クロカプラミンの効能・作用……効能は『統合失調症』です。気分を持ち上げて調整してくれる作用があるので、統合失調症でなくても『強い緊張感・不安感・抑うつ感・無気力』に対して処方されることがあります。
統合失調症は脳内の神経伝達物質であるドーパミン(D)が過剰になることで幻覚・妄想などの『陽性症状』が発症したり、逆にドーパミンやセロトニンの分泌が減少・不足することで感情鈍麻・無為・ひきこもり(自閉)などの『陰性症状』が起こったりする精神病である。
クロカプラミンは、特に『感情鈍麻・自発性低下(無気力)・無為・抑うつ感・自閉』といった統合失調症の陰性症状に効果が期待できるイミノベンジル系の抗精神病薬である。クロカプラミンが効くと、統合失調症の意思疎通の困難さや対人関係の接触感覚が改善される可能性があり、自分の内面世界にひきこもっていて他者とのコミュニケーション(意思疎通性)が大きく低下しているような患者に向いている。
クロカプラミンは統合失調症の『陽性症状(幻覚・妄想・興奮など)』と『陰性症状(自発性減退・意思疎通困難・感情鈍麻・ひきこもりなど)』に対する効果が期待できるが、上記したように特に陰性症状の改善効果がでやすいという特性がある。陽性症状に対して処方する時には、高用量(1日150mg以上)になる。
主に脳内のドーパミン(D2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の過剰興奮で発症する『陽性症状』を抑制することができる。セロトニン(5-HT2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きが活性化されて『陰性症状』を改善することができる。
クロカプラミンの各受容体への薬理作用は、セロトニン(5-HT)の受容体遮断作用がドーパミン(D2)の受容体遮断作用よりやや強い。またアドレナリン(α1)やアセチルコリン(Ach)の受容体遮断作用は抗精神病薬としては弱いほうである。自律神経系や錐体外路系の副作用の発現頻度は低くて、日中の眠気の副作用も強くないので、抗精神病薬の中では処方しやすい薬とされている。
陰性症状に対する効果発現は、陽性症状に対する効果よりも遅れて出てきやすいので、『陰性症状に対する効果判定』は服薬開始から最低4週間は必要である。鎮静作用が強くなりすぎるので、アルコール類との併用は禁忌である。
クロカプラミンの商品名……クロフェクトン(田辺三菱・全星)、 パドラセン(共和薬品工業)
平均的な用法・用量……統合失調症に対する処方では、成人は1日30~150mgを3回に分けて経口服用する。
疾患・年齢・症状に応じて、用量を調整する。
副作用……めまい、口渇、こわばり、眠気、不安感、頭痛、動悸、便秘、尿がでにくい、目のかすみ、血圧低下、体重増加、神経過敏、発疹など。錐体外路症状(手足のふるえ・体のこわばりやつっぱり、ひきつけ、無表情、よだれ、目の動きの異常、舌のもつれ、そわそわなど)は少ない傾向がある。
長期服用・大量服用で『遅発性ジスキネジア』の副作用が起こることがある。遅発性ジスキネジアというのは、口周辺のもごもごする異常運動や舌が出たり振るえたりが続く副作用の症状で、一般に難治性である。
重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin,身体が動かなくなり高熱がでて死亡リスクもある)、遅発性ジスキネジア(まばたき増加・口が不随意運動でもぐもぐ・舌が出やすいなど)、麻痺性イレウス(ひどい便秘・吐き気・腹痛など)、無顆粒球症・白血球減少(風邪のような発熱・咳や痰など)、静脈血栓症・肺塞栓症(手足の痛みやむくれ・息切れや呼吸のしづらさ・視力低下や目の痛みなど)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH,だるくて喉の渇きが出る、頭痛・吐き気・意識障害・けいれん)など。眠気や注意力・集中力の低下といった副作用が翌朝以降にも続く恐れがあるので、危険を伴う作業もしないようにして下さい。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、肝機能障害、脳の器質障害、心臓疾患、腎臓疾患、低血圧、慢性の便秘など腸の不調がある人、甲状腺機能亢進症、てんかん、高齢者(寝たきりや脱水状態にある人)、妊婦(胎児への悪影響の考慮)、認知症の人、希死念慮のある人など。
他の向精神薬と併用すると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が強まったりすることがあります。アドレナリン(ボスミン)との飲み合わせが悪いので注意が必要です。
『処方してはいけない禁忌』は、医師が状況から不適と判断した人、本剤で過敏症を起こしたことがある人。
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