自律神経失調症の『生活習慣病(現代病)・心気症』の側面と治療・自己改善:1
自律神経失調症の『生活習慣病(現代病)・心気症』の側面と治療・自己改善:2
『精神的ストレス(疲労感)』を感じやすい人の神経過敏・精神的萎縮・ACの要因
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自律神経失調症のつらい身体症状と原因の分かりにくさ:医学検査で異常はでないが症状が続く
自律神経系のバランスが崩れて発症する自律神経失調症は、精神疾患の一種のように捉えられることも多いですが、大元に何らかの精神的原因(大きな精神的ストレス)があって身体症状が出てくる『心身症(胃潰瘍・高血圧・頭痛など)』や『神経症(身体表現性障害・転換性障害など)』と比べて、より原因が何であるか分かりにくい特徴があります。一般的な自律神経失調症の病理メカニズムでは、身体を興奮させる活動性の『交感神経』が過度に優位になりすぎて、身体を休ませる抑制性の『副交感神経』が長く働かないことで、自律神経失調症が発症して慢性的につらい症状が経過しやすいとされます。
自律神経失調症は『血液検査・MRI(核磁気共鳴画像診断)・CT(コンピューター画像診断)・レントゲン・内視鏡』などの医学的検査では原因を発見することができないので、医学的な疾患(病気)ではない不定愁訴として片付けられやすいのですが、主観的な身体症状のつらさや苦しさ、痛みはかなり大きなものになります。
自律神経失調症の典型的な症状には以下のようなものがあります。
うつ病やパニック障害などと症状で重複するものも多く、心療内科・精神科では精神疾患の薬物療法で対応することも多いと思いますが、『精神的ストレス・精神症状』よりも『身体症状のきつさ・痛さ(特に首・背中を中心に筋肉のこわばりがあり胃腸の違和感や呼吸の苦しさなどがあるが検査では異常がでない)』が前面に出ていて、薬物もあまり効かないケースでは自律神経失調症により近い状態の可能性があるでしょう。
○頭のフラフラ感、フワフワ感、意識・思考がしっかりせず集中できない感覚。
○慢性的な気分の悪さ、体調がすっきりしている時がなく常に不調の感覚。
○呼吸がしづらい息苦しさ、パニック発作のような強い気分の悪化や恐怖感。
○『背中・首・肩』がひどくこっていて痛みや気分の悪さがある。
○頭痛、頭重感、頭がすっきりせず常に違和感がある。
○頻繁な胃痛、胃もたれ、吐き気、ゲップ、腸の不調(腹部膨満感)、下痢・便秘。
○ヒステリー球のような喉の詰まった感覚、食物の飲み込みにくさ、しゃべりにくさ。
○慢性的な疲労感、だるさ、身体の重たさなど。
自律神経失調症を精神疾患として見ても『精神症状』よりも『身体症状』に重点があることが多いので、心療内科・精神科を受診する人が少なかったり受診するまでに時間がかかったりするのですが、重症化した身体症状のきつい自律神経失調症は心療内科の向精神薬(抗不安薬・睡眠薬)やカウンセリングだけでは一定のリラクセーション効果はあってもなかなか身体の苦痛の改善が難しいでしょう。自律神経失調症は『原因が特定できない身体・精神の不調』ですが、短期間であちこちにつらい症状が移り変わって捉えどころがなく、頭・胸・胃・腸・肺・筋肉(背中・肩・首・腰)など一つ一つの部位に感じる症状がきついので、自分ががんか何か深刻な病気に罹っているはずに違いないという『心気症(ヒポコンドリー)』に陥りやすい傾向があります。
激しい頭痛が続けば脳の血管・神経に異常が起こっているのではないかと疑い、胸がドキドキと動悸がしたり痛みが出たりすれば心臓疾患ではないかと思い、息苦しくなって呼吸がスムーズにできなくなれば呼吸器(肺)に何か起こったのではないかと心配し、胃がキリキリと痛んだり胃もたれが続いて食欲が落ちたりすれば胃潰瘍・十二指腸潰瘍でも発症したかと思い、首・背中・肩などのこわばりが異常に強ければ筋肉がおかしくなったと思うわけですが……実際にそういった医学上の病気・怪我に本当になっている人であれば、『内科・脳外科・心臓外科・消化器内科・整形外科』などの専門の診療科で検査を受ければ、特定の異常所見を発見して現代医学を応用した『薬・施術・手術』などの適切な治療を受けることができるでしょう。
