クレペリンの早発性痴呆、ブロイラーの精神分裂病から現代の統合失調症へ至る歴史的変遷、摂食障害や睡眠障害を誘発する生活習慣と感情生活の乱れ:ストレス解消と摂食行動の条件付けの弊害

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摂食障害や睡眠障害を誘発する生活習慣と感情生活の乱れ:ストレス解消と摂食行動の条件付けの弊害


『厳格さと寛容さのバランスの取れた親子関係』で家族への信頼感と他者(外部)への欲求を育む


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クレペリンの早発性痴呆、ブロイラーの精神分裂病から現代の統合失調症へ至る歴史的変遷

前回の記事で、古典的な精神分析の精神病への適応の難しさについて述べましたが、現在の精神医療では、統合失調症患者に対しては、メジャー・トランキライザー(強力な向精神薬)による薬物療法が第一選択になっています。抗精神病薬のクロルプロマジン(商品名コントミン,ウインタミン)の誕生(1952年)が、精神医療にもたらした恩恵は非常に大きなものがあります。

クロルプロマジンは、1950年にフランスのローヌ・プーラン社で開発された当初は、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などアレルギー性疾患(アレルギー反応によるかゆみ・炎症などの鎮静)に効果のある抗ヒスタミン薬として研究開発されていました。しかし、本来の目的であるアレルギー性疾患に対する抗ヒスタミン効果よりもドーパミン遮断による鎮静や催眠誘導の効果が強く出た事により、神経活動の異常興奮が見られる精神病患者に投与される事になりました。

精神病症状の改善に著効を示すクロルプロマジン開発以来の精神医療の歴史は、薬剤の種類の多様化と適切な処方の模索の歴史でしたが、同時にアカシジアやジスキネジアという副作用との戦いの過程でもありました。 重症の統合失調症(当時、不治の病とされた重症精神分裂病)の患者は、優れた効果を持つメジャー・トランキライザーの登場によって、閉鎖病棟や入院治療から解放され社会復帰できる可能性が高くなりました。

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無論、統合失調症の病態と症状は非常に複雑であり、その発症状況や経過・予後も千差万別ですので、抗精神病薬(メジャー・トランキライザー)が特異的症状をターゲットにして奏効するというわけではありませんが、他の精神疾患と比較すると統合失調症に対する早期治療の重要性と有効性には臨床的エビデンスが積み重ねられています。精神医学の教科書の標準化を構想したエミール・クレペリン(E.Kraepelin, 1856-1926)は、二大内因性精神病として精神分裂病の原形となる早発性痴呆(Dementia Praecox)と躁鬱病を定義しました。

早発性痴呆とは、『思春期頃に好発する予後の悪い重篤な精神疾患』という意味であり、クレペリン自身は現在の陽性症状よりも感情鈍磨や無為・無反応といった陰性症状へ注目する割合が強かったようです。クレペリンの定義した早発性痴呆は、思春期に早発する精神疾患で、発症時には知的能力は障害されず「感情・意欲・認知の精神機能」が段階的に低下していき、転帰が痴呆による精神荒廃(人格破綻)に至るとするものです。晩年に至るにつれて経過が悪くなり、当時の精神医学用語でいう精神薄弱状態や人格荒廃状態に行き着く可能性が高いというのがクレペリンの見立てでした。

当然、彼の時代には、早発性痴呆に有効な向精神薬が開発されていませんでしたから、高い確率で奏効する治療法が確立されていませんでした。その為、現在の精神医療とは全く事情が違いますし、今では、統合失調症の予後は20世紀半ばまでよりも格段に良くなっています。エミール・クレペリンは、近代精神医学の父とも呼ばれ、彼の登場以前には諸説紛々として混乱していた精神医学領域の知見を網羅的に整理した精神医学者です。クレペリンの臨床経験と学術研究によって、精神医学はとりあえずの体系化に成功したといえるでしょう。

早発性痴呆という用語が誕生する以前には、精神科医個々人によって漠然と精神病のイメージが描かれていて、早発性痴呆は『妄想病(パラノイア)・緊張病(カタトニー)・破瓜病(ヘベフレニー)』の3つの臨床症候群の名前で呼ばれていました。クレペリンの早発性痴呆の概念定義が必ずしも正確とはいえないという批判のもと、精神分裂病(Schizophrenie)の疾病単位を提唱したのがスイスの精神科医オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler, 1857-1939)です。(ここでは、疾病概念の歴史的変遷を明瞭にする為、現代の統合失調症に言及する場合には『統合失調症』の用語を用い、19世紀から20世紀に至るまでの精神分裂病を語る場合には『精神分裂病』の用語を用います。)

