エリクソンの“心理社会的発達理論”と過去に束縛される“アダルト・チルドレンの苦悩”:赤ちゃんの精神発達と『母親からの分離・個体化期』の重要性

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赤ちゃんの精神発達と『母親からの分離・個体化期』の重要性

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エリクソンの“心理社会的発達理論”と過去に束縛される“アダルト・チルドレンの苦悩”

過去の記事で自己愛と対象愛の発達』と『正常な自己肯定感としての自己愛』について説明しましたが、人間の精神発達理論の古典として最も著名で簡潔にまとめられたものに、精神分析学者エリク・エリクソンライフ・サイクル理論というものがあります。

エリクソンのライフ・サイクル理論では、個人の人生における発達段階を8つの段階に分けて、それぞれの段階で達成すべき“発達課題”を設定し、その発達段階で必要な経験と学習を十分にすることによって“獲得できる心理特性”について記されています。エリクソンの発達段階と発達課題の対応、そして、獲得される心理特性は以下のようになります。

(年齢はおおまかな区分であり、発達段階を厳密な年齢で区切ることは出来ません。また、発達課題の成功と失敗は二元論的なものではなく、程度の違いである場合が殆どです。獲得される心理特性についても、本人の主体的な選択でその特性を身に付けないが社会環境には適応できていて心理的・経済的に自立できていれば問題がないという解釈もできます。)

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ライフ・サイクル理論

【発達段階】―【発達課題の成功・失敗】―【獲得される心理特性】

1.乳児期(0歳~1歳半ごろ)―基本的信頼感・基本的不信感―希望

2.幼児期前期(1歳半~3歳ごろ)―自律性・恥や疑惑―意志力

3.幼児期後期(3歳~6歳ごろ)―積極性・罪悪感―何かをしようとする目的を持つこと

4.学童期(6~13歳ごろ)―勤勉性・劣等感―自分は物事をできるという自己効力感

5.青年期(13歳~22歳ごろ)―自我同一性(アイデンティティ)の確立・アイデンティティの拡散―帰属集団への忠誠心や社会への帰属感

6.成人期初期(22歳~40歳ごろ)―親密性・孤立―幸福感を感じる愛の獲得と実感

7.成人期(壮年期)―世代性(生殖性)・自己停滞―世話

8.老年期(60代以降)―自我の統合・絶望―叡智の体現

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『獲得される心理特性』を、私の言葉で多少補ってみますと次のようになります。

1.乳児期……この世界に対する基本的な希望と安心感及びこの世界に存在してもよいという自己受容感覚

2.幼児期前期……自分のことを自分でやろうとする自律的な意志の力

3.幼児期後期……積極的に自分の目的・課題を立てて、それをやり遂げようとする力

4.学童期……勉強やスポーツ、芸術などの自分の得意分野を見つけたり、友達と遊んだり喧嘩したりする人間関係を学び、自分は物事をやり遂げることが出来るという『自己効力感(self efficacy)を獲得する。

5.青年期……社会環境や人間関係における自分の居場所を求めて、心理的な帰属感を得る。 『集団行動への適応を前提とした帰属集団への貢献・忠誠』というアイデンティティのベクトルと『個人の自立を前提とした社会環境への適応・能力の発揮による貢献』というアイデンティティのベクトルがある。

6.成人期初期……自分が愛する大切な他者を見つけ、自分を愛してくれる大事な他者を見つけること。 特別な魅力と愛情を感じる他者(恋人・配偶者・親友)との相互的なコミュニケーションの中で『愛』を通した幸福感の実感を得る。『結婚し家庭を築いて次世代を再生産する喜び、愛すべき配偶者や子どもと生活を共にする安らぎ』のベクトルと『結婚はしないが親密な他者との関係性の中で獲得する喜びや安らぎ』のベクトルがある。

7.成人期・壮年期……自分の世代の後に続く子どもや孫の世代に、知識・経験・愛情を継承する為に努めること。献身的に後世代の世話をして面倒を見るだけでなく、自分の人生で得たかけがえのない経験的な知恵や理論的な知識を語り伝える事。

8.老年期……『死』という終局的な自らの運命を受容し、自身の生涯と存在、人間関係を振り返りその価値を承認する中で、知識や知恵を超えた自分固有の叡智へと接近すること。自己実現・個性化の過程・自我の統合といった抽象的な概念や観念でしか捉えられない『生の目的』に自分なりの回答を見出し、それを深く実感すること。

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エリクソンのライフサイクル理論を引くまでもなく、人間の健全な安定した精神の発達には、乳児期の発達段階を達成して、幼児期の発達段階に向かうというような『段階的なステップを踏んだ発達』が重要になってきます。