本当に深刻な身体疾患の可能性があって、緊急に医療対応しなければいけないこともあるので、初めはきちんと病院・クリニックで診察・医学的検査を受けるべきなのは当然なのですが、診察や検査(精密検査)を何度も受けてもどうしても原因が見つからずに症状と対症療法だけが続いている状態が自律神経失調症ということになりますが、こういった全体的な不調・気分の悪さ、あちこちに移り変わる症状を完全にすっきり治すことは医療でも心理療法でも整体・鍼灸・マッサージ等でもかなり難しいとされます。
自律神経失調症の『生活習慣病(現代病)・心気症』の側面と治療・自己改善:1
自律神経失調症は『医学的な病気』ではないが『主観的なひどい不調』があるという状態(自律神経・筋肉のアンバランスが生む東洋医学の未病に近い状態)になりますが、要素還元的な西洋医学は一般的に『全体的な漠然とした心身の不調・慢性的な気分や体調の悪さ』の治療はあまり得意ではないところがあります。西洋医学(現代医学)がもっとも効果を発揮するのは、診察(問診)や検査によって原因・病名が特定できて科学的根拠のある治療方法が選択できるような症例です。病気の症状に合わせた薬を処方したり、病変部分を切除・補修したりする手術ができて実際の治療効果が得られるようなケースであれば、西洋医学がもっとも優れた治療スキームということになります。
自律神経失調症のケースでは、明らかに主観的な身体の苦痛・異常・違和感があるにも関わらず、さまざまな医学的検査を何度も受けても異常が発見されないわけですが、『医学的には正常な状態です』と回答されると本来は嬉しいはずなのに、何も原因となる異常がないのにこんなに苦しくてつらいのは何故なのかということで余計に苦悩が深まりやすいのです。その結果、自分の症状を治してくれる人を探す『ドクターショッピング』と自分は深刻な病気かもしれない『心気症(ヒポコンドリー)』の悪循環にはまっていきやすいのですが、自律神経失調症は医療・お薬だけで治すことの難しい自律神経系(心身)のバランスが崩れた状態であり、その自律神経系のバランスの崩れを引き起こした『交感神経の過剰・長期の興奮』を何らかの自助努力で抑えられないと本質的な改善は難しいと考えられます。
『交感神経の過剰あるいは長期の興奮』はなぜ起こるのか。端的にはストレッサーによるストレス(刺激が生む歪み)によって交感神経は興奮しますが、このストレスには“食事・睡眠・運動・リラックス”の生活習慣やライフスタイル、心身の疲労度の絡む『物理的ストレス』の影響も大きいのです。ストレスというとすぐに精神的ストレスを思い浮かべてしまい、『精神的に苦痛や負担を感じていること(嫌な人とのやり取り・責任が重すぎる仕事・不快な思いをする状況など)』があまりないはずなのに、自律神経失調症になるなんておかしいと思いがちです。
しかし、実際の自律神経失調症には物理的ストレスと精神的ストレスの双方を受ける『現代病・生活習慣病(長年の好ましくない生活習慣や姿勢の繰り返しなど)』としての側面が強くあるので、精神的ストレスをあまり強く受けていない人でも発症するリスクはあります。ハイテクの現代社会やハードな労働環境に過剰適応したり、健康(自律神経系のホメオスタシス)に悪影響を与える生活習慣に気づけずに長く続けていたりすると、誰が自律神経失調症になってもおかしくないとも言えますが、一般的傾向としては特定の姿勢を固定したまま作業するデスクワークや運動習慣の乏しいインドア活動が多い人、頻繁に夜更かしをしたり昼夜逆転の生活リズムの人のほうが自律神経失調症になりやすいかもしれません。
