クロルプロマジン+プロメタジン+フェノバルビタールの効能・作用……効能は『統合失調症・老年期精神病・躁病・うつ病・神経症など』です。抗精神病薬というよりは、難治性の睡眠障害に対して処方されることが多く、『最強の睡眠薬・飲む拘束衣』などと呼ばれることもあった。
赤いべゲタミンAの配合錠と白いべゲタミンