バルプロ酸ナトリウムの効能・作用・副作用

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バルプロ酸ナトリウムについての基本情報

バルプロ酸ナトリウムの効能・作用……効能は『各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療 』『双極性障害の躁病エピソード,躁病』『片頭痛発作の発症抑制』です。

バルプロ酸ナトリウムは『GABA(γアミノ酪酸)トランスアミナーゼ』を阻害して、抑制性ニューロンにおけるGABAの量を増加させることで、てんかんのけいれん発作を抑制したり躁病の気分を落ち着かせたりします。化学的な作用機序は、脳内のGABA(γアミノ酪酸)やドーパミンの濃度を高めることで、抑制系ニューロンを賦活してけいれん発作を抑制するというものです。

バルプロ酸ナトリウムは『過量服薬(過量投薬)』のリスクがあり、特に双極性障害における『自殺企図の既往・希死念慮』がある場合には、慎重に治療薬物モニタリングを行うべきとされます。バルプロ酸ナトリウムを連用している時に、急激な減薬・中止をすると『てんかん重積状態』の危険な副作用が生じるリスクがあります。

『バルプロ酸(valproic acid)』は元々は、研究用の有機化合物の代謝不活性溶剤として使用されていましたが、1962年にフランスの化学者Pierre Eymardが賦形剤として用いて抗けいれん作用を発見しました。その後、バルプロ酸ナトリウムには片頭痛にも効果があることが分かり、日本でも2011~2012年に『片頭痛発作の発症抑制』に処方することが可能になりました。

現在では、バルプロ酸ナトリウム(特にデパケン)は『抗てんかん薬』としてだけではなく『気分安定薬』として処方されることが多くなっています。しかし、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、双極性障害の躁エピソードの治療ではまず『リチウム塩(炭酸リチウムのリーマス)』を優先して効果の有無を確認すべきで、『バルプロ酸ナトリウム』は第一選択薬にはすべきでないとしています。

てんかんは脳内の神経細胞(ニューロン)の電気信号が過剰に興奮することによって発症する脳疾患で、代表的な症状としては『意識障害』『けいれん発作』があります。てんかんのけいれん発作には、脳の一部から興奮が始まる『部分発作』と脳の全体が興奮して起こる『全般発作』の2つがあります。

てんかんの全般発作は、『強直間代発作(ごうちょくかんだいほっさ, 大発作)・欠伸発作(けっしんほっさ, 小発作)・部分発作』の3種類に大きく分類することができます。強直間代発作(大発作)は、『けいれん症状』と『意識消失症状』の2つを伴う激しい発作です。欠伸発作(小発作)は『意識消失症状』だけが見られる発作です。部分発作は、部分的あるいは一時的な『けいれん症状』と『意識障害・異常行動』の見られる発作です。

部分発作は『単純部分発作』と『複雑部分発作』の2つに分類されます。

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バルプロ酸ナトリウムの商品名……エピレナート(藤永,第一三共)、 サノテン(辰巳,日本ジェネリック)、 セレニカR(興和)、 セレブ(アステラス)、 デパケン(協和発酵キリン)、 デパケンR(協和発酵キリン)、 ハイセレニン(MSD)、 バルデケンR(東和薬品)、 バルプラム(アイロム,共和)、 バレリン(大日本住友)

平均的な用法・用量……抗てんかん薬・気分安定薬(双極性障害の躁病エピソードの治療薬)としての用法・用量

400~1200mgを1日2~3回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。

シロップ剤の用法・用量

1日量8~24ml(バルプロ酸ナトリウムとして400~1200mg)を1日2~3回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。

持効剤としてのデパケンR

400~1200mgを1日1~2回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。

持効剤としてのセレニカR顆粒

400~1200mgを1日1回経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。

片頭痛治療薬としての用法・用量

400~800mgを1日2~3回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。1日の最大用量は1000mgである。

シロップ剤の用法・用量

1日量8~16mL(バルプロ酸ナトリウムとして400~800mg)を1日2~3回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。1日の最大用量は20mL(バルプロ酸ナトリウムとして1000mg)である。

持効剤としてのデパケンR

400~800mgを1日1~2回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じて適宜増減する。1日の最大用量は1000mgである。

持効剤としてのセレニカR顆粒

400~800mgを1日1回経口服用する。ただし、年齢、症状に応じて適宜増減する。1日の最大用量は1000mgである。

小児は医師の指示・指導に従った用量用法を守って服用する。

副作用……眠気やめまい、ふらつき、注意力の低下、倦怠感、脱力感、胃腸障害、食用増加(体重増加)、食欲減退(体重減少)、吐き気、複視(物が二重に見える)、高アンモニア血症、発疹、脱毛などの副作用が出ることがあります。

てんかんの薬を自己判断で急に中止すると、その副作用(離脱症状)で重いてんかん発作を起こす恐れがあります。抗てんかん薬は用法用量を守って規則正しく飲まなければならず、中止する時には医師の指示・指導を受けながら段階的に用量を減らしていきます。

重大な副作用(発症頻度は低い)……依存症、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス-ジョンソン症候群)、膵炎、高アンモニア血症を伴う意識障害、悪性症候群、遅発性の薬剤過敏症、錯乱・興奮、脳神経系の異常による認知機能障害、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、肝機能障害、腎不全、横紋筋融解症、間質性肺炎(好酸球性肺炎)、胎児への催奇形性など。眠気やふらつき、注意力・集中力の低下といった副作用があるので、車の運転や危険を伴う作業などはしないようにして下さい。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、呼吸器疾患、肝疾患(肝機能障害)、心臓疾患、高齢者、妊婦(胎児への悪影響の考慮)など。中枢神経抑制の相乗効果によって副作用が強まる恐れがあるので、アルコールとの併用は避けて下さい。

『処方してはいけない禁忌』は、重症筋無力症、重い肝臓病、尿素サイクル異常症、妊婦(医師の慎重な判断によって処方するケースもあるが、特に妊娠初期に催奇形性・自閉症スペクトラムのリスクが指摘される)、カルバペネム系抗生物質を使用している人、本剤で過敏症を起こしたことがある人。

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