ドスレピンの効能・作用……効能は『うつ病・うつ状態』です。ドスレピンは第二世代の三環系抗うつ薬で、第一世代のものよりも『抗コリン作用（口渇・便秘・排尿困難・手の振るえなど）』が弱く抑えられている。ただし、三環系抗うつ薬であるため、人によってはかなり強い抗コリン作用が見られるなど、副作用の個人差が大きい点に注意する必要がある。
ドスレピンは、脳内の2つの神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンの再取り込みを阻害するが、『SNRI：Serotonin-NorAdrenalin Reuptake Inhibitors』ほどノルアドレナリンとセロトニンだけに選択的に作用するわけではなく、それ以外の神経伝達物質も一緒に阻害している。
一般的に、脳内におけるノルアドレナリンの増加は『意欲・気力・行動力』を高めて、セロトニンの増加は『抑うつ感・不安感・焦燥感・緊張感』を緩和してマイルドな精神状態を作る効果があると考えられている。ドスレピンはSSRIやSNRIが登場するまでは、その副作用が少ないマイルドな効き目から第一選択薬として処方しやすい薬だと考えられていた。
脳内にあるセロトニン（HT-5）とノルアドレナリン（NA)の受容体の再取り込みを阻害することで、『抑うつ感（憂鬱感）・意欲減退・興味と喜びの喪失・集中力や思考力の低下・億劫感・無気力・焦燥感・絶望感・悲観』といったうつ病の様々な精神症状を緩和する効果が発現します。イミプラミンと類似したマイルドな効き方をする特徴があります。
ドスレピンは、抗コリン作用によって生じる『口渇・便秘・排尿困難・手足の振るえ（振戦）』などの副作用が抑えられていて、安全性の高い薬とされています。
ドスレピン（プロチアデン）の副作用について注意すべきこととして、『24歳未満の若年層の患者に対して自殺念慮（自殺願望）や自殺企図のリスクを高めることがある』という問題があります。特にうつ病や双極性障害（躁うつ病）などで、希死念慮や自殺企図の既往がある若い患者には、できるだけ処方しないようにすることが望ましいと考えられています。
ドスレピンの商品名……プロチアデン（日医工，科研）
平均的な用法・用量……うつ病・抑うつ症状に対しては、1日1回50mgくらいから初期投与を始め、副作用の出方を確認しながら短期に最大量の150mgまで増量していく。
1日75～150mg(3～6錠)を2～3回に分けて服用する。なお年齢及び症状により適宜増減する。
副作用……口渇・便秘・排尿障害・動悸・頻脈などの末梢性抗コリン作用。眠気、めまい、吐き気・嘔吐、立ちくらみ、起立性低血圧、倦怠感、脱力感など。不安感、焦燥感、イライラ、衝動性などの精神症状の副作用が出ることもある（24歳未満の若い患者は自殺企図にも注意が必要である）。抗うつ薬は、他の抗精神薬との相互作用を起こしやすいので、医師に今飲んでいる薬についての情報を提示して指導を受けるようにして下さい。
重大な副作用（発症頻度は低い）……悪性症候群（Syndrome malin）、麻痺性イレウス、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、重症の血液成分障害、妄想・幻覚など。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、前立腺肥大症（尿がでにくい人）、心臓疾患、てんかん、腸閉塞（腸の通過障害）、重度の便秘、双極性障害（躁うつ病）、統合失調症の素因がある人、衝動性の精神症状を持つ人、高齢者、24歳以下の若者（特に10代以下の子供に対しては処方を控えるべきとされる）、希死念慮のある人など。
『処方してはいけない禁忌』は、緑内障、心筋梗塞の回復期、尿閉など。セロトニン症候群を発症する危険性があるので、パーキンソン病治療薬のセレギリン（エフピー）を服用している人にも禁忌である。