自律神経失調症は特定の部位の症状だけではなく、不定愁訴と思われやすい全身のあちらこちらの部位のさまざまな症状を含んでいるので、すべての自律神経失調症の症状・原因・治療・予後を一義的に説明することはできません。しかし自律神経失調症でも特に、デスクワークをしている人(スマホ・パソコンを長時間使い続けてきた人含め)で『首・背中・肩の強いこり(こわばり)・固さ・痛み』が初め(中核)にあって、そこから『胃・腸の痛みや不快感、便秘、胃酸過多』『呼吸のしづらさ・息苦しさを伴うパニック、体調の乱れによる対人不安』『頭のフラフラ感、意識状態の違和感』が出てきた場合には、『健康を悪化させるライフスタイル』を知らずに続けてきたのではないかという『生活習慣病の側面』をきちんと食事・睡眠・リラックス・呼吸などの基本から見直していくことが有効なケースも少なくありません。
背中・首・肩ががちがちに固まって筋肉がこわばって息苦しくなる自律神経失調症と相関する現代病として、スマホやパソコンの画面を固定された姿勢・動作で長く注視したり操作したりすることで起こる『スマホ症候群・頸肩腕症候群・VDT症候群』があります。デスクワークやインターネットの趣味・娯楽などで長期間にわたって毎日スマホやパソコンを長時間利用してきた人、特に椅子に座った前傾姿勢を固定したまま長時間使ってきた人は、スマホ症候群(固定姿勢による筋肉硬直のこわばり・血流障害の悪影響)などを前提とする自律神経失調症の慢性症状が起こるリスクは高くなります。
画面(ディスプレイ)を毎日のように長時間注視して固定姿勢で固まっている時には、背筋が前傾姿勢で曲がって呼吸が速く浅く(小さく)なりがちですから、呼吸機能と関係する『横隔膜周辺の筋肉の動き』が弱まることで呼吸のしづらさのような症状が自覚されやすくなり、背筋をきちんと伸ばして深く息を吸えている感覚、自然に胸郭が広がる感覚(胸・腹の緊張がなくて深い呼吸がスムーズにできている感覚)がなくなりやすいのです。
自律神経失調症の『生活習慣病(現代病)・心気症』の側面と治療・自己改善:2
固定した猫背気味の前傾姿勢、速くて浅い呼吸、マウスを持ったりスマホを持ち上げるような『腕を上げて固定した姿勢』、更に夜更かしのライフスタイルというのは、『頸性神経筋症候群・スマホ症候群』のような形で息苦しさ、意識変性のパニック感、胃の圧迫感(胃もたれ・胃痛)が出る自律神経失調症の原因になる可能性があるわけです。こういった生活習慣・仕事の固定姿勢と自律神経の働きに相関関係があるという認識を持つことで、自律神経系が交感神経優位に大きく傾くことを予防しやすくなります。
『スマホは1日3時間まで』と決めたり、『1時間に1回は15分休憩して立ち上がって歩く』ようにしたり、『定期的にストレッチや体操をして固定姿勢でこわばった筋肉をほぐす』ようにしたり、『背筋を伸ばした姿勢でパソコンを使い、意識して深呼吸して横隔膜を動かす』ようにしたりすることが、固定姿勢の持続で筋肉がこわばりやすい生活習慣の改善につながり、自律神経失調症の予防・治療的対処にもなってきます。
インターネットやゲームに夢中になりすぎるとついつい時間を忘れて、夜更かしをする『夜型のライフスタイル』になりやすいのですが、早寝早起きの生活リズムを崩せば崩すほどに『健康維持に作用する自律神経系のバランス』は乱れきってしまいます。夜に遅くまで起きていると交感神経が休むべき時に過剰に活動してしまい、眠れなくなって『睡眠障害・睡眠不足』になりやすいのですが、睡眠不足(遅い時間に寝ること)の繰り返しは、自律神経系のバランスを乱して疲労解消と生体リズム調整ができないことと併せて、『万病の元』になりやすいのです。
現代病としての自律神経失調症の要因としては、『時間感覚が乏しくて熱中してしまうインターネット(SNSやソーシャルゲーム)・真夜中でも開店している飲食店やコンビニ・深夜でも遊べる繁華街』などで、普通に生活しているつもりでも『寝る時間が遅くなりやすい・睡眠時間が短くなりやすい・連休や失業の間に昼夜逆転になりやすい』ということも影響していると考えられます。早寝早起きをして1日6~8時間程度はぐっすり眠るという当たり前の生活習慣を守れている人が、小さな子供や余裕のある働き方の人を除いてかなり少なくなっているため、不規則な生活習慣や固定姿勢での作業・ネットを何年間もずっと続けていると、元々の体力・体質・ストレス感受性の違いで個人差はありますが、かなりの割合の人が潜在的な自律神経失調症のリスクを抱えていると言えます。