例えば、人生に対する希望や安心が全くなければ、友人関係や恋愛関係をうまく結ぶきっかけさえ掴めず孤立しやすくなり、社会に対する過剰な敵意や人生に対する絶望が芽生え易くなります。 勿論、私は既存の社会体制や法規範の虜囚になれというようなシニカルな現実主義の論説を提示しているわけではありません。確かに、世間の常識や固定観念の奴隷になるような意味で社会適応を説くことの危険性は、人類が歩んできた歴史過程を遡れば十二分に理解できることでしょう。 しかし、短絡的な反社会性や感情的な人間憎悪から自己破滅的な行動をとるのはやはり自分自身を不幸に導くだけです。

人生に対する希望を致命的に喪失した最悪の場合には、ニヒリズム(虚無主義)の暗い深淵にはまり込んで、自傷行為や自殺念慮の強迫的な衝動に苦悩する恐れもあります。発達早期の母子関係や人間関係が、なぜ重要なのかというと、『私はこの世界に生まれてきてよかったんだ。私は色々な人たちから愛されて大切にされる人間なのだ』という世界に対する基本的な信頼と肯定を赤ちゃんに植え付けるからです。

もちろん、赤ちゃんの時期にその世界に対する肯定感や自分に対する受容感が獲得されなくても、その後の人生で幾らでもその感覚を経験することが出来ますから『取り返しのつかない問題』という事にはなりません。 また、成人以後に、両親との関係を修復して前向きに人生を生きている人も数多くいます。どうしても両親と理解し合えないというケースでも、他者の愛情や信頼を得たり、自分の基本的価値観を変容させたりすることで、心的外傷を回復し自分の人生の再スタートを力強く踏み出すことは可能です。

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アダルト・チルドレン(機能不全家族で育った成人)という概念は、確かに精神分析のリビドー発達論との関連もあって説得力のあるものですが、その概念や理論に過度に振り回されすぎるのは、心身の健康や人格の成熟にとってよくありません。

アダルト・チルドレンの関連書を読んで、自らがアダルト・チルドレンであるという意識を持っている時には、『幼児期に親との関係がうまくいかなかったから、私の人生や生活は問題が多く、人間関係もうまくいかないのだ。両親から十分な愛情と保護を受けられなかったことが、悲観的で自己嫌悪の強い現在の性格をつくり、挫折やトラブルの多い人生の根本原因となっているに違いない』という信念や態度を持ちやすくなります。

この事自体は、その人の苛酷な成育歴や愛情の乏しい生活環境を考えると仕方のないことだと思いますし、根本原因を時系列で遡っていくと、両親との親子関係の障害や混乱にいきつくことも多くあります。しかし、そういった過去の親子関係や苦痛な記憶の束縛から心理的に解放された時にこそ、人は人格的な成長を成し遂げ、適応的な行動や認知の変容を導いて、幸福な人生の実現に向けた一歩を踏み出すことが出来るのです。

子ども時代に何らかの強烈な心的外傷や不快な生活体験をして、アダルト・チルドレンの問題に深く悩んでいる人は、自分の絶望や困難には終わりがないという風に思っているでしょうし、その深い絶望の苦しみから脱けだすことが容易なものでないことは十分に承知しています。しかし、過去の人間関係の執着を自分なりに解きほぐすことが出来た時に、自分自身の人生を客観的に見つめ直す心の余裕が生まれ、人間関係や社会活動も良い方向に変わっていくという事実も忘れないで欲しいと思います。

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アダルト・チルドレンをはじめとした過去の外傷記憶や人間関係の葛藤に悩む問題のとりあえずのゴールは、『過去の怒り・絶望に支配された現在の心理状態を、未来の受容・希望に向けて転換すること』だと私は考えています。自分の過去や人格、両親を肯定的に受け止められないアダルト・チルドレンの問題を踏まえると、エリクソンが乳児期に獲得するのが望ましいとした『この世界への信頼感、自分の人生への希望』というものが、私たちが意欲的に能動的に生きていく為の必要条件になることがよく分かると思います。

人生の希望は、幼児期にいったん獲得すれば終わりというものではなく、私たちが人生の苦難や挫折に絶望せずに生き生きと生活する為に何度も獲得し実感しなければならないものです。『人生に対する希望と安心』は、精神分析学ではエロス(生の欲望)の根幹を為すものであり、長い人生の過程で私たちに繰り返し訪れる精神的危機や虚無的絶望から私たちの自我を守ってくれます。

希望という漠然とした概念の中には、生を力強く実現しようとする本能的欲求を駆動する種子が宿っていて、この世界で『何かをやってみよう』という気概や意欲を促進してくれます。安心という使い古された概念の中には、この世界で生きて悩んでいるのは私一人ではないという孤独からの解放の種子が宿っていて、『この世界には危険や不快ばかりではない』という世界や他者への信頼や受容を強めてくれるのだと私は感じています。

