中学生・高校生の自殺問題2:“学校・家庭の世界”における視野狭窄・居場所喪失への支援対応
中年期のSNS疲れの心理と対策1:実名SNSとリアルの人間関係と世間体のストレス
中年期のSNS疲れの心理と対策2:中年の自慢はなぜ嫌がられるのか?共感・共有の土台があるか
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中学生・高校生の自殺問題1:日本の統計的な自殺の推移・自殺企図の危機的な精神状態
21日に、愛知県犬山市内のマンション敷地内で、同市内の中学校に通う15歳の男子生徒が飛び降り自殺したことがニュースに出ていたが、少し前にも埼玉県の女子中学生がクラスで突然自分からテスト中の行為について謝罪した後に飛び降りた痛ましい自殺報道があったばかりであった。2010年代に入ってから日本の統計情報としての自殺件数は減少傾向にあり、かつては年間3万人の自殺者がいることが自殺統計上の前提にされていたが、近年は3万人を大きく下回って推移している。自殺者がもっとも多かったのはバブル崩壊後の経済と家計(雇用・所得・家族を巡る人生設計)の混乱が続いた1998年で、3万2863人もの人たちが自殺したとされる。
2015年の自殺者は2万4025人で1998年と比べて1万人近く減少している。統計上で3万人を超えていたのは2011年の30651人が最後で、翌2012年には27858人へと減少、それ以降は3万人を超えた年はない。ただ自殺統計には『遺書のない自殺と見られる状況・死因の特定ができない変死の遺体』はカウントされず、『(安否不明・自殺する恐れもあった)長期の失踪者・行方不明者』も含まれないことから、『実際の自殺者』は統計に出てくるものよりもかなり多いという見方も以前からある。自殺者の男女比率は、どの年度でも概ね男性7~8割、女性2~3割であり、過去の時代ほど男性比率が高くなっているが、近年は自殺の男女比は概ね『7:3』で推移していて、女性の社会進出や経済的な自己責任の増加(男性に扶養されにくく守られにくくなった・結婚後も男性雇用が不安定化し低賃金化した・高齢夫婦の老後破綻や介護問題など)が女性の自殺者増に一定の影響を与えた可能性が推測される。
年齢別の自殺者数を見れば、中学生・高校生といった10代の未成年者の自殺件数は500件前後であり、他のどの世代よりも自殺者の数そのものは少ない。基本的に自殺問題がもっとも深刻なのは『40~70代の中高年の男性』であり、人生の抜本的な方向転換や強い痛みを伴う深刻な病気(心身が不自由になり家族の介助が追いつかなくなる障害)からの健康回復が難しくなる年代であることも影響して、『健康・経済・家庭の問題』によって自殺する人がかなり多くなっている。中年者・高齢者の自殺問題も軽視して良いものでは当然ないが、500人前後の統計的には大きくない数字であっても、『10代の若者の自殺』というのは『これから先の長い人生・今ある苦しみや悩みがなくなる可能性・目的や夢を実現していき喜びも多い未来』をイメージさせるだけに、中高年の自殺よりも社会・人心に与える負のインパクトや悲観・悲哀の度合いが大きくなってしまう。
ただ未成年者の自殺件数そのものは、現代よりも戦前戦後のほうが多く、1940~1950年代の10代の未成年の自殺率は10万人当たり10人を超えており(明治期・大正期も子供の人権保護の状況が悪くて虐待・体罰・いじめ・過酷な児童労働・親から切り離されての奉公も多かったので自殺率は現在よりもかなり高かった)、現在の10代の自殺率の二倍以上もあった。高度経済成長と子供の人権尊重によって、戦後は一貫して子供の自殺率は低下し続けていたが、バブル崩壊後に再び微増傾向を示していることが懸念されている。中年者の自殺の原因は『経済・家庭・健康の問題』が多く、高齢者は『健康・経済・介護の問題』が多いが、学校を卒業した20~30代の若年層では『仕事・人間関係・恋愛の悩み』が多くなりやすい。小学生の自殺というのもあるが数が少なく、10代の中学生・高校生の自殺の原因はやはり『学校の問題』がトップであり、それに『家庭の問題』が続いている。