胃や腸に痛みや不快感が出やすい自律神経失調症には、精神的ストレスだけではなく『不規則な食事時間・お腹が減ってないのに食べ過ぎる(気晴らし食い)・甘いものやインスタント食品の間食のし過ぎ・夜更かしと睡眠不足』などが関係しています。食べ物が胃に入って交感神経が働くと胃酸が分泌されますが、内視鏡検査では病変部があまり確認できないにも関わらず胃痛が頻繁に起こる人の多くは、精神的ストレスや食べ過ぎ、夜更かしによって交感神経が過剰に働きすぎて、消化すべき食べ物がない時間にも『胃酸分泌(胃酸過多)』が起こっている可能性が高いのです。
特に夜更かしは、本来であれば夜中に休むべき交感神経が活発化して胃酸分泌を促すのに、胃の中には食べ物がほとんど入っていない状態になりやすく、胃酸過多で胃酸がゲップで上がってくるような不快症状(頻繁かつ長期の胃酸過多は胃粘膜を傷つけて胃炎・潰瘍を起こす)に悩まされるような人が多くなります。夜間は副交感神経が優位になって、本当は小腸・大腸のほうの運動が活発になり、朝の快適な排泄に備える時間でもあるので、胃腸が悪いのに夜更かしをすると夜中の副交感神経による腸の運動促進の刺激がなくなり、腸がはって膨満感が出たり頑固な便秘に悩まされることにもなります。
胃腸の調子が悪い人ほど『早い時間に無理してでも寝るようにすること(長時間寝付けなかったり中途覚醒したりする睡眠障害があれば心療内科などでまず睡眠障害改善に薬物療法で対処してもらうことも)』が大切になってくると思います。胃炎が悪化していたり潰瘍になっていたり胃がんが疑われる状態であれば、医療機関で適切な治療を受けるべきですが、いくら病院で制酸剤(H2ブロッカー、M1ブロッカーなど)や消化剤を処方されて胃酸分泌を抑制しても、何度も繰り返し胃痛や胃もたれ(胃部不快感)が起こるという人は薬の対症療法だけでは改善しない生活習慣・食習慣の乱れが蓄積されている事が多いと考えられます。
強い痛みやもたれがある場合(身体疾患として病変が明らかなケース)には、医師の治療や薬の助けを借りなければなりませんが、治療をしても何度も再発を繰り返してつらいという人は、『精神的ストレスになっている事柄はないか・早めの時間に就寝しているか(睡眠時間は取れているか)・緊張や不安の状態が続いていないか・食べ過ぎていないか・肉類や揚げ物、スナック菓子など消化に悪い食べ物ばかり食べていないか・固定姿勢の作業で背中の筋肉や横隔膜周辺が固まっていないか』など基本的な生活習慣の乱れや精神的ストレスの蓄積を正していくところに立ち戻って考えたほうがいいかもしれません。
自律神経失調症の症状を改善させるための自助努力で、生活習慣やライフスタイルの基本に立ち戻るというのは(精神的ストレスが関係していればその軽減・除去も大切です)、『食事・睡眠(休養)・運動(ストレッチ)・コミュニケーションと認知』を健康を崩しにくいもの、自律神経系のバランスを乱さないものに変えていくということです。知識や情報としてみれば誰もが『健康的な生活習慣の常識』として知っていることばかりなのですが、自律神経失調症の『現代病としての側面』で指摘したように、現代人は普通に生活していても『固定姿勢で筋肉を硬直させやすい・仕事の集中や人間関係の配慮で緊張しやすい・呼吸が浅く速くなりやすい・スマホやPCの画面を見る時間が長くなりやすい・スマホやマウスの操作で肩腕を上げた不自然な姿勢を続けて背中に負荷がずっとかかりやすい・食事の回数や時間が不規則になりやすい・夜更かしや睡眠不足になりやすい・間食や食べ過ぎになりやすい・胃酸過多や腸の運動低下になりやすい』などで交感神経が過剰かつ長期に興奮しやすい環境や誘惑に囲まれやすいのです。