■参考書籍

エリク・H・エリクソンの他者とのかかわりを中心に展開される発達理論であるライフサイクルは、未だ完成しているとは言い難い。人間はその生涯を通してどのように精神を発達させ、どのような人間関係を様々な人と取り結んでいくのかの基本的理解を得るために、私はエリクソン晩年の書『ライフサイクル、その完結』を推奨したい。エリクソン自身が高齢になってから著した著書だが、彼は老年期の発達課題や老年期における社会的生活のあり方を十分に論じることが出来なかった。この増補版では、妻ジョウンによって『老年的超越』などのテーマが加筆されているので、来るべき高齢化社会において私たちが老年期を如何に絶望せずに行きぬくことが出来るかの参照項とすることも出来るだろう。

赤ちゃんの精神発達と『母親からの分離・個体化期』の重要性

人生全体のライフ・サイクル(生活周期)の発達段階をエリクソンの理論を通して大まかに眺めてきましたが、人間の発達早期(乳幼児期)の母子関係を中心に子どもの発達を研究した精神科医にM・マーラーがいます。

M・マーラーは、実際に多くの小児を観察して発達理論を考案したわけではないシグムンド・フロイトやエリクソンとは異なり、実際の小児精神科臨床の経験を通して、『分離・個体化』の母子関係の変遷概念を中核とする“乳幼児の発達理論”を構築しました。

M・マーラーの乳幼児の発達理論は、母親へのアタッチメントの形成と分離・個体化を中心とした理論ですから、まずアタッチメントの概念について説明します。アタッチメント概念を提出したのは、マーラーと同じく発達早期の母子関係に着目してその重要性を証明しようとした精神分析医のボウルビィです。アタッチメントとは、日本語に訳せば『愛着』であり、特定の対象にぴったりと心理的にくっつくことを意味します。

小さな子どもは、人見知りをしたり、初めて見るモノに不安を感じたりすると母親の後ろに隠れたり、抱きついたりしますが、その親密なぴったりとした母子関係こそがアタッチメントの典型と言えるでしょう。人間は、心理的離乳を成し遂げるまでは、母親や養育者に対するアタッチメントを程度の差はあれ誰もが持っているもので、小さな子どもが誰に対しても全く愛着を持たない場合には、広汎性発達障害をはじめとする何らかの発達的問題やコミュニケーション障害の可能性が疑われる事となります。

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特定の対象へと進んで接近し、接触を求めるアタッチメントは、人間の最も原初的かつ基本的な愛情関係であり愛情のコミュニケーション形態であると言えるでしょう。乳幼児のアタッチメントに基づく接近行動には、『吸う(sucking)』『しがみつくclinging』『後を追うfollowing』 などの行動があり、不満げに泣いたり、可愛く微笑んだりして『お母さんやお父さんに構って欲しい、自分に関心や愛情を向けて欲しい』という信号を発するのです。

赤ちゃんに向き合うお母さんは、特別にアタッチメントの形成を意識する必要はありませんが、心の何処かに『アタッチメントは子どもが一方的につくるものではなく、母親と一緒につくるものだ』ということを覚えておくといいかもしれません。子どもが自分への愛情や興味を求め、世話をして欲しいと思うのは本能的な反応である部分もありますが、母親の優しい微笑やおしゃべり、スキンシップに対する相互的な応答という面も大きいですから、母親のほうから積極的に赤ちゃんへの愛着を行動や言葉で見せてあげると赤ちゃんも安心して母親に対するアタッチメントを形成することが出来ます。

母子関係にしても家族関係にしても、ある人が一方的に他の人に影響を与えるというシステムではなく、お互いに心理的作用や感情的影響を与え合う相互的なシステムになっていますから、母親が子どもの行動や表情、泣き声に影響を受けるように、子どもも母親の行動や表情、言葉から敏感に母親の心理状態を感じ取り影響を受けます。

子どもが3~5歳ごろになって、自分一人で、周囲の環境に対する探索行動を開始するまで母親は『子どもの安全基地』としての役割を果たしますが、心理的な依存心や安心感の表象としての母親から完全に離脱するには思春期以降の経済的・社会的自立を伴う成長を待つ必要があるでしょう。ですから、マーラーの『分離=母親から離れている感覚』『個体化=母親から一定時間以上離れていることが出来る能力』という概念は、完全な母親からの心理的自立を意味する概念ではなく、過剰な不安や緊張に襲われずに自分一人で外部世界で行動できるようになるといった意味の込められた概念だという事が出来るのではないかと思います。

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この『一定時間以上、母親のもとから離れていられる能力』を獲得する為には、『安定した精神内界の自己表象と対象表象の確立』が必要になります。つまり、物理的に母親から離れていても、母親から永遠に見捨てられたり、引き離されたりしているわけではないという『自他未分離の見捨てられ不安からの脱却』を達成して、心理的にある程度自立するというのが分離・個体化の発達といえます。

