自己意識が高い人と低い人の主観的幸福度の実感:自己中心性と私的・公的な自己意識、自己意識(自意識)が強すぎるとメンタルヘルスが悪化する:理想自己と現実自己のギャップ

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自己意識(自意識)が強すぎるとメンタルヘルスが悪化する:理想自己と現実自己のギャップ


人の心を開かせるコミュニケーションスキルと傾聴・共感の効果:1


人の心を開かせるコミュニケーションスキルと相手の考え方・感じ方を正しく知る質問技法:2


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自己意識が高い人と低い人の主観的幸福度の実感:自己中心性と私的・公的な自己意識

自己愛性パーソナリティー障害(NPD)や反社会性パーソナリティー障害(ASPD)では、他者とのトラブルの原因として『自己中心性』が問題になりますが、人間の大半は程度問題を考えなければ自己中心的な行動様式を取ることが多いものです。その自己中心性が『意識的』であるか『無意識的』であるか、他人に直接の迷惑(危害)を加えるものかどうかという違いは確かに大きいのですが、人間の行動・関係の動機づけはよほどの余力がない限り、『自己中心性(自己利益や保身・名誉や承認・快の刺激・好きな人を選び・生活のため・仲間外れにされない居場所の確保など)』を大きく外れることは少ないといえば少ないのです。

パーソナリティー障害の水準にまで行かなくても、自己中心的な人に対して『自分のことばかり考えているんですね・自分だけが良ければいいんですね』という批判が言われることは多いのですが、この台詞を言っている人の立場においても『もっと自分のために尽くしてほしい・こんなに苦しんでいるのにあなたは心配じゃないのか助けてくれないのか・私を見捨てるというのなら人でなしではないか』という自己中心的な要求とその要求を受け容れてくれない相手への不満・失望・怒りのようなものが表出していると推測されます。自己中心的な人は自分のことばかりを考えている人と言われるように、一般的には自分で自分に対して注意・意識を向ける『自意識(自己意識)が強い人』になりますが、自意識が強いからといって必ずしも自己中心的な人になるとは限らないのが人間心理の面白いところでもあると思います。

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同じ自意識が強い人であっても、『自分の視点・目線から見た自意識が強い人』『他人(世間)の視点・目線から見た自意識が強い人』とでは、その価値観や生き方にのっとった行動原理がまったく違ってくるのです。自分の視点・目線から見た自意識のことを『私的自己意識』、他人(世間)の視点・目線から見た自意識のことを『公的自己意識』といいます。人間はみんな多かれ少なかれ自己中心的な傾向は持っていますが、それでも他人に迷惑をかけず危害を加えない人、マナーや礼儀がしっかりとしていて他人(世の中)のために行動しているような印象を与えやすい人は、人(世間)からどのように見られているかを気にして自分の言動・態度を調整する『公的自己意識』が強いのです。

今でこそ、シニカル(冷笑的)な目線から『意識高い系=現実離れした中二病的な自意識』と揶揄するような批評もありますが、一般的には『自意識が高い=私的自己意識と公的自己意識の双方が高くて向上心や貢献欲求がある』というポジティブな意味合いで、意識が高いと言われることが多いわけです。自分で自分に意識を向けていることが普通(当たり前)と思う人も多いのですが、仕事をしたり出かけたり遊んだりして社会生活を送っている時には、『外部の世界・他者』に外向的な意識・関心を向けている事の方が多くなります。

ある意味では、『自分自身に意識を向けている状態』や『自分自身のことについて(自分自身が人にどう思われているかについて)考えている時間』が少ない人のほうが、外部世界に適応して主観的幸福度が高くなりやすい(あれこれ迷ったり悩んだりすることが無くなりやすい)のです。自分の人生や現状に満足している人のほうが、私的・公的な自己意識が低くなりやすいというのは、仕事が順調に進んでいて没頭している時や仲の良い恋人・友達と一緒に楽しく遊んでいる時(おしゃべりしている時)を思い出してみても当てはまるように感じる人が多いのではないでしょうか。しかし、私的・公的な自己意識の高さは『外部社会・人間関係への適応度』とは別の部分で、『ナルシシズム(自己愛)・主観的な自己評価』を高めることがあるので、本人にとっては必ずしもそれが苦痛な状態ではない可能性は多いにあるということもあります。

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自己意識(自意識)が強すぎるとメンタルヘルスが悪化する:理想自己と現実自己のギャップ