ブロイラーは、精神分裂病の疾病概念と早発性痴呆の疾病概念の違いとして、『必ずしも精神荒廃の予後を迎えない・青年期以外の年代でも発症する・痴呆というよりも思考と言語、認知領域に及ぶ精神機能の統合性の障害である』ことを挙げました。精神分裂病の分裂というのは、人格構造の分裂による多重人格や発狂に至る錯乱といった意味ではなく、人格機能の構成単位(思考・記憶・感情・現実認識)の統合性がバラバラになるといった意味です。あるいは、意味のあるコミュニケーションを可能とする観念連合(複数の思考内容や表象・記憶の適切な結びつき)が障害されるといった含意があります。

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健常者の観念連合は、現在と過去の思考が綺麗に区分されていて、事象と言語(観念)の結びつきが適切なものになっています。例えば、『今日の天気』という観念は、『快晴です。雨です。気持ちいいです』といった言語と連合していますが、『今日の天気』という観念が『美味しいです。柔らかいです。私の所有物です』といった言語と連合してしまうと一般的な対人コミュニケーションに支障をきたしますので観念連合が障害されていると言えるでしょう。

ブロイラーは精神分裂病の典型的徴候として『4つのA』を考えました。『4つのA』とは、以下の症状を指します。

オイゲン・ブロイラーの精神分裂病の典型的症状としての『4つのA』

1.自閉性(autism)

2.観念連合の障害(association)

3.両価性(ambivalence)

4.感情の障害(affect)

自閉性(autism)というのは、自分の内面世界に閉じこもってしまって、外部の世界や他人に関心を示さず、現実的な事柄とうまく関係を持つことが出来ないという症状です。観念連合の障害(association disorder)は、ブロイラーがもっとも重視した精神分裂病の症状で、思考の内容や過程にまとまりがなく、支離滅裂な思考や発言をしてしまう症状です。それまでの経験や学習によって獲得された観念をうまく意味のあるものとして結合させる事ができないという観念連合の弛緩を含むもので、知っているはずのA君の名前とその性格や行動を結びつけることが出来なかったりします。A君のことをみんなが話している時に、自分はA君のことを話しているつもりでB君のことについて突然話し出したりして奇妙な感じを与えたりするのです。

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両価性(ambivalence)というのは、矛盾する考えや正反対の二つの感情をある対象に対して持っているといった事です。例えば、Aさんの事を尊敬しているのだが、心の何処かで嫉妬して憎んでいたり、嫌っていたりといった両価性や、ある意見に表面的に賛成していても、よくよく自分の心を覗き込んでみるとその意見に反対だったりするといったアンバランスで対立的な二面性のことです。感情の障害(affect)というのは、何事に対しても喜びや悲しみといった感情を抱く事が出来ない感情鈍麻の状態や気分が安定せずにコロコロと怒ったり、笑ったりする情緒不安定な状態を意味します。特に精神分裂病の陰性症状では、感情機能が完全に麻痺してしまって、どんな出来事があっても笑いもせず怒りもしないという精神機能の障害がよく見られます。

クレペリンの早発性痴呆の疾病概念の致命的な欠点は、治療可能性に対して閉ざされており予後不良で精神荒廃に行き着くという運命論的な前提に立っていることです。また、早期に発症して予後が必ず荒廃に至る精神病という意味では、極めて狭い範囲の統合失調症の一例を概念化したと考えることも出来ます。ブロイラーの精神分裂病の疾病概念の特異な点として、有効な薬物療法が確立していなかった当時において精神分裂病の治療可能性、予後良好のケースを示唆したということが挙げられます。クレペリンの想定した予後の悪い早発性痴呆も含む広範な事例を説明できる精神病類型が精神分裂病だといえるでしょう。

とはいえ、ブロイラーの示唆した治療可能性はなかなか現実のものとならず、クロルプロマジンが誕生するまでの様々な医学的・心理学的アプローチをはねつけて来ました。特に、当時の中心的精神療法であった精神分析は、言語的コミュニケーションの不全や面接構造に耐えられない自我強度の弱さを持つ統合失調症患者の大半にとってあまり目立った治療効果を発揮することが出来ませんでした。電気ショック療法だとかインシュリンショック療法だとかいった物理的な生理作用を応用した治療法にも一定の効果は認められましたが、血糖値を低下させるインシュリンショック療法には治療に伴うリスクが大きいという欠点がありました。

改良された身体の痙攣反応を伴わない電気ショック療法(ElectroConvulsive Therapy:ECT)は、現在でも希死念慮の強い重症うつ病の患者に対して行われる場合があります。電気ショック療法によって得られる有益性とその危険性の比較によって有益性が上回ると判断でき、本人が了承すれば実施する意義はあると思います。精神分裂病の歴史過程には、精神医学的な治療可能性の発展があると同時に精神医学的な精神病治療に批判的な反精神医学の歴史もあるわけですが、その中心人物が精神分裂病の理解可能性(了解可能性)を唱導したR.D.レインです。レインの思想は、フーコーの『狂気の歴史』に通底するもので、精神分裂病の異質性を強調することで社会集団から排斥しようとするシステムや偏見を乗り越えようとする思想です。