自律神経失調症は薬・施術の対症療法で短期間改善することがあっても、最終的には自分で自分の身体・精神の状態を把握しながら、意識的な生活習慣全般の改善で治していくしかない部分がありますが、『言うは易し、行うは難し』で自分の身体の緊張・固さ・違和感に早めに気づいたら、面倒でも早めに生活習慣を改めていくことが重症化を防ぐこと(本格的な症状回復の速さ)にもなります。健康状態・自律神経を崩さない正しい生活習慣(早めに寝てよく眠る・規則正しく食べて間食はせず食べ過ぎない・不自然な固定姿勢を長く続けず定期にストレッチをする・横隔膜を動かすような深呼吸やリラックスを意識する・集中しての緊張や落ち着かない不安を長引かせないなど)をコツコツと地道に積み重ねていく大変さはありますが、普通に暮らしたり働いたりしているつもりでも、不健康な生活・姿勢の積み重ねで急に大きく体調を崩しかねない『自律神経系のアンバランス』には気をつけたいものです。
『精神的ストレス(疲労感)』を感じやすい人の神経過敏・精神的萎縮・ACの要因
精神的ストレスを感じやすい人と感じにくい人の個人差は大きいが、その主観的なストレス感受性は人生のさまざまな側面(仕事・恋愛・結婚・家族・学校生活・人間関係)の幸不幸の実感にかなり大きな影響を与えている。精神的ストレスを感じにくい人にも『対人スキルや環境適応力が高い人・自己肯定的で楽観的な認知が自然にできる人・問題解決的な行動力がある人』といった望ましい特徴を持つ人だけではなくて、『他者に迷惑や危害を加えても良心の呵責を感じにくい人・他者否定的(他責的)で反社会的な認知が自然にできる人・ゴネたり粘ったり無理強いしたりの行動力がある人・無神経や厚顔無恥な人』といった周囲の他人・社会をちょっと困らせるような人もいる。
精神的ストレスを感じやすい人というのは上記の対照的な特徴でいえば、『対人スキルや環境適応力が低い人・自己否定的で悲観的な認知がしみついている人・問題解決的な行動力がない人』と言える。よりストレートに言えば、『他者・社会・課題に対する不安感や恐怖感が強い人(できれば好ましくない刺激になりやすい他者・社会・課題とあまり関わらずに避けていたい人)』でもある。『他者・社会・課題に対する不安感や恐怖感が強い人(できればそれらを避けたいと感じていて引け腰な人)』は、現実社会の仕事や恋愛、対人関係などでどうしても精神的ストレスを感じやすくて傷つきやすくなる。本来であれば親しくなって互助や安心、癒しを得られるような他者に対しても警戒して不安を強く感じるので、対人的に孤立しやすく、誰にも甘えたり援助を求めたりといった行動もできなくなってしまう。
この他者・社会に対する悲観的認知に基づく不安感(恐怖感)は、些細なことを気にする『神経過敏な性格傾向』や『精神的萎縮』のある傷つきやすい人格構造とも関係しているだろう。なぜストレスを感じやすい神経過敏な性格傾向が形成されてしまうのかの根本原因の一つは、過去の成育歴のプロセスで『親(養育者)・重要な他者から自分の存在価値・能力・意欲・興味などを否定されたり懐疑され続けたトラウマティックな体験』である。『アダルトチルドレン(AC)に特徴的な親の支配的・他責的・監視的な親子関係』とも重なる部分が多くなっている。
アダルトチルドレン(AC)の人の子供時代の最大の特徴は、『親から子供らしい扱いをしてもらえなかったこと(適度な愛情・保護・肯定が与えられず小さな頃も親に甘えたり頼ったりができなかったこと)』であり、そのことが『親の不機嫌・否定・非難・感情変化に対する精神的萎縮や自己否定』を生み出してしまう。小さな子供時代にも、親の無条件の肯定的な愛情や評価、受容を体験できなかったこと(逆に自分の存在価値や人生に対して否定的・命令的・懐疑的な扱いをされたこと)で、『他者・社会・人生に対するのびのびとした基本的信頼感の発達』が阻害されやすくなる。乳児期の発達課題でもある基本的信頼感が損なわれるということは、他者・世界から常に傷つけられるのではないか否定されるのではないかという『他者不信・精神的萎縮の態度』を形成してしまうということでもある。