中高生が自殺すると反射的に『いじめの有無』について報道され、『いじめられていたという話があったかなかったか・教職員やクラスメイトがいじめの事実を認識していたか否か』が掘り下げられる。中高生の自殺の原因には学業不振・進路の悩み・家庭や虐待の問題・悲観主義や虚無主義もあるが、『学校の友達関係のトラブル・いじめの被害』が自殺の引き金になることも多い。ただし、小学生まで含めた子供の自殺原因のトップが必ずしもいじめなどの友人関係の問題であるというわけではなく、『学業不振・家族の叱責や虐待・家族関係の不和』のほうが原因としては多くなっている。
自殺の心理学では、人間が自殺を企図して実行してしまう時には、『死の恐怖(生の希望)』を上回る以下のような心理状態・条件が揃っているとされる。そのうちの幾つかは、うつ病(気分障害)の症状とも重なっており、自殺の直接・間接の原因として精神疾患による精神運動抑制や衝動性・判断力低下も考えられる。
1.『心理的・身体的な苦痛』が耐え難いほどに強くなっており、この先もその苦痛が和らいだり無くなったりする希望を持つことができない。
2.『頼れる相手・相談できる場所・信頼できる関係』がなくて、自分ひとりで悩みや苦しみを抱え込んでしまい追い詰められている。
3.『職場・学校・家庭』に自分の居場所がないと感じていて、自分が誰からも必要とされておらず誰も自分を助けてくれないと思い込んでいる。
4.『思考力・判断力』が低下していたり『視野狭窄』になっていたりして、『今直面している悩み・苦しみ』から逃れる方法を自殺以外に考えられなくなっている。
5.『今の悩み・苦しみ・痛み』が今後もなくなることがなく、ずっと続くか悪化すると予測して絶望している。
中学生・高校生の自殺問題2:“学校・家庭の世界”における視野狭窄・居場所喪失への支援対応
中学生・高校生の自殺問題の原因の多くは『学校の問題』であるが、具体的には『学業不振・進路(入試)の悩み・いじめを含む友人関係の悩み』に分類される。『学校の問題』に『家庭の問題』が加わると更に自殺リスクは高くなってしまうが、家族の問題というのは具体的には『親からの叱責や虐待・納得できない家庭環境や親子関係・家に居場所がないと感じる・親と何でも話せるような関係性がない』などになる。
中学生・高校生の自殺問題1:日本の統計的な自殺の推移・自殺企図の危機的な精神状態
中学生・高校生の居場所は『学校・家庭』に絞り込まれるから、いじめられたり学業に躓いたり(授業についていけず試験の結果がでなかったりで進路に迷う)、親から虐待や存在の否定を受けていたりして『学校にも家庭にも居場所がないという悲観的な認知・感情』が強まりすぎると、心理的にかなり不安定になり落ち込みやすくなる、これからどうすれば良いか(自分がどこにいたら良いか)分からなくなるのである。中学生・高校生の自殺リスクは『学校・家庭だけが人生のすべてと感じる視野狭窄』や『今のつらくて救いのない状況が今後もずっと続くという近視眼的な悲観主義』と相関している。
そして、『精神的・身体的な苦痛が耐えがたいほどに非常に強まっている状況や関係』があって『学校にも家庭にも居場所がない(誰も自分を助けてくれず自分のつらさに関心を持ってくれない)という悲観的な認知・感情』が強まった時には、『つらくて苦しい状況で自分が何をすればいいのか・どうすれば今の苦痛や絶望を和らげられるのか・自分の居場所(いてもいい場所)がどこにあるのか』に答えが出せなくなって混乱してしまい自殺リスクが急速に高まる。いじめや虐待、仲間外れ(集団からの疎外)、親や周囲の無理解、叱責や否定、学業不振(将来不安)などが自殺の原因になりやすい。