レインは、医師と患者という権威的関係を踏み越えて患者と「一人の人間」として真摯に向き合い、相手の語る言葉や物語を決して病気の症状として軽視しないという基本姿勢を持っていました。彼はその先鋭的な反精神医学の思想を通して、『異質な精神病者に対する治療可能性』で留まる事の不完全性を指摘し、『同じ立場にたって共感的なコミュニケーションを試み続ける相互的な了解可能性』を志向した人物だといえるでしょう。R.D.レインの医療分野での貢献や評価はともかくとして、レインの思想や生涯は『精神病という精神状態』『精神病者という対等な個人の尊厳』とを明確に切り分けて認識することの大切さを私達に教えてくれます。

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反精神医学の書物として読むよりも、精神保健行政への批判意識や社会福祉分野への理解深化を意識しながら倫理学的な問題を取り扱う書物として読むと色々と思い浮かぶことがあるのではないかと思います。ドイツの精神医学者クルト・シュナイダーは、精神分裂病の鑑別診断の基準となる『この症状が観察されて、身体疾患や薬物の影響がなければ、精神分裂病と診断してよい』という項目を考えました。このシュナイダーによる鑑別診断的な精神分裂病の基準を『一級症状』といい、一級症状に当てはまらない精神分裂病と断定できない妄想着想や軽度の幻覚、感情鈍磨、軽度の気分変調症状を『二級症状』と呼びます。

クルト・シュナイダーの定義した1級症状

1.思考化声

2.批判的幻聴

3.ダイアログ(複数人の対話)形式の幻聴

4.身体への悪意ある行為や影響

5.思考伝播

6.思考奪取

7.作為体験

8.関連妄想・妄想知覚

精神病圏の重症患者に対する標準的な精神医療が、危険性の高い精神外科療法から比較的安全な薬物療法に移行するにつれて、非人道的な精神外科療法として悪名の高いロボトミー手術(prefrontal lobotomy)は段階的に衰退していきました。臨床心理学の研究調査では、精神病の陽性症状に対する認知行動療法に一定の効果が認められるなど補助的な役割も指摘され始めてきていますが、薬物療法と併行して実施することでより大きな改善効果が期待できます。統合失調症に関する説明やクルト・シュナイダーの一級症状について詳しく知りたい方は、ウェブサイトのほうの記述を参考にして下さい。

統合失調症

シュナイダーの1級症状以外にも、神経症圏と精神病圏を鑑別する為の指標となる症状群としてIPSS(International Pilot-Study of Schizophrenia)のようなものがありますが、その大半は1級症状や現代のDSM-Ⅳの診断基準とオーバーラップしています。統合失調症の症状は、発症以前には見られなかった症状が形成される陽性症状と発症以前に存在していた健康な精神機能や精神運動性が喪失される陰性症状の両面から理解することが出来ます。

精神分裂病から統合失調症への名称変更が日本で行われたのは2002年8月でしたが、疾病概念にまつわる好ましくない印象や偏見への配慮が大きく働いての改称でした。

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■書籍紹介

分裂病がわかる本―私たちはなにができるか

摂食障害や睡眠障害を誘発する生活習慣と感情生活の乱れ:ストレス解消と摂食行動の条件付けの弊害

不快な心理的ストレスやフラストレーション(欲求不満)による葛藤の影響がダイレクトに反映されやすいのが、睡眠・食欲といった生物学的本能の領域です。精神的な苦悩を意識していない健康な人であっても、職場でのリストラ不安や上司・部下との対人関係の困難、取引先との契約ノルマの重圧、職場と家庭でのサービス意識の過剰などによって睡眠リズムは容易に乱され、軽度の睡眠障害に陥ることがあります。恋愛関係の破綻の不安や恋人との喧嘩、離婚の危機などによっても睡眠や食欲のバランスは崩れやすくなりますし、結婚生活や子どもの育児にまつわる不快感やイライラによっても睡眠周期や食欲の強度と頻度はさまざまな形で変化してきます。

精神的ストレスが最も表れやすい行動の一つが食欲に基づく飲食行為ですが、ストレス反応で抑うつ感(気分の落ち込み)を抱きやすい人は拒食傾向が見られやすくなります。反対に、ストレス反応で情緒不安定や焦燥感を抱きやすい人は過食傾向が起きやすいと言われます。しかし、重篤なストレスやトラウマによって受ける食行動の変化は、予測困難な部分も大きいので、抑うつ的な反応と共に過食行動を起こしたり、攻撃的な反応と共に拒食行動を起こしたりすることもあります。