M・マーラーのパーソナリティ発達理論をまとめると以下のようになります。

M・マーラーの乳幼児期パーソナリティ発達理論(分離・個体化の過程)

1.未分化期(nondifferentiation:1~4ヶ月)

1-1.正常な自閉期(normal autistic phase:1~2ヶ月)

幻想的な全能感を有する胎児期の名残を残した時期で、自分と外界の区別がなく自分の精神世界に内向して自閉的な状態となっている。まだ極めて未成熟な新生児は、外部の刺激や苦痛から自分を守る為に『正常な自閉期』を持ち、外部刺激に対して明瞭な反応を示さないことが多い。

1-2.正常な共生期(normal symbiotic phase:3~4ヶ月)

分離・個体化期を迎えるまで赤ちゃんにとって母親と自分は一心同体の存在であって、自己と母親の境界線は存在せず自他未分離の感覚に覆われている。母親は自分に安心・食料・保護を与えてくれる欲求充足的な存在であり、母親と自分を二者統一体(dual unity)と認識し、共生圏(symbiotic orbit)において融合しているように感じている。

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2.分離・個体化期(separation-individuation phase:5~36ヶ月)

2-1.分化期(differentiation subphase:5~8ヶ月)

自己と母親が異なる存在であると認識し始めると同時に、自分の母親と他の母親を見比べれるような態度を取り始める。共生圏における自他未分離の融合状態を抜け出して、自分と母親の違いを感じ、母親の服装・アクセサリー・持ち物などに興味を示し始めると同時に、母親と他人を区別して人見知り(stranger anxiety)行動を取り始める。

2-2.練習期(practicing subphase:9~14ヶ月)

母親がいないとまだ分離不安を示すが、身体運動能力と外界の認知能力が発達してくるにつれて、母親の側を少し離れて自由に行動し始めるようになる時期である。外界に対する好奇心や興味が強くなり、外界の探索行動が多く見られるようになってくるが、母親と離れている不安や寂しさが強くなると再び母親に戻って『情緒的エネルギーの補給(emotional refueling)』を行ってもらう。

正に母親は子どもにとっての精神的な『安全基地(security base)』の役割を果たす事になるのである。そのため、子どもの不安や寂しさを感じさせる信号に対して、母親の微笑みや優しい声かけ、抱擁などの情緒的応答性(emotional availability)が重要になってくる時期でもある。また、この時期には、母親に対する愛着や関心を移行できる人形やおもちゃなどの『移行対象(transitional object)』が出現してくるが、この移行対象の出現も特徴的な現象である。

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2-3.再接近期(reapproaching subphase:15~24ヶ月)

母親から分離しようとする意識『分離意識』が高まるのだが、完全に分離しようとすると『分離不安』が強まってしまうという矛盾した感情を内在する時期である。そのため、いったん分離しかかっているのに、また安全基地である母親に舞い戻ってくるという『再接近』の行動が頻繁に見られる。

母親に再接近して『しがみつき』の行動を取ることで『母親からの見捨てられ不安』から自分を防衛するのだが、今度は接近し過ぎて、母親と自分の境界線がなくなって主体性が奪われるような『母親から呑みこまれる不安』を感じるようになる。『見捨てられ不安』が強まると『しがみつき』を見せ、『呑みこまれる不安』が強まると『飛び出し』を見せるのだが、このように相対立する矛盾した感情を同時にもっていることを『両価性(ambivalence)』という。

この再接近期は、母親の側が子どもに対してどのような態度や反応を見せるべきなのか悩むことが多く、情緒的対応が難しくなってくるが、自然に子どもがやってくれば優しく抱きしめて励ましてあげればよく、一人で外界に遊びに出るときは静かに優しく見守っていればよいだろう。

子どもの側も、それまでの共生的な母親との関係に終わりを告げる時期なので、幻想的な全能感が傷つき、自尊感情が揺らぎ易い時期なので、時に『再接近期の危機』と呼ばれるような不安反応、混乱、癇癪、わがままなどを見せることもあるが、多くは一過性の情緒的葛藤なので特別な心配は必要ない。

2-4.個体化期(individuation subphase:24~36ヶ月)

とりあえずの母親からの分離が成立し、母親と一定時間、離れていても大丈夫な個体化の能力を確立する時期である。自律的な自我機能を獲得し、ある程度、母親不在の分離不安への耐性ができてくる時期である。

3.情緒的対象恒常性の確立期(36ヶ月以降)

精神内界に『自己表象』と『対象表象』が明瞭に区分して確立し、それぞれの表象は善悪の両面を兼ね備えていて全体的な統合性をもつようになってくる。心の世界に自分や母親・父親、他人のイメージ(表象)を思い浮かべられるようになり、そのイメージはある程度の恒常性と持続性を持っている。

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元記事の執筆日:2005/08/14

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