他者・世界(社会)に傷つけられたり否定されることを恐れることによって、消極的・自衛的な引っ込み思案の行動が増えやすくなり、物事に積極的に取り組もうとするモチベーションややる気も阻害されることが多くなる。特に失敗して他者から叱責されたり馬鹿にされたり(揶揄されたり)することを過度に恐れるので、『チャレンジ精神・上達のための反復練習やリハーサル』がしづらくなり、『頑張って根気強くやればできること』でも挑戦しないことによってできないままになりやすい問題が出てくる。子供時代に親(養育者)から『成功と失敗の二分法の価値観+他の家の子供との過度の比較とダメだし』を植えつけられてしまうと、常に『誰かから自分の行動を監視されていて粗探しされている感覚(何かを頑張ってしてもまた否定されたり怒られたり馬鹿にされたりするのではないかという不安)』が強まってしまう。その結果、成功するか失敗するかの二分法の価値観ばかりに囚われてしまい、実際にやりたいことをやってみる前から諦めてしまうという意欲減退や精神的萎縮が起こりやすいのである。
親の自己嫌悪や劣等コンプレックスは『子供に対する過剰な成功願望の押し付け・失敗やミスの全否定(完璧な100点でないと意味がないとする完全主義)』に陥りやすく、自分が自分の人生で満足(成功)できなかったことを子供に熱狂的・監視的に押し付けて、少しでもできないと怒ったり否定したりしてしまうのである。『子供の長所・頑張ってできたこと・正解したところ』をまるで見ないで、『子供の短所・失敗したこと・間違ったところ』ばかりをあげつらって否定・叱責をしてしまう。
子供ながらに一生懸命頑張った部分を褒めたり肯定したりしてあげることがないので、子供はどうせ評価されないので努力や挑戦をするモチベーションを失いやすくなり、『親から叱られないように・否定されないようにという無難・臆病なびくびくした精神的萎縮』の行動パターンに固定されやすいのである。いつもどこかでミスをしないか間違ったことをしないかと上位者に監視されて粗探しされているような感覚が刷り込まれてしまうと、基本的信頼感の獲得に支えられた『自由な発想と行動・思い切った挑戦や目標設定・失敗やミスを恐れない強さ』を身に付けることができなくなる。上位者(他者)からの否定を恐れる神経過敏や精神的萎縮によって異常なまでにストレスに敏感に反応しやすくなると、心身の不調が多くなって疲れやすくなるし、モチベーション・意欲もそれに合わせて低下しやすいのである。
親が子供を自分の思い通りにしても良い『所有物』のように扱う支配的・否定的な間違った育児方針を取っていると、子供は自分を監視・支配している誰か(親の代理表象となる上司・先輩など)に対する神経過敏や精神的萎縮が起こりやすくなり、本来であれば人並みに持っているはずの想像力や自発的なモチベーション、挑戦意欲、ストレス耐性を発達させていくことが難しくなってしまうのである。のびのびとしたゆったりした心理状態になれない、常に叱られたり否定されないかと緊張して不安な気持ちになっている、くつろいだ楽しい人間関係の構築やコミュニケーションができないとなると、仕事・職場・学校における不適応だけでなく、私生活の人間関係の部分でもさまざまな支障や苦悩が生まれやすくなる。
精神的ストレスを感じにくくして仕事・学業・人間関係に疲れにくくするためには、自分がくつろいで過ごしている(何かの課題を上手くこなして達成している)イメージトレーニング、実際の行動療法的な苦痛刺激への慣れ(安心できる関係・経験の反復的な繰り返し)、達成できる小さな目標を達成することからの挑戦課題のリスタートといったことが効果的だが、自分は自分の人生を自己肯定感を培いながら生きていくのだといった『親(=過去のトラウマティックな記憶・自己否定的な認知の影響)からの精神的自立・リラックスした感覚の獲得』が大きな課題になってくる。
元記事の執筆日:2017/04/08