一般的に、食物や飲み物を摂取して満腹中枢を満たす行為そのものに心理的充足感が伴っていますので、適度な飲食にはストレスを緩和する効果や不快な感情を鎮静する作用があります。 嫌な出来事や不愉快な人間関係がある度に、ヤケ食いをして気分を紛らす人がいますが、その程度が行き過ぎて健康に支障を来たさないのであれば、摂食行為で無意識的なストレス・コーピングを行っていると考えることが出来ます。しかし、不快な出来事があったり、苦痛なコミュニケーションがあったりするたびに、反射的にヤケ食いや気晴らし食い(ビンジ・イーティング)を行い続けると、容易に食行動とストレス解消が条件付けされて習慣化します。

悲しくて泣きたい時や苦しくて耐えられない時に、取り合えず食事を大量に取れば気分が安定して感情が穏やかになるという経験を繰り返すと、自分自身の食欲の有無とは無関係に食事を摂取して情緒安定を図ろうとする条件付けが形成されます。その結果として、強い自己嫌悪や罪悪感を伴う神経性過食症(ブリミア・ネルヴォーザ)などの精神疾患の発症リスクを高めますし、将来の生活習慣病(糖尿病や高血圧症、高脂血症、循環器疾患、血管障害)を誘発する恐れが出てきますので食行為のみでストレス解消するのは避けたほうがいいでしょう。

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食行為には結果として、満腹感や気分改善といった『快の報酬』が伴いますから、不安や葛藤を和らげるストレス解消手段として食行為を利用すると、オペラント条件付けの原理に基づいて『快の報酬』を得る為の食事行動は頻度を増していきます。摂食障害の基本原理をその『食行為の依存性・食行為への耽溺』と見る場合には、摂食障害は嗜癖問題(依存症)の一つに分類されます。その場合には、嗜癖問題を解決する為に、食事で代理的満足を得ている精神的葛藤を緩和して、『食行為とストレス解消の条件付け』を消去するような支持的カウンセリングを認知行動の変容と合わせて行っていくことになります。

医学や栄養学の知見を参考にした生活習慣改善プログラムでは、『カロリー制限法』の有効性が確認されています。カロリー制限法は、生活習慣病の発症を予防するだけではなく、メンタルヘルスの向上睡眠周期や食行動の乱れの改善にもつながることが検証されています。特別な効果が期待されるサプリメント(栄養補助食品)や栄養学に基づく正確なカロリー計算法を意識してカロリー制限を行う方法が、正統的な食事改善のやり方なのかもしれませんが、私は、摂食障害の履歴がある人や食事内容にあまり興味がもてない人は、詳細なカロリー数や栄養素の理解よりも、『学校の給食のようなバランスの良い食事メニューと分量』を大まかに意識するほうが効果的だと思います。

元々、『太ってしまうから食べ過ぎてはいけない。健康の為にもっと食べなくてはいけない。身体的な美を維持する為には食の自制が最も重要だ』といった食行為へのコントロール欲求が強い人のほうが、摂食障害への悪循環に嵌りこみ易いのですが、『食事とカロリー量の比較計算』に執着し過ぎない程度にカロリーを調節していくことが大切です。理想のカロリー量から外れてはいけないという完全主義が強くなりすぎたり、食事量や健康メニューへの異常なこだわりが出てくるのは、逆に、食行動のコントロールや精神状態の安定を困難にします。一度、目安となるカロリー量(年齢差はありますが、激しい運動をしない人は2,000kcal前後(3,000kcalを超えない)が一応の目安)と食事量を認識したら、それを基準として過剰に食べ過ぎたり、食事を拒否しないようにすれば良いのだと考えるようにしたほうがいいでしょう。

まずは、『規則正しく時間を決めて食べて、眠る直前には食べないこと(これは簡単に見えて非常に困難な課題です)』『動物性蛋白質や炭水化物の過剰摂取を控えること(普段よりご飯の量を軽めにするとか肉より魚のメニューを増やすとかしてみましょう)』『野菜やフルーツ、魚介類で、ビタミン・ミネラルの不足を補うこと(必須ミネラルやビタミンを摂取する為に、野菜・海藻・魚介類・果物をメニューの中に複数品目取り込みましょう)』といった簡単なところから、心身の健康を食事のバランスによって整えていきましょう。

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年代別の必須カロリー量

生活活動強度によっても変わってきますが、一日に2時間程度の歩行をし、1時間程度の運動をする平均的な生活行動をしている人は、以下のカロリー数を目安にしてください。厚生労働省が出している生活活動強度Ⅱ~Ⅲに必要なカロリー量を示しておきます。

15~17歳……1950kcal~2200kcal

18~29歳……1800kcal~2050kcal

. 30~49歳……1750kcal~2000kcal

50~69歳……1650kcal~1900kcal

70歳以上……1500kcal~1700kcal

生存と健康の維持に必要な食欲のコントロールを完全に喪失して、極端な食欲の低下による食事の拒絶が起こった場合には神経性食思不振症(アノレクシア・ネルヴォーザ)の診断を受ける可能性があります。反対に、ストレス解消の為の食行為の分量と頻度が多くなり、精神状態の安定を図る為の衝動的な無茶食いが過剰になった場合には、神経性大食症(ブリミア・ネルヴォーザ)である可能性があります。

