デュロキセチン(サインバルタ)の効能・作用・副作用

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デュロキセチン(サインバルタ)についての基本情報

デュロキセチンの効能・作用……効能は『うつ病・うつ状態・糖尿病性神経障害』です。デュロキセチンは、アメリカのイーライリリー社で1986年に初めて化学合成された物質であり、1992年から日米で抗うつ薬として同時に開発が進められたという歴史を持つ。

デュロキセチンは、脳内の2つの神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンの再取り込みを阻害することから、ミルナシプラン(トレドミン)に続く日本国内で二番目の『SNRI:Serotonin-NorAdrenalin Reuptake Inhibitors』に分類されている。SNRIとは、『セロトニン‐ノルアドレナリン再取込み阻害薬』という意味である。

SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの受容体における再取り込みを阻害する薬理作用によって、脳内の神経細胞(ニューロン)のシナプス間隙におけるそれらの濃度を高めている。一般的に、脳内におけるノルアドレナリンの増加は『意欲・気力・行動力』を高めて、セロトニンの増加は『抑うつ感・不安感・焦燥感・緊張感』を緩和してマイルドな精神状態を作るとされています。

脳内にあるセロトニン(HT-5)とノルアドレナリン(NA)の受容体の再取り込みを選択的かつ強力に阻害することで、『抑うつ感(憂鬱感)・意欲減退・興味と喜びの喪失・集中力や思考力の低下・億劫感・無気力・焦燥感・絶望感・悲観』といったうつ病の様々な精神症状を緩和する効果が発現します。デュロキセチンの抗うつ作用の効き目は強いほうなのですが、セロトニンとノルアドレナリンの受容体以外には結合しにくいので副作用も弱くなっています。デュロキセチンは新しいタイプの抗うつ薬ということで、『第四世代の抗うつ薬』と呼ばれることもあります。

デュロキセチンは、抗コリン作用によって生じる『口渇・便秘・排尿困難・手足の振るえ(振戦)』などの副作用が抑えられていて、α1受容体の遮断作用も弱いので安全性の高い薬とされています。最近は、抗うつ薬の治療効果を疑うような臨床試験の結果も出てきているが、そういった情勢の中でもデュロキセチンはプラセボ対照群よりも優位にうつ病の改善効果があるとされています。

ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D:Hamilton Depression Scale)を用いたプラセボ対照群との効果比較試験では、『抑うつ気分・仕事と活動・入眠障害・罪悪感・不安感』などの分野でデュロキセチンにうつ病の改善効果があることが確認されています。アメリカや海外の一部の国では、うつ病以外にも糖尿病性神経因性疼痛や線維筋痛症、腹圧性尿失禁、全般性不安障害に対してもデュロキセチンが処方されています。

疼痛を抑える神経は『下行性疼痛抑制神経』といいますが、この神経にはノルアドレナリン作動性神経とセロトニン作動性神経の2系統があります。SNRIであるデュロキセチンはその2つの神経機能をそれぞれ促進する作用があり、その結果、一次求心性神経から二次求心性神経への痛みの感覚の伝達を抑制することができるのです。

セルトラリンを含むSSRIの副作用について最も注意すべきこととして、『18歳未満の若年層の患者に対して自殺念慮(自殺願望)や自殺企図のリスクを高めることがある』という項目がありますが、デュロキセチンの副作用は治験以外では十分に確認されていないため、こういったSSRIに特有とされる希死念慮の副作用が起こる可能性についても注意する必要があると言われています。

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デュロキセチンの商品名……サインバルタ(イーライリリー,塩野義製薬)

平均的な用法・用量……うつ病・抑うつ症状に対しては、1日1回20mgから初期投与を始め、1週間以上の間隔を開けて20mgずつ増量していく。一般的な用量は1回40mgで、最大60mgまでの処方が可能である。

副作用……下痢・便秘・食欲不振・悪心などの消化器症状。 口渇・排尿障害・動悸・頻脈などの末梢性抗コリン作用。眠気、めまい、吐き気・嘔吐、立ちくらみ、起立性低血圧、倦怠感、脱力感など。抗うつ薬は、他の抗精神薬との相互作用を起こしやすいので、医師に今飲んでいる薬についての情報を提示して指導を受けるようにして下さい。

重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin)、セロトニン症候群、肝障害、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、重症の皮膚や粘膜の障害、アナフィラキシー症状、幻覚、高血圧クリーゼ、尿閉など。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、てんかん、脳の器質的障害、肝機能障害、腎機能障害、緑内障の既往がある人。統合失調症や双極性障害(躁鬱病)の人。妊婦。24歳以下の若者(特に10代以下の子供に対しては処方を控えるべきとされる)。希死念慮のある人。

『処方してはいけない禁忌』は、閉塞隅角緑内障、重い肝臓病、重い腎臓病など。医師の専門的かつ慎重な判断に基づいて処方可能なケースもあるので、一概に絶対に処方禁止とまでは言えない側面はあり、個別症例における処方の是非は専門医の判断に拠る。

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