『精神的・身体的な苦痛の大きさ』があって『学校と家庭における自分の居場所のなさ(孤独感・自己価値の喪失・焦燥感)』と『親や周囲の無理解(何でも話せる関係性が築けていない・泣いたり逃げたりすると逆に叱責される・人生や学歴とはこうあるべきというような理想の型に親が固執していて逃避や挫折が許されそうにないなど)』が重なってくる時に、精神的に追い詰められて自殺企図に至ってしまうケースが多い。中学生・高校生の自殺問題を回避するための正攻法の方策は、『精神的・身体的な苦痛の大きさそのものを減らすこと』と『学校と家庭にストレスの小さな居場所(その人の存在価値が認められる場)を作ること』であるが、実際にはいじめ・虐待・疎外感・劣等感・人間関係の不和を直接的に解決することはなかなか難しい。
子供の自殺問題に対処する基本的姿勢として大切なのは、『今のままのあなたでも価値があることを伝えること(自己否定・将来悲観の思い込みを和らげること)』と『どうしても学校や友達関係(いじめ)がつらくて耐えられないのであれば学校に行かないという選択肢も認めてあげること』であるが、親との話し合いが難しかったり親から子供の価値が否定されていたりする(良い成績を取らないとダメだとか良い学校に行けないと人生が上手くいかないなどの価値観を刷り込みすぎていて子供の劣等感・自己不全を煽っている)『家庭の問題』があると、解決・援助は更に困難にはなってくる。
中学生・高校生の自殺問題で最悪の結果を回避するためのキーポイントは、『話し相手になる(相手の悩みやつらさに関心を持ち話を聴く)・居場所を作る・逃げ道を認めてあげる』であるが、本気で自殺を企図するほどの精神状態に追い込まれている人は『人間関係・親子関係からの疎外感(話しても自分の悩みや苦しみを理解してもらえない、プライドや自己イメージのために話したくない等)』にはまり込んでいることが多いので、親・教師・友人などの側から『本人の普段と異なる様子』に気づいて支持的に関わっていかないと難しいところがある。
大人の自殺問題まで含めると『容易には逃げ切れない追い詰められ方(人生や仕事そのものが究極的には逃げるだけでは対応しづらい)』や『意欲減退のままでは許してもらえない状況・世間(やる気・前向きさがなくて援助を求めると強い批判を受けやすい)』なども出てくるので、子供の自殺問題よりも難しくなる。しかし、未成年者の自殺リスクのある精神的危機に対しては『当面の逃げる選択肢・新たな居場所・深く話せる相手のいる状況』を作ってあげて、『今いる視野狭窄の世界(学校・家庭・友達だけに囚われた世界)』から視野を広げてあげてリラックスさせてあげることが有効だろう。
もちろん、本人の性格特性や友人関係の内容、学校適応の良さ、ストレス状況などによっては、『悩み・苦しみの原因となっているいじめ・友人関係・家庭問題』そのものに直接的にアプローチして改善を図っていく正攻法で上手くいくケースもあると思うが、それでも『思春期・青年期に多い視野狭窄と近視眼・抑えきれない衝動性(反射的な飛び込み等)・絶望を深める疎外感』などには十分な注意が必要になってくる。中高生の未成年だけではなく大人でも『精神的・身体的な痛みのつらさ+どこにも居場所や承認の関係がない孤立感』がセットになると、耐えがたいほどのつらさを実感させられるものであるが、『自殺以外の苦しみを逃れる選択肢を考える判断力・周囲の人たちの悩みへの関心と相談支援(話せる相手がいると実感させること)・今いる場所以外の居場所や人間関係を探せる視野の広さ・こうでなければならない(これがダメだと生きていられない)という硬直的な義務感を捨てた柔軟さ』があれば、結果は随分と良くなってくる可能性があるように思う。
中年期のSNS疲れの心理と対策1:実名SNSとリアルの人間関係と世間体のストレス
『SNS疲れ』というのは優に5年以上前から言われている現象で、SNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)上で『自分にとってメリットのない形式的な人間関係・やり取り』を延々と終わりなく続けることに疲れたということです。SNS疲れや中年者の自慢・自己愛と受け取られやすい投稿についての記事がBLOGOSにあったので、SNS疲れの要因やその心理を少し考えてみたいと思います。