DSM-Ⅳによる摂食障害の分類診断基準

神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa)

A:年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される正常体重の85%以下の体重が続くような体重減少がある。または、成長期間中に期待される正常な体重の増加がなく、期待される体重の85%以下になる)

B:体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖がある。

C:自分の体重または体型を感じる感じ方・認知の障害:自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認。

D:初潮後の女性の場合は、無月経、つまり、月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(エストロゲンなどのホルモン剤投与後にのみ月経が起きている場合、その女性は無月経とみなされる)

病型について

食事制限型(Restricting Type):現在の神経性食欲不振症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶食い、または排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用及び乱用)を行ったことがない。

無茶食い(ビンジ・イーティング・気晴らし食い,Binge-Eating Type)/排出・浄化型(Purging Type):現在の神経性食欲不振症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶食いまたは排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下剤、利尿剤、浣腸の誤った使用)を行ったことがある。
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神経性過食症(Blimia Nervosa)

A:無茶食いのエピソードの繰り返し、無茶食いのエピソードは以下の2つによって特徴づけられる。

1.他と明確に区別される時間の間に(1日の何時間でも2時間以内の間)、ほとんどの人が同じように食べる量よりも明らかに多い食物を食べること。

2.そのエピソードの間は、食べる行動を制御できないという感覚がある。 (食べることをやめることができない。また、どんな食物をどれほど多く食べているかを正しく認知できず、その食欲や食行動をコントロールできない感じがある)

B:体重の増加を防ぐために不適切な代償行為を繰り返す。例えば、自己誘発性嘔吐や下剤、利尿剤、浣腸の乱用による食物の排出行為、または、その他の薬剤の間違った使用をする。過食の後に、極端な絶食、または、過剰な運動をする。

C:無茶食いおよび不適切な代償行為は共に、平均して、少なくとも3ヶ月間にわたって週2回起こっている。

D:自己評価は、体型および体重の影響を過剰に受けている。

E:障害は、神経性食欲不振症のエピソード期間中にのみ起こるものではない。

病型について

排出型(Purging Type):現在の神経性過食症のエピソードの期間中、その人は定期的に自己誘発性嘔吐をする。または、下剤、利尿剤、浣腸の誤った使用・乱用をする。

非排出型(Nonpurging Type):現在の神経性過食症のエピソードの期間中、その人は、絶食または過剰な運動などの他の不適切な代償行為を行ったことがあるが、定期的に自己誘発性嘔吐、または、下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用・乱用はしたことがない。

また、過食症と拒食症は、どちらか一方だけのエピソードを反復して繰り返す症例よりも、過食期と拒食期の双方を周期的に繰り返す症例のほうが多く、摂食障害の基本は、精神状態の不安定(対人関係における愛情飢渇・承認不全・心的外傷・攻撃衝動も含む)やストレスの過剰による食行動のコントロール不能にあるといえます。一般的に、拒食症と呼ばれるこの精神疾患は、思春期やせ症と言われることもあるように、『自分の理想的なボディイメージ』『体型と関係づけられた自己の存在価値』に執着しやすい思春期に好発する疾患です。

摂食障害は、文明水準の高い地域にしか見られない現代病の一つであり、産業経済が十分に発達していない18~19世紀頃のイギリスやフランスでは、貴族階級の子女にしか見られない極めて稀な疾患で豊かな経済生活を背景にした精神疾患とされていました。現代で、『美の強迫観念』に特色を持つ心因性の神経性拒食症には、『痩せている身体は美しく、少しでも太っている身体は醜い』という極端な美意識が原因になっているものや、『本能的欲求である食欲を自己コントロールできない自分は、自堕落でダメな人間だから他人に愛されない』という痩せなければ他人から愛されないという独自の価値観を持っているものがあります。

しかし、この『美の強迫観念』は、摂食障害者固有のものというわけではなくて、多くの場合、その人が生活している社会の中心的で平均的な美意識を反映しています。エステによって痩せれば理想的な美しい身体を手に入れられるというマスメディアの宣伝やダイエットによってスリムな体型を手に入れることで多くの人から注意関心を向けられて自尊心を高められるという時代の価値観によって、程度の差はあれ、『肥満体型よりも、痩せている体型のほうが美しい』という価値観を多くの人は共有しています。