自己意識が強い人で主観的な満足度(自己評価)が高い人には、自分ひとりで物事を深く分析して考えること自体が好きだったり、読書・勉強・言論を通して自分の内面的な知識・思想・信念を鍛錬していくことが好きだったりするC.G.ユングがいう『内向的で思考的(直観的)な性格傾向』の人が多いのです。反対に、自己意識が弱い人で主観的な満足度(自己評価)が高い人には、あれこれ知識・情報をこねくり回し理屈を並べて自己補強をしたり、自分ひとりで思索や言論の内的な活動をしたりするよりも、『社会の中で他者と一緒に何かをすること(仕事をしたり遊んだり家庭生活をしたりすること)』が好きな『外向的で感情的(感覚的)な性格傾向』の人が元々多いのです。

自己意識が高い人と低い人の主観的幸福度の実感:自己中心性と私的・公的な自己意識

さまざまな人間関係への適応問題においても、自己意識が弱すぎる人は『相手の強い意見に飲み込まれて無理に同意させられるリスク』『自分のことは棚に上げて他人のことを批判する可能性』があります。反対に、自己意識が強すぎる人は『相手の意見や価値観を無視して自分の意見を自己中心的に押し付けるリスク』『自分の短所や欠点ばかりに自意識が向かって劣等コンプレックスが強まる可能性』があります。

自己意識は強すぎても弱すぎても一長一短があるわけですが、自己意識が強い人というのは単純に『わがまま・自己中心的』な人だというわけではなくて、逆に自分に注意を向け過ぎるが故に『自分の言動に対する反省が多い・自分の欠点が目に付く・他人と比べて劣っている感じがする』といった性格的な特徴が前面に出てくることもあるのです。自己意識が強いか弱いかは、以下の質問項目(はいが多いほど自己意識は強い)で簡単にチェックできますが、平均的な現代人(特に若い世代ほど)ならほとんどの質問項目に当てはまることが多いと思います。

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○人が自分をどう思っているのかがいつも気になる。

○人に良い印象を与えられるようにいつも意識している。

○人に自分をどのように見せるかについて努力している。

○自分が何を求めているのかをよく考えている。

○自分の外見や髪型、ファッションをかなり気にするほうだ。

○自分の気分・感情の変化にすぐに気が付くほうだ。

○自分で自分のことを理解しようと努力している。

○自分の言動や態度について後になって反省することが多い。

○自分の考えや気持ちについてあれこれ考えることが多い。

自己意識が強くなりすぎることの問題としては、『自分や他人が完全ではないことに自覚的になりすぎること』『自分の欲求や感情を意識しすぎて自己中心的(わがまま)になること』『自分の言動や態度を反省しすぎて萎縮してしまうこと』『自分の短所や欠点ばかり目につき、優れているように見える他人と比較して劣等コンプレックスを強めてしまうこと』などがあります。自意識の過剰さは一般的に、自己評価を低下させたり神経過敏になって緊張感が強まったりして『メンタルヘルスの悪化』につながりやすいのです。『自己意識が強すぎるという自覚』がある人は、意識して自分よりも『外部の世界・他人』に外向的な注意を向けて、自分が人からどう見られているかを気にしすぎずにリラックスして日々を過ごすようにした方がいいでしょう。

人間は『自分の客観的な能力・外見・評価』とは関係なく、『理想の自己像(世の中における最高レベルの人物や異性のイメージ)』を内的世界に必ず持っていますから、内向的になって自己意識が強まりすぎると『理想自己と現実自己のギャップ(どうあがいても完全にはなれない自己の不十分さと劣等コンプレックス)』に苦しむことになりやすいのです。理想自己と現実自己のギャップが生まれた時に、完全や思いどおりの状態に近い『理想自己』に向かってまっすぐに努力や前進を続けられる人はほとんどいませんから、自己意識・自己愛が強くなりすぎると『意識(理想)だけが極端に高いのに現実の成果(現実の他者の反応)が追いついてこずにメンタルヘルスを壊してしまう事例』が増えることになりやすいのです。

理想自己と現実自己のギャップが大きくなればなるほど、そのギャップを自己意識を強めて内向的な思索・価値観の調整で埋めようとすればするほど、『理想自己に対するチャレンジ』ではなく『不安を感じる現実原則・人間関係からの逃避』が起こりやすくなります。内向的なパーソナリティー傾向を持つ人が、現実社会や人間関係に適応しづらくなる時には、こういった『自己意識が強すぎるが故の理想自己(完全主義)に対する絶望・諦め』が影響していることも少なくないということになるでしょう。

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人の心を開かせるコミュニケーションスキルと傾聴・共感の効果:1

人間関係の改善と支持的なカウンセリングに共通する要素として『共感的理解』『無条件の肯定的受容』がありますが、それらが持つ最大の効果は『人の心を開かせること(何でも話せるオープンな気持ちにさせること)』に他なりません。人は自分が考えていることや感じていることを正確に理解してくれて、『共感的・受容的なフィードバック(返事や反応)』を返してくれる人に心を開いて好意や親しみを抱きます。

『相手の気持ちをオープンにすること』の大切さは、クライエント中心療法的なカウンセリングだけではなく、プライベートな人間関係においても、営業・販売などのビジネスの接遇スキルにおいても通用するものなのです。カウンセリングの基本中の基本として『傾聴』がありますが、『相手の話している内容そのもの』や『相手が伝えようとしている考え方・感じ方そのもの』を丁寧に聴き取っていくことは簡単に見えて非常に難しいところがあります。

それは『相手が伝えようとしている考え方・感じ方そのもの』が、自分にとっては不快なものだったり不都合なことだったり、不利益(損失)の多いことだったり、価値観や善悪の上で許せないことだったりしやすいからです。家族や恋人、親友など親しい関係にある相手であっても、深く物事(一つの話題)を突き詰めて話し合っていけば、『自分と他人の間にある埋めがたい差異(自分と他人との受け入れがたい違い)』が浮かび上がってしまうことは少なくないからです。相手の感じ方や考え方をそのまま受け容れて共感する『傾聴』が失敗してしまった時には、人は相手の話を不快に感じて聴かなくなり、どうにかして『自分の意見・主張・助言』を強く訴えようとしたり、『自分が相手にしてもらいたいこと』を押し付けようとして争いや喧嘩になったりします。こうなると自分と相手の間で『自己主張+要求行動のぶつかり合い』が起こってしまい、心をオープンにしてお互いを受け入れ合うどころの話ではなくなってしまいます。

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相手の感じ方や考え方をそのまま受け容れて共感する『傾聴』が失敗する時というのは、裏返せば『自分の心を閉ざした時・相手が気持ちをオープンにできなくなった時(話そうとする気持ちがなくなった時)』なのです。個人にも団体組織にも国家にも通用する原理として『心を閉ざして相手のことを決めつける考え方をすれば対話ができなくなる』ということがあります。現在タイムリーな国際問題になっている『北朝鮮の核開発・ミサイル発射の問題』にしても、日本・アメリカ・韓国と北朝鮮が相互に心を閉ざして『相手の狙い・思惑』を悪い方向にばかり決めつけている以上は、好戦的・挑発的(恫喝的)な態度になりやすく、対話のとっかかりは得られないということになるでしょう。

人間関係を改善させるためのコミュニケーションスキルでもある『傾聴+共感的理解』のシンプルな初期の目的は以下の2つに集約されます。

1.相手の心を閉ざしてしまわないこと。

2.相手との対話の機会(チャンス)を無くしてしまわないこと。

この人とは性格や考え方が決定的に合わないな(自分も嫌っているように相手も嫌っているんだろうな)と思われたり、この人には深い話をしたり本当の気持ちを話しても仕方がないなと思われたりした時に、人は自分の心を閉ざして、それ以上相手に何か意味のあることを語りかけたいとは思えなくなってしまいます。これが結局、傾聴の失敗につながり、『相手の心を閉ざす+相手との対話機会の消失』という人間関係の悪化や関係修復の困難さに至ってしまうのです。

相手の心を開かせてオープンにするためにまず必要なことは、『相手の感じ方や考え方』をできるだけ相手の感じ方・考え方にのっとって、正確に理解してあげるということです。そこで大切になるのは、『相手の感じ方や考え方』を自分の推測や印象で決めつけてしまわずに、必ず相手にどのように感じて何を考えていたのかについて質問して確認する(認識の違いを対話を通して擦り合わせていく)ということです。あなたはこのような人間だからこう感じてこう考えているに違いないという決めつけは、親子関係や夫婦関係のような近しい関係では特に、『相手に対する不信感・不快感・怒りや屈辱』を煽り立ててしまいやすいのです。

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人の心を開かせるコミュニケーションスキルと相手の考え方・感じ方を正しく知る質問技法:2

『相手の感じ方や考え方』を正しく理解するためには、相手に興味関心や好意的な思いがあることをまず伝えて、自分が相手の感じ方・考え方をもっと知るためにできる『率直な質問』を探すことになります。率直な質問というのは『嫌味・皮肉・比較・貶め(おとしめ)』を感じさせないものでなければならず、『親しみ・関心・柔らかさ・受容(反論されない感じ)』を感じさせる質問であれば相手は気持ちをオープンにしやすくなるでしょう。

人の心を開かせるコミュニケーションスキルと傾聴・共感の効果:1

○ずっと気になっていたので、あの時のあなたの気持ちについてもう少し詳しく話してもらえませんか?

○お聞きしたかったのですが、あなたがあのこと(私の振る舞い)についてどのように感じていたのかを教えてください。

率直な質問に『相手の感情や考えに対する自分の理解・認識』を付け加えることができれば、相手に『自分の理解・認識の内容』が正しいのかどうかを直接確認することもできます。

○あなたは今、非常に怒っている感じに見えて近寄りにくいのですが、何か頭にくるような出来事があったのでしょうか?あなたが怒っているという私の感じ方は間違っていないでしょうか。

○あなたはひどく絶望して落ち込んでいるように感じられますが、大丈夫ですか?私があなたについて心配している絶望・落ち込みはいつからあるのでしょうか(本当に落ち込みを感じておられるのでしょうか)。

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これは『相手の考え方・感じ方に対する決めつけ』や『相手に対する自分側の誤解』を避けるメリットにもなります。直接的に相手に考えていることや感じていることを適切な口調・言葉遣いで尋ねることができれば、その相手は人から真摯な興味関心を持ってもらえることに心地よさを感じ、心を開きやすくなるのです。相手の心をオープンにしてもっと話してもらうための質問法としては、『はい・いいえ』で答えるだけで会話が途切れやすい『クローズド・クエスチョン(閉じた質問)』ではなく、聞かれた相手側が自由に自分の言葉で考えていること(感じていること)を答えることになる『オープン・クエスチョン(開かれた質問)』のほうが話したい意欲を高める効果が強くなります。

上に挙げた質問項目もオープン・クエスチョン(開かれた質問)ですが、端的に『その時の気持ちや考えについてもっと詳しく聞かせてください』や『この問題や状況であなたはどんなことを考えたり感じたりしましたか』『あなたはどうすれば良いとお考えでしょうか・あなたの気持ちやアイデアを教えてください』といったシンプルな質問で良いと思います。そういったオープン・クエスチョンの質問に対して返ってくる『相手の考え・感情を示す自由な言葉(表現)』を元に、会話をより建設的・効果的な内容へと発展させていくことが望ましいコミュニケーションにつながっていきます。何度も書いているように、人の心を開かせて話したい意欲を高め、共感・受容によって人間関係を改善していくためのコミュニケーションの基本は、『嫌味・敵意・挑発』を感じさせないこと、『親しみ・好意・関心』を感じてもらうことにあります。

そのためには、声の大きさや調子、目線やジェスチャー、態度、雰囲気といった『非言語的コミュニケーション』も適切に調整していく必要があります。つまり、『大きすぎる声(小さすぎる声)・早すぎたり遅すぎたり(高すぎたり低すぎたり)する声の調子・睨みつけるような目線・落ち着かない手足の動き・威圧的な態度・緊張した雰囲気』は、心を開いて共感するコミュニケーションにとってはマイナス効果がでやすいのです。人間関係が悪化したり対立したりする原因の多くは、共感的理解や無条件の肯定的受容ができているか否かということよりもだいぶ前の段階、つまり『傾聴ができていないこと(相手の言いたいこと・相手の本当に考えていることをまともに聴けていないこと)』にあることが多いのです。

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男性は『問題解決・所有の志向』、女性は『共感・関係性の志向』というジェンダーの傾向が語られることもありますが、ここで男性的とされる問題解決・所有(操作)によって相手をどうにかして急いで変えようとする時にも人間関係は悪化しやすくなります。それは人間関係悪化の問題のかなりの割合は『二人のコミュニケーションの食い違い・傾聴のレベルの低さ(相手の言いたいことをそのまま聴けていない)』にこそ問題の本質があるからであり、『それ以外の問題事項に対する問題解決のアプローチ』というのは、元々的外れであったり即効性が期待できないものであったりすることが多いのです。

この記事では『人の話を傾聴すること・人の考え方を正しく理解するための質問技法』『人の心を開かせること(相手の気持ちをオープンにさせること)』に重点を置いて書いてきました。現実の対人的なコミュニケーションでは『自己表現・自己呈示(=アサーション)』や『自分の話を聴いてもらいやすくなる話し方・内容・態度』との組み合わせも求められるのでより難しい部分がでてきますが、ここでもまた自己中心性(要求性・押し付け)を弱めた率直さがキーになります。

元記事の執筆日:2017/10/20

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