「SNSやめた」という理由に意外と納得 「中年の自慢投稿がつまらない」「常に誰かと繋がっている感じが煩わしい」
中年とSNSーなぜフェイスブックは恥ずかしいのか 酒井順子「センス・オブ・シェイムー 恥の感覚 ー」 - 酒井 順子
友人知人の日記やつぶやきの投稿の閲覧をして、イイネ!を押したりコメントをしたりしてレスポンスを返すのがSNSの一般的な使い方ですが、SNS疲れはやはりFacebookやTwitterを中心とした『実名SNS』で起こりやすい心理的現象でしょう。『実名SNS』と『匿名SNS』では、同じSNSであってもその利用方法や投稿内容がかなり違ってきます。
リアルの家族・友人知人(過去の同級生・同僚など)とつながる実名SNSでは、『自分の行動(近況)の報告・リアルのイベントへの誘いかけ・どこかに誰かと出かけた時(何か食べた時)の写真の投稿』が中心になりやすく、実生活で関わりのある人も見ているので『自分の本音の意見・主張・価値観の開示(みんなの考え方と違っている空気を悪くするような投稿)』はしづらくなります。実名SNSは、『リアルの自分の私生活・仕事や経済・人間関係などの充実度』にある程度は納得できている時期でないと、『自己と他者の差異の比較』によって面白くないと感じたり落ち込みやすい問題はあります。実名SNSは人によって違いますが『建前・世間体のコミュニティ』になりやすく、仕事・結婚(家庭)・子供と経済状況を軸にした『リアルで自分が何をしているか・どんな仕事や生活の状況にあるか』が前提になりやすく、周りの状況・常識からズレてくると疎外された気分にもなりやすいからです。
ネット上だけの付き合いの相手も多い匿名SNSになると、『自分の思考(感想)の報告・ニュースやテーマについての意見交換・趣味や興味関心を深める記事』などの比率が増えて、リアルの友人知人の目(世間体)をあまり気にしなくて良くなり、『自分の本音の意見・主張・価値観の開示』をしやすくなります。その代わりに、『リアルの自分の私生活・仕事や経済・人間関係などの充実度』を知ってもらいたいというユーザーには、どこの誰かよく分からない人を相手に投稿する匿名SNSは物足りなく感じやすいでしょう。
実名SNSとして使われているのはFacebookとLINE、Twitterが多いですが、自分自身の近況や行動を写真もアップして報告するという目的で使われやすいのはFacebookでしょう。LINEは日記機能の使用率が低く、基本的にはリアルタイムでやり取りできるチャットやすぐに既読確認できるメールのような便利な連絡のツールとして使われています。Twitterは高校生・大学生などの若年層ほど実名登録が多いですが、年齢を重ねると匿名に移行していく人も多く、Facebookのように『リアルの友人知人だけ』をフォローして近況報告するような使い方をしている人は少ないですね。Instagramも実名の人も匿名の人もいますが、『旅行・風景・料理・人物・モノなどの写真』を共有するSNSなのでちょっと目的や性質が違ってきます。
匿名SNSと断定できるサイトがあるわけではないですが、現状ではmixiが匿名SNSに近いものになっています。mixiは写真つきで自分・家族・仲間の近況報告をするFacebookのような使い方をしているユーザーは少なく、ニュースやトピック、趣味・興味に関する意見・情報の交換が多くなっている印象があります。SNSをやめたくなる『SNS疲れ』は、匿名SNSよりも実名SNSで起こりやすい現象だと思われますが、特に中年期以降は『自分と全く違う人生を進んでいるそれほど親しくもない(実際に会って何かすることもほとんどないであろう)友人知人の近況報告的な投稿』を目にすること自体がストレス(不快・無意味・面倒くさい)になってしまう人も出てくるでしょう。