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しかし、『痩せていなければ、美しくなれないし、他者から自分の価値を認めてもらえない』という単一の価値観に耽溺してしまい、体重と食事に意識が縛られてしまうと病的な痩せ願望になってしまいます。 具体的には、体重のコントロール手段としてのダイエットに毎日の生活を支配されたり、食事の内容や分量にしか自分の興味関心が向かなくなってしまうと、過食や拒食の摂食障害に陥るリスクが高くなるという事です。また、過食症と拒食症を反復して繰り返す思春期の人(年代が上がると多少、痩せ欲求の対象や目的が変化します)の殆どに、『強烈な痩せ願望によって美しくならなければならないという強迫観念』が見られますが、この痩せ願望が『ナルシスティックな自己陶酔』に結びついている場合と『異性・家族・友人に自分の存在価値を認めてもらいたい捨て身の承認欲求』に結びついている場合とがあります。

精神的ストレスが、人間の生存に関係する基本的欲求(マズローの欲求階層説で最も低次な生存欲求)に与えるマイナスの欲求について言及しようと思いましたが、摂食障害の話が長くなったので睡眠欲求の障害について書けませんでした。精神的な問題として最も発生頻度の高い睡眠障害サーカディアン・リズム(概日リズム・体内時計)についても、また時間のある時に書こうと思います。

うつ病など気分障害では睡眠障害が必発し、統合失調症の急性期にも一切の睡眠をとらない不眠症状などが出てくるのですが、一般的な睡眠障害はそういった精神障害とは無関係なもので誰にでも比較的頻繁に起こってくるものです。特別な心の悩みや問題を意識していなくても、生活環境や対人関係によって受ける微細なストレスの蓄積、夜更かしや深夜の飲食をしやすい現代人の生活習慣の乱れによって軽度の睡眠障害は容易に起こってきますが、催眠導入剤の薬物を用いない睡眠障害の治療としては、朝の自然光を受けて、夜の光照射を減らす生活習慣づくりがポイントとなってきます。

『光療法(医学的治療に限らず午前中に自然光を受ける)によるサーカディアン・リズムの矯正』『サーカディアン・リズムの矯正に伴う脳の松果体のメラトニン分泌の正常化』というのが、薬物やカウンセリングを用いない自然な自己療法として無理なく実行できるものです。 しかし、重篤なうつ病による不眠やPTSDよる悪夢を伴う睡眠障害の場合には、サーカディアン・リズムの可塑性が失われている場合もあり、自然光による体内時計のリセットや夜間のメラトニン(睡眠誘発作用のあるホルモン)分泌が起こらない事もあります。

松果体から分泌される各種の好ましい心身作用を持つメラトニンは、うつ病やパニック障害(不安障害)などの生理学的機序と深く関与していると言われるセロトニンからの代謝物質です。原料はどちらも必須アミノ酸であるトリプトファン(トリプトファン→セロトニン→メラトニン)ですから、サーカディアン・リズムを正常化させて睡眠障害を治癒することには、うつ病をはじめとするセロトニン系神経の伝達障害が関係している精神疾患の改善に役立つかもしれません。

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メラトニン自体は、アメリカでは栄養補助食品のサプリメントとして販売され、薬物ではなく天然由来の栄養成分に分類されていますが、日本では、メラトニンは薬効作用のある薬物に分類されており薬事法による規制を受けています。メラトニンは個人輸入したり海外で購入することは可能ですが、一部の医学研究者は大規模で長期間の治験が実施されていない事を根拠にして、十分な安全性と有効性が保障されていないという意見を述べているようです。ラットなどを利用した動物実験の段階では、メラトニンの大量投与による警告が必要な副作用や健康被害は見られなかったとされていて、アメリカ人の間では、睡眠改善や時差ボケ解消、リラックスの鎮静効果を得る為に一般的に服用されているサプリメントの一つです。しかし、メラトニンは日本国内では未承認のサプリメントであり、欧州の一部や日本では健康食品ではなくニューロホルモンや医薬品として取り扱われています。

アメリカでメラトニンの販売開始から10年以上が経過していますが、現在までに重篤な副作用や健康被害は報告されておらず、アメリカでは一般的に、メラトニンは安全性と有効性が高く、副作用・依存性・耐性の少ないサプリメントだと言う評価を得ています。しかし、狂牛病などとの兼ね合いもありますから、メラトニンの抽出過程が化学合成なのか動物の脳など生体由来なのかは一応調べてから購入したほうがいいでしょう。また、国内未承認のサプリメントを個人輸入や海外購入によって服用する際には、自己責任が伴うという認識も必要だと思われます。

メラトニンを、サプリメントで取るのは不安だから自然な食品で取りたいという人には、以下の食品にメラトニンの成分が多く含有されているそうです。日本人の場合には、米の摂取量は多いですから、意識せずにバランスの良い食事を心がけていてもある程度はメラトニンは取れているでしょう。また、若い世代の人ほどメラトニンの分泌量は多く、特に子どもには自然に大量のメラトニンが分泌されているので、意識的にメラトニンを大量摂取することは必要ありません。昼間の眠気や倦怠感を強めて逆効果である場合もあるようです。

