イミプラミンの効能・作用・副作用

イミプラミンについての基本情報

イミプラミンの効能・作用……効能は『うつ病・うつ状態・慢性の疼痛・パニック障害・強迫性障害』です。子供の遺尿症(おもらし)や夜尿症(おねしょ)に処方されることもあります。イミプラミンは古い時期に発売された『三環系抗うつ薬(第一世代の抗うつ薬)』ですが、セロトニンやノルアドレナリン以外の複数の受容体(モノアミン受容体)の再取り込みを阻害するため、『抗うつ効果・鎮静効果』はかなり強いものになっています。

脳内の中枢神経系におけるモノアミン(セロトニンやノルアドレナリンをはじめとする神経伝達物質)の分泌量を増やすことで、抗うつ作用・鎮静作用を発揮する薬です。ニューロン(神経細胞)の樹状突起の間にあるシナプス間隙において、モノアミンの再取り込みを阻害しますが、イミプラミンは特にノルアドレナリンを増やす作用が強いと考えられています。再取り込み阻害の薬理作用でモノアミンの量を増やして、『モノアミン受容体』の感受性を高めることで、気分・意欲・気力・興味の回復といった抗うつ作用を発揮すると考えられています。

イミプラミンは、抗ヒスタミン薬と類似した『ヒスタミン受容体の遮断作用』も強いので、『鎮静・催眠・筋弛緩』の副作用がでやすい特徴があります。しかし、この副作用を利用して睡眠薬・抗不安薬のような効果を期待することもできます。抗不安や催眠の副作用は、アミトリプチリン(トリプタノール)と比較すればかなり弱いものになっています。

効き目も副作用もどちらも強いのが三環系抗うつ薬ですが、イミプラミンは意欲・活力(気力)と関係するノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強いので、意欲の回復に効果がでやすいとされています。一般的に、脳内におけるノルアドレナリンの増加は『意欲・気力・行動力』を高めて、セロトニンの増加は『不安感・焦燥感・緊張感』を緩和してマイルドな精神状態を作るとされています。

イミプラミンの商品名……イミドール(田辺三菱・吉富)、トフラニール(ノバルティスファーマ)

平均的な用法・用量……うつ病・抑うつ症状に対しては、成人は1日30~70mgから服用を開始して分服する。うつ病・抑うつ症状を軽減させるために、1日200mgにまで漸増させる。重症なうつ病の症状に対しては、患者の経過・副作用の出方を観察しながら、最大300mgまで増量するケースもある。夜尿症に対しては、児童は1日25~50mgを就寝前に経口服用(50mを2回に分けて分服)するが、『年齢・症状・副作用』を見て適切に調整する。

副作用……口渇・便秘・排尿障害・視調節障害・動悸・頻脈などの末梢性抗コリン作用。高齢者に時折発現する幻覚・錯乱・興奮などの中枢性の抗コリン作用。眠気、めまい、立ちくらみ、起立性低血圧、手の振るえ、発疹など。イライラ、焦燥感、不安感、衝動性などの精神症状が出ることもある。服用時間を夕方以降にすることで、眠気の副作用を催眠誘導剤のようにして利用することもできる。ハーブのセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)との併用は控えてください。

重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin)、セロトニン症候群(焦燥感・イライラ・不安感の高まり)、幻覚・妄想・錯乱・けいれんなどの精神症状、顔と舌の浮腫、心筋梗塞、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、麻痺性イレウス、血液異常、心不全、間質性肺炎、肝障害など。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、前立腺肥大症(排尿困難の症状)、てんかん、低血圧、心疾患、腸閉塞など通過障害のある人、重症の便秘、躁うつ病あるいは統合失調症の素因を持つ人、自殺念慮(希死念慮)などの衝動性の精神症状を持つ人、高齢者。24歳以下の人の場合には、『自殺念慮・自殺企図・自傷行為に関する衝動性の亢進』に注意が必要である。

『処方してはいけない禁忌』は、緑内障、心筋梗塞の回復期の初期、尿閉、不整脈(QT延長)など。パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)との併用は、セロトニン症候群を起こす恐れがある。

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