中年期と青年期と老年期のSNS疲れはそれぞれ違った要因と経緯がありますが、青年期の人(学生の若者)はほとんどが学校で授業を受けて勉強して放課後は部活・バイトをしてといった感じで『友達も同じようなライフスタイル・目的意識(進学か就職か)』を持っていることが多いので、『友人知人との差異』は気になりにくいでしょう。SNS疲れも『友人知人の自慢のように感じられる投稿を見るのがストレスだから』より『他に面白いことや新しい仲間ができたから・投稿したい内容が特になくなったから』といった理由が多くなると思います。
引用記事には『中年の自慢投稿がつまらない』というタイトルがありますが、若者同士のコミュニティでは『若者の自慢投稿がつまらない』という感想は中年期の人よりは出てきにくいと思われます。普段から頻繁に交流・対話しているような若者同士で、自分と類似の特徴・感性を持つような仲間であれば、自慢的な投稿であっても『自分とも関わりのある肯定的な内容』として受け容れてもらいやすい。若者でも中年者でも本人に自慢している自覚があるかどうかは人それぞれでしょうが、自慢と受け取られやすい投稿でも『自分とも関わりのある肯定的な内容』として受け取れるだけの『親密な関係性・人生の共有感・競い合いの無さ』があれば、不快なストレス(SNS疲れの原因)にはならず、むしろ自分も興味を持ってその投稿(近況報告)を見たくなるものなのです。
中年期のSNS疲れの心理と対策2:中年の自慢はなぜ嫌がられるのか?共感・共有の土台があるか
若者・学生にはまだまだこれから何をするか選べる、もっとこれから成長して何者かになれるという『未来・夢』があり、学力・能力・魅力などで色々な差(優劣コンプレックス)はあっても、友人知人と同じ学校に通って学び、同じ部活で運動してきたといった『平等性』があるので、就職・結婚・地位・経済状態・介護問題などによって生じる中年期以降の格差や困難とはやはり重圧感が違います。
中年者は今まで積み上げてきた学業・仕事や家族・人間関係にそれなりの形が見えてきて、40代以降になると年齢的・体力的にも『ゼロからやり直すような大転換・人生の蓄積による差異を乗り越える大逆転』は(個人差はありますが)一般にしづらくなります。雇用形態・所得水準・結婚や離婚(子供の有無)・家の財産などによる格差が何十年も積み重なることによって、お互いが『共感・共有・祝福のしづらい差が大きすぎるポジション』になってしまうことも稀ではないのです。
中年期のSNS疲れの心理と対策1:実名SNSとリアルの人間関係と世間体のストレス
『中年の自慢投稿がつまらない』のは、青年期以前のこれからお互いに頑張っていこうの平等性が失われて格差が大きくなりやすいからということが前提にあり、『親密な関係性・人生の共有感・競い合いの無さ』も感じにくくなるからでしょう。更に、酒井順子さんが書いていた大人が子供っぽく自意識をダダ漏れにして承認欲求を押し出すことに対する『恥ずかしさの感覚』も影響していると思いますが、年齢を重ねるにつれて『共感・共有・共通の土台にある自意識・価値観・生活基盤』のズレが次第に埋め合わせにくいくらいに大きくなりやすいのです。
大学生が『ここのカフェ、おしゃれなお店でスイーツもラテも美味しかったよ』と友達と一緒に笑顔の写真つきで投稿をしても、同級生はそれを自慢・自己顕示としてネガティブに受け取ることはなく、イイネ!を押して『今度は私も誘ってね』と気軽にコメントできるでしょう。しかし、中年者がミシュランガイドに掲載されている1食2万以上はしそうな三ツ星の高級レストランに行ったり、メルセデスベンツやBMWの新車を買ったり、頻繁に高級なシティホテルに泊まりグルメを堪能する海外旅行の写真を投稿しても、そこには『共感・共有・共通の土台にあるべき自意識・価値観・生活基盤』がないことが多いので、同じような経済力(金銭感覚)・価値観を持っている友人以外は義理のお付き合いでイイネを押すだけになりやすいのです。
