カルピプラミンの効能・作用……効能は『慢性期の統合失調症，特に陰性症状（意欲減退・活動力低下・感情鈍麻・抑うつ・心気症など）』です。
統合失調症は脳内の神経伝達物質であるドーパミン（D）が過剰になることで幻覚・妄想などの『陽性症状』が発症したり、逆にドーパミンやセロトニンの分泌が減少・不足することで感情鈍麻・無為・ひきこもり（自閉）などの『陰性症状』が起こったりする精神病である。
カルピプラミンは化学構造としては、イミプラミンなどの『イミノベンジル系の抗うつ薬』に似ていて、意欲が減退していたり抑うつで落ち込んでいたりする精神状態を改善する精神賦活作用を期待することができる。
その特性から、カルピプラミンは統合失調症の『陽性症状（幻覚・妄想・興奮など）』にはあまり効果がないが、『陰性症状（自発性減退・意思疎通困難・感情鈍麻・ひきこもりなど）』に対する改善効果が期待できるのである。主に脳内のドーパミン（D2）受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の過剰興奮で発症する『陽性症状』を抑制することができる。セロトニン（5-HT2）受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きが活性化されて『陰性症状』を改善することができる。
カルピプラミンはセロトニン（5-HT2）の受容体に結合しやすいとされるので、慢性統合失調症の陰性症状として現れやすい『意欲減退・活動力低下・思考力低下・感情鈍麻・抑うつ・心気症など』に主に処方される。『幻覚・妄想・精神運動興奮』といった陽性症状にはあまり効き目がなく、逆にこれらの陽性症状を悪化させてしまうこともあるので、精神運動抑制作用の強い幻覚・妄想に効きやすいリスペリドンやハロペリドールなどと併用されることも多い。
カルピプラミンは錐体外路症状は少ないが、不眠・不安・焦燥感・倦怠感・胃腸症状・便秘などの副作用がでてしまうこともある。
カルピプラミンの商品名……デフェクトン（田辺三菱）
平均的な用法・用量……統合失調症に対する処方では、成人は1日75～225mgを3回に分けて経口服用する。他の抗精神病薬で陰性症状に効果が見られにくい時に処方されることが多い。
疾患・年齢・症状に応じて、用量を調整する。
副作用……めまい、口渇、こわばり、不眠、不安感、頭痛、動悸、便秘など。錐体外路症状（手足のふるえ・体のこわばりやつっぱり、ひきつけ、無表情、よだれ、目の動きの異常、舌のもつれ、そわそわなど）は少ない傾向がある。
重大な副作用（発症頻度は低い）……悪性症候群（Syndrome malin，身体が動かなくなり高熱がでて死亡リスクもある）、遅発性ジスキネジア（まばたき増加・口が不随意運動でもぐもぐ・舌が出やすいなど）、麻痺性イレウス（ひどい便秘・吐き気・腹痛など）、無顆粒球症・白血球減少（風邪のような発熱・咳や痰など）、静脈血栓症・肺塞栓症（手足の痛みやむくれ・息切れや呼吸のしづらさ・視力低下や目の痛みなど）、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)など。眠気や注意力・集中力の低下といった副作用が翌朝以降にも続く恐れがあるので、危険を伴う作業もしないようにして下さい。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、肝機能障害、脳の器質障害、心臓疾患、腎臓疾患、低血圧、慢性の便秘など腸の不調がある人、甲状腺機能亢進症、てんかん、高齢者（寝たきりや脱水状態にある人）、妊婦（胎児への悪影響の考慮）など。陽性症状（妄想・幻覚・興奮）が見られる統合失調症の人には効き目が弱い。
他の向精神薬と併用すると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が強まったりすることがあります。
『処方してはいけない禁忌』は、本剤で過敏症を起こしたことがある人。
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