メラトニンの含有量が多い食物

小麦・米・オート麦・とうもろこし・コーンフレーク・ショウガ・トマト・バナナ・カイワレ大根・春菊など。

日本で販売されている朝食用のコーンフレークはかなり多くの種類がありますが、麦芽・コーン・果物・ナッツ類などのバランスが良く、糖分が少ないもののほうが、睡眠促進に限らず健康維持の効果はあると思います。
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性欲も繁殖行動に関係する生理学的本能ですが、睡眠欲や食欲と比較すると心理的ストレスによる心因反応の影響に個人差が生じやすい欲求です。性欲は、確かに、長時間労働などの過労の継続や職場での人間関係の悪化、仕事内容への不適応によって低下する傾向はありますが、反対に、危機的状況や生理学的緊張が高まった状態で性欲が亢進するケースもあるので、一概に、ストレス反応によって必ず性欲低下や性機能不全(ED:Erectile Dysfunction)が起きるとは言えません。

■書籍紹介

もちきれない荷物をかかえたあなたへ―アダルト・チャイルド、そして摂食障害・依存症・性的虐待…いくつもの課題をのりこえる生き方の秘訣

『厳格さと寛容さのバランスの取れた親子関係』で家族への信頼感と他者(外部)への欲求を育む

過去に、『青年期のアイデンティティ拡散と非社会性の問題:搾取から保護への子どもの権利獲得の歴史』という記事を書きましたが、子どもの発達段階における青年期の自立と家族関係について少し補足しておきます。現在の日本では、よく、家庭における教育(躾)や育児の方法に問題があって、それが子どもの精神発達上の障害や性格の歪みにつながってくるといった主張がなされます。

もちろん、個人の人格形成には、遺伝・体質など先天的要因も関与しますし、環境要因にも学校や友人関係などさまざまなものがあるので、子どもの精神発達上の問題の責任を全て家族関係の歪みやコミュニケーションの問題に還元できるわけではありません。家庭環境における教育方法や育児行為の問題に注目する場合には、大きく分けて『虐待的・排除的・外傷的な育児の問題』『過保護・過干渉・溺愛的な育児の問題』とがあります。

前者は『親の愛情不足・暴力行為』によって子どもの他者への信頼感や家族への帰属感へ悪影響を与え、後者は『親の愛情過剰・過保護』によって子どもの社会的自立心や新たな環境への適応力を低下させます。現代社会にも暴力行為による児童虐待の問題やその影響による精神疾患の苦しみは多く存在しますが、それ以上に、密着した親子関係や愛情の過剰によって子どもの自立心がスポイルされてしまい社会的自立が覚束ない問題が増えてきています。愛情不足や児童虐待の対極にある『子どもの心理社会的自立の障害としてのひきこもりやNEET』などの非社会的行動の問題は、多くの場合、思春期から青年期において顕在化してくる点が児童虐待とは異なっています。

(NEETという用語の適切性には議論がありますが、とりあえず、経済的自立に付随する心理的問題としてここでは取り扱い、勤労道徳や労働政策上の問題の意味は含めていません。つまり、労働しないという道徳的非難よりも、自力で生計を維持できないという経済的問題がもたらす将来の困難・貧窮を回避すべきであるという観点から書いています。)精神障害の発病や悪化による病理的なひきこもりや就業困難のケースも確かにありますが、多くの非社会的問題行動のケースでは病的な精神症状や行動パターンは見られません。過半のひきこもりやNEETの問題は、健康な精神状態でありながら職業選択が出来なかったり経済的自立ができなかったりして、社会的アイデンティティの確立が困難になっている状態だといえます。

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経済的収入や学業修得、職業訓練につながる社会的活動を行わないモラトリアム(社会的責務の猶予期間)が長期遷延している心理的原因には実に様々なものがありますが、その中で代表的なものとして『職場環境の業務や人間関係のストレスに耐え切れない心身の脆弱性』『誇大自己・理想自我による要求水準の高さ』『いじめや虐待など過去のトラウマ体験による対人恐怖』『自己の特別視による完全主義欲求の過剰』『観念的な自己実現や政治的な反常識的理念などによる不適応』などが考えられます。それらのカテゴリーから大幅に逸脱して、一切の対人関係を遮断し、感情表現が麻痺して、意味不明な独り言をつぶやいて部屋の片隅でうずくまっているというような状態であれば、精神病圏の疾患が発病している可能性がありますが、好きなテレビやゲームはできて、インターネットや携帯でのコミュニケーションには興味を示している場合には、重篤な精神病水準の病理の可能性はまずないでしょう。

お小遣いを上げれば、友人と外食や遊びには出掛けられるという場合にも、就業意識の低さや労働意欲の低下といった問題はありますが、精神医学的な健康性という側面では特段、問題視する状況はないと言えると思います。特別な理由や精神的な不調がなく、怠惰や無為を嗜好する性格傾向が問題の場合には、親子のコミュニケーションを工夫したり、経済的自立を促進する環境を調整したり(少しずつ子ども自身が負担する生活コストを上げていくなど)、子どもの将来の生活設計の認知を確認していくことで、比較的短期に、良い方向への変化が起きることが多いです。

心理臨床的に非社会的な行動の問題を考える場合には、国家政策的な労働力確保の観点や社会保障制度維持の納税者の単位としてクライアントを見ることはまずありません。その為、家族も本人も、非社会的な生活状況を問題とせず苦悩も感じず、将来的にも経済的に困窮しないのであれば特別な心理学的介入(カウンセリング・心理療法)を行う必要性はないといえます。しかし、幾ら莫大な資産がある人であっても、一般的な家庭環境や親子関係の中で、一生涯、社会的な自立をせずにひきこもっていたり遊びまわっていても良いというケースはまずないのではないかと考えられます。

基本的に、家族や配偶者、恋人と生活を共にしている人であれば、極端なひきこもりや将来不安につながる就業拒否は解決すべき問題として何処かの時点で立ち上がってくることになります。また、非社会的な生活状況が長期間続いてくると、本人の承認欲求が満たされずに劣等感によるストレスを感じたり、周囲の人との生活状況の比較によって自尊心の傷つきを覚えたりしてくることが多くなります。強い対人恐怖や極端な孤独嗜癖でもない限りは、家族内部だけの人間関係では十分なコミュニケーション欲求を満たすことが出来ず、対人関係の貧困による孤独感や虚無感を感じやすくもなるでしょう。

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異性との性的関係も断絶しやすくなり、買い物や娯楽といった消費活動も制限されてきますから、フラストレーションが鬱積してイライラしたり情緒不安定になることもあります。非社会的な生活状況が長く続くと、社会環境下でのセルフエフィカシー(自己効力感)やコミュニケーションを支える対人スキルが低下してきますので、自分で積極的に何かにチャレンジしようとする試行錯誤の行為が起こりにくくなってきます。

本人や家族が現状のままで問題ないと考えている非社会的な生活に、強引に心理学的・医学的介入をすることは出来ませんが、基本的な人間の精神発達過程では『家庭内部から社会環境へとリビドーの転換』が行われ『外部環境・対人関係・職業活動への適応性』を高めるのが一般的であるとされます。現代社会の親子関係を表現する一つのキーワードである『過保護・過干渉・権威性の喪失』が結果として引き起こすのが、『家庭内部への囲い込みによる精神的自立の阻害』『長期に遷延するモラトリアムと非社会的行動』ですが、これらの問題は家庭環境の要因と社会経済的要因が複雑に絡み合って生まれてくる側面ももっています。

青年期の社会的自立を巡る問題で難しいのは、親子関係における『厳格性と寛容性のバランス』です。つまり、家庭外部への自立を促す『父性原理が象徴する厳格さ』と外部社会のストレスに耐えうる心理的基盤を形成する『母性原理が象徴する優しさ』のバランスであると私は考えています。家庭での育児の問題について、“切断する父性と包容する母性”といった親子関係を振り返りながら概略を述べました。

青年期の心理的課題である『家庭環境からの自立と社会的アイデンティティ確立』について、『青年期という発達段階に関係する理論背景や対応技術』を参照するのも有益ですが、最終的には『子どもの将来の健康・幸福・発展・自己実現をどのように支援していけば良いのか』という意識(愛情)を持って、厳しさ(精神的な自立の為の切り離し)と優しさ(帰る場所はあるという安心感の提供)を使い分ける強かさが大切なのだと思います。

家族成員の価値観と青年期にある子どもの価値観との衝突や就職による可能性の低減に対する本人の恐怖、人生全体を俯瞰した上での職業や仕事の自己決定をどう支援するのかといった問題についても書いてみたいと思います。同時に、精神分析のリビドー発達論でいう性欲が抑圧される潜伏期(6~12歳:児童期)を終えてからの性的関係性の問題、思春期を経て青年期に至る身体の成熟と性愛関係の変遷、恋愛と結婚の問題についても、心理学的観点から考えてみたいですね。

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『性・愛・関係性・結婚制度・異性や家族に対する認知』というものは、青年期の労働モチベーションや人生の進路選択、アイデンティティの確立と密接に関わっています。『自分の家族を構築する事に対する関心・欲求の個人差』というものが、非婚晩婚化や少子化(DINKSなど含む)の問題としてクローズアップされることがありますが、『性・結婚・家族』を自分の人生にどう位置づけるのかという意識の違いが、『個人の青年期以降の人生の内容』に与える影響は非常に大きなものがあります。

■書籍紹介

迷走する若者のアイデンティティ―フリーター、パラサイト・シングル、ニート、ひきこもり

元記事の執筆日:2006/03/10

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