『中年の自慢投稿がつまらない』と思われやすい理由の一つは、若者・学生の自慢投稿はまだ『自分とも関わりのある肯定的な内容』として解釈されやすいのに対して、中年の自慢投稿は『自分とは何の関わりもないただの自慢・自己顕示(当てつけ)の内容』として解釈されやすいこともあるでしょう。また結婚・子供・生活水準などの差異は、年齢が上がるにつれて『思い通りにやり直し(ゼロからの再チャレンジ)が効かないこと』になりやすいので、無邪気な近況報告や行動の記録であっても、望んでいて結婚できていない人(子供に恵まれていない人・正規雇用になれていない人)にとっては、繰り返しの投稿が精神的ストレスになりやすくなります。
あるいは、直接の友人だったり、親しい付き合いもある人が、そういった自慢めいた投稿を繰り返し続けることで、『上手くいっていない自分に対する当てつけのマウンティング』なのかという被害妄想を刺激して関係が悪化する恐れもあります。Facebookのような実名SNSでは『多種多様な状況・背景・悩みを抱えた人』が友人に登録されているほど、本人にとってそんなつもりはなくても知らず知らずのうちに誰かのストレスになっているリスクがあるわけですが、『進学・就職・仕事・結婚・子供・生活水準・病気・介護などによって生み出される差異』があってもなおその人と付き合いを続けていきたいと思える人が“本当の友達”なのかもしれません。
とはいえ、男性では仕事が上手くいっているか否か、女性では結婚しているか否か(子供がいるか否か)によって、お金に困っているか否かなどで、『共感・共有・共通の土台にあるべき自意識・価値観・生活基盤』はどうしても崩れやすくはなります。過去にかなり親しかった友人でも、お互いの人生・仕事・家庭・経済力の差異が大きくなりすぎると、価値観や話題が合いにくくなってしまいやすいのです。大人になってからの付き合いも基本的には『類は友を呼ぶ・似た者同士・余裕あっての社交性』になりやすい傾向がありますが、SNS疲れが起こりやすい一因は『昔は似た者同士だったが、今はかなり違ってしまった共感しづらい人』とも常につながっていなければならないストレスかもしれません。
酒井順子さんもFacebookでの旧友再会ブームが長続きせず沈静化してしまったとして、『私達は、やはり離れるべくして離れたのであるなぁ。インターネットで無理やりつながらなくてもよかったのではあるまいか』と感想を述べていますが、『本音で相手に興味関心を持ち続けられる、苦楽を素直に共感し合うことができる旧友』はかなり希少価値が高いものである(SNSで何十人、何百人以上の友人を登録していても本当の友人ではなくなっていることが多い)と思います。『直接会って話をしてお互いの顔を見ながら美味い飯でも食べている』ほうがSNSよりも気持ちが通じ合う気がするとも書かれていますが、そこまで深く親密な付き合いをしたいとまでは思えない人(どうでもいい人とまでは言えないがただ過去に学校・会社などで接点があっただけの人で、つぶさな近況・行動まで知りたくない人)を、たくさん登録し過ぎていることもSNS疲れを引き起こしやすいのでしょう。
家族・夫婦・恋人でさえも毎日顔を突き合わせて見続けていれば息が詰まってストレスになってしまうことも多いわけで、『SNS的な常時のつながり』というのは、真剣にのめり込んでやり過ぎる人ほど『相互監視・充実感の競争のような息苦しさによる疲れ』に襲われそうです。SNSで他者の自慢・自己顕示とも受け取れる投稿に振り回され過ぎるのも『自意識・競争心の過剰』ではあるのだが、SNS疲れを回避する直接的な対策は『ストレスを感じる人のタイムラインを非表示にする・今後もリアルでの付き合いを続けなければいけない人でなければ友人リストから外す・疲労や苦痛が強ければSNS自体をやめる(SNSをしばらく休止するも含む)』となる。
SNS疲れの心理的な適応策は、『自分は自分・他人は他人で割り切ってスルー力(鈍感力)を高める+自分は自分の話したい内容を投稿して自分が楽しめるSNSの場や対話を作る(自分の話題に乗って来てくれる価値観や感性の合う友人を重視して話す)+相手は自分の話したいことを話しているだけ、自分も自分の話したいことを話すだけというSNS上の課題の分離をする』ということになるだろう。
元記事の執筆日:2017/07/23