手の意図・価値観・動機』と自然に結び付けられて行く為、いつも、攻撃的で批判的な発言を繰り返していたり、他人に対して冷たく思いやりのない態度を取っている場合には、『相手が攻撃的で思いやりの乏しい性格特徴を持つ』という推測や判断につながっていきます。

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本当は、外部から観察できる行動・態度・発言だけでは、相手の内面的な感情・意図・価値観・性格を十分に理解することは出来ません。しかし、社会生活の中では、それぞれが限られた時間の中で人間関係をつくっていかなければならないという種々の現実的制約があります。

その為、自分に危害や不安を与えるような相手よりも自分に安心や利益を与えるような相手と積極的に関係を持とうとする傾向が生まれてきます。

第一印象で、全ての人間関係や対人評価が規定されてくるわけではありませんし、相手に対する印象は、相手の行動・発言・態度・振る舞いと自分の行動との相互作用によって変化していきます。相手からの好意・信頼・愛情を出来るだけ自然に獲得していく為には、『自分の本当の意図・性格・価値観とは異なる相手を傷つけたり否定するような言動を取らない』といった心配りも大切になってくるのではないかと思います。

執筆日:2005/03/22

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