ミルナシプラン(トレドミン)の効能・作用・副作用

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ミルナシプラン(トレドミン)についての基本情報

ミルナシプラン(トレドミン)の効能・作用……効能は『うつ病・うつ状態』です。慢性疼痛患者における鎮痛作用の補助にも有効性が期待できます。

ミルナシプランは日本国内で初めて承認された『SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)』で、抗うつ効果が強いだけではなく他の抗うつ薬と比較して効き目が早いという特長がある。『SNRI(Serotonin-Noradrenalin Reuptake Inhibitors)』は、セロトニン系神経とノルアドレナリン系神経に選択的に結合して、それぞれの再取り込みを阻害することで、脳内におけるセロトニンとノルアドレナリンの濃度を増加させる効果がある。

SNRIは三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRIの後に開発された『第四世代の抗うつ薬』だが、うつ病を対象にしたミルナシプランと四環系抗うつ薬のミアンセリンとの二重盲検比較臨床試験では『同程度の改善率』が確認されている。SNRIのミルナシプランとSSRIのパキシルのうつ病改善効果はほぼ同等であるが、ミルナシプランのほうが『無気力・意欲の減退・億劫感』といった何もやる気がせず動けないという『精神運動抑制』の症状に効果が認められやすいとされている。

脳内で選択的にセロトニン受容体とノルアドレナリン受容体に結合して再取り込みを阻害することで、気分・感情の安定化や意欲(やる気)・行動力の増加と関係する脳内のセロトニン濃度・ノルアドレナリン濃度を高めてくれる。結果として、『抑うつ感・不安感・気分の落ち込み・焦燥感・億劫感・無気力』などのうつ病の諸症状を改善する効果が期待できる。

ミルナシプランはグルクロン酸抱合によって代謝される腎排泄型であり、肝臓の薬物代謝酵素CYP450系を介さなくても良いので(肝臓の代謝を殆ど経由しないので)、三環系・四環系・SSRIよりも『他の薬との飲み合わせ(薬物相互作用)』にあまり気を使わなくても良い利点がある。

ミルナシプランには、選択的にセロトニン受容体とノルアドレナリン受容体だけを阻害するSNRIとしての特性があるので、複数の神経伝達物質の再取り込みを阻害する従来の抗うつ薬と比較すれば、『口渇・便秘・排尿困難・手の振るえ・心毒性』などの末梢性抗コリンの副作用は弱めになっている。三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬で発症しやすい『吐き気・嘔吐・悪心・胃腸障害』などがでにくいメリットがあるが、排尿困難の副作用はでやすいので前立腺症状がある患者には注意が必要である。

急な服用中止や自己判断の減薬をすると『憂鬱感・不安感・焦燥感・衝動性・悪心』などの精神症状が悪化する『SSRI離脱症候群(セロトニン症候群)』という副作用が出やすい。そのため、ミルナシプランの服用をやめる際には、医師の指示に従って段階的に減薬・中止を注意深く進めていく必要がある。

ミルナシプランの抗うつ作用は、三環系・四環系・SSRIの抗うつ薬とほぼ同等であるが、抗ヒスタミン作用や抗アドレナリン作用が弱いので、自殺企図で大量服用(オーバードーズ)をしても致死的な作用は得られにくい。しかし、18歳未満のうつ病患者がSSRIを服用すると、有意に自殺リスクや攻撃衝動のリスクが高まるという報告もあるので、18歳未満の未成年者への処方には注意が必要である。

一般的に、脳内におけるノルアドレナリンの増加は『意欲・気力・行動力』を高めて、セロトニンの増加は『抑うつ感・不安感・焦燥感・緊張感』を緩和してマイルドな精神状態を作る効果があると考えられている。

脳内にあるセロトニン(5-HT)の受容体の再取り込みを阻害することで、『抑うつ感(憂鬱感)・意欲減退・興味と喜びの喪失・集中力や思考力の低下・億劫感・無気力・焦燥感・絶望感・悲観』といったうつ病の様々な精神症状を緩和する効果を発現します。

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ミルナシプランの商品名……トレドミン(旭化成ファーマ,ヤンセンファーマ)

平均的な用法・用量……うつ病・抑うつ状態に対しては、1日25mgを初期用量として、1日100mgまで漸増させることが可能である。1日2~3回に分けて服用する。
高齢者の場合は、1日25mgを初期用量として、1日60mgまで漸増させることが可能である。1日2~3回に分けて服用する。
なお、年齢、症状により適宜減量する。

副作用……口渇・便秘・排尿障害・動悸・頻脈などの末梢性抗コリン作用。眠気、めまい、吐き気・嘔吐、立ちくらみ、起立性低血圧、倦怠感、脱力感など。不安感、焦燥感、イライラ、衝動性などの精神症状の副作用が出ることもある。抗うつ薬は、他の抗精神薬との相互作用を起こしやすいので、医師に今飲んでいる薬についての情報を提示して指導を受けるようにして下さい。

重大な副作用(発症頻度は低い)……セロトニン症候群(発熱発汗・振戦・不安と混乱・興奮と錯乱など)、悪性症候群(Syndrome malin)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、肝機能障害、重症の血液成分障害、重い不整脈、妄想・幻覚・けいれん、高血圧クリーゼ、意識障害など。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、緑内障、てんかん、尿のでにくい人、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症の素因がある人、衝動性の精神症状を持つ人、妊婦、高齢者、24歳以下の若者(特に10代以下の子供に対しては処方を控えるべきとされる)、希死念慮のある人など。

『処方してはいけない禁忌』は、セロトニン症候群を発症する危険性があるので、パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)を服用している人は禁忌である。本剤で過敏症を起こしたことがある人、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAO阻害剤)を服用中の人、前立腺疾患などで尿閉がある人などは禁忌である。SNRIの飲み合わせは他の抗うつ薬よりかは安全性が高いが、抗うつ薬は一般に薬の飲み合わせが難しいので、医師・薬剤師に自分の飲んでいる薬を報告して必ず相談してから服用しなければならない。

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