トリミプラミンの効能・作用……効能は『うつ病・うつ状態』です。トリミプラミンは1965年に発売された古典的な『三環系抗うつ薬』であり、脳内の複数の種類の神経伝達物質を増やすことで、抑うつ感・不安感・気分の落ち込み・焦燥感・億劫感・無気力などのうつ病の諸症状を緩和する効果を発揮する。初期の三環系抗うつ薬であるため、脳内の神経伝達物質(情報伝達物質)の受容体に対して非選択的に作用するという特徴がある。
2つのベンゼン環が7つの側鎖構造質(7員環)によって結合していることから『三環系』と呼ばれている。トリミプラミンは三環系の中でも『イミノベンジル系』に分類される化学物質で、3級アミンとしての構造(側鎖のN末端にメチル基が二つくっつく構造)を持っている。
非選択的に複数の神経伝達物質の受容体に作用するので、他の抗うつ薬と比較しても末梢性抗コリン作用や心毒性などの強い副作用が出やすい問題がある。特に神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを強く阻害することによって、うつ病の各種の症状を緩和する働きをしている。
一般的に、脳内におけるノルアドレナリンの増加は『意欲・気力・行動力』を高めて、セロトニンの増加は『抑うつ感・不安感・焦燥感・緊張感』を緩和してマイルドな精神状態を作る効果があると考えられている。トリミプラミンはヒスタミン(H1)受容体の再取り込みを阻害して催眠作用のあるヒスタミンの量を増やすので、『眠気・ふらつき』といった副作用が出やすいが、その副作用を『睡眠薬・鎮静剤』として活用するような処方が行われることもある。
脳内にあるセロトニン(HT-5)やノルアドレナリン(NA)の受容体の再取り込みを阻害することで、『抑うつ感(憂鬱感)・意欲減退・興味と喜びの喪失・集中力や思考力の低下・億劫感・無気力・焦燥感・絶望感・悲観』といったうつ病の様々な精神症状を緩和する効果を発現します。
トリミプラミンは抗ヒスタミン作用による眠気・ふらつきの副作用が出やすいので、眠れないという睡眠障害を訴えるうつ病患者に処方されることが多いが、危険な作業や運転業務をする前の服用は控えなければならない。
トリミプラミンの商品名……スルモンチール(塩野義)
平均的な用法・用量……うつ病・抑うつ症状に対しては、1日50~150mg(1錠25mgを2~6錠)を朝・夕の2回に分けて服用する。最大量は1日300mgである。
細粒タイプは、1日50~200mgを1日3回に分けて服用する。なお、年齢、症状により適宜減量する。
副作用……口渇・便秘・排尿障害・動悸・頻脈などの末梢性抗コリン作用。眠気、めまい、吐き気・嘔吐、立ちくらみ、起立性低血圧、倦怠感、脱力感など。不安感、焦燥感、イライラ、衝動性などの精神症状の副作用が出ることもある。抗うつ薬は、他の抗精神薬との相互作用を起こしやすいので、医師に今飲んでいる薬についての情報を提示して指導を受けるようにして下さい。
重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、麻痺性イレウス、重症の血液成分障害、重い不整脈、妄想・幻覚・けいれんなど。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、前立腺肥大症(尿がでにくい人)、心臓疾患、てんかん、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症の素因がある人、衝動性の精神症状を持つ人、腸閉塞・腸通過障害のある人、高齢者、24歳以下の若者(特に10代以下の子供に対しては処方を控えるべきとされる)、希死念慮のある人など。
『処方してはいけない禁忌』は、緑内障、心筋梗塞の回復期にある人、尿閉。禁忌ではないが、セロトニン症候群を発症する危険性があるので、パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)を服用している人は十分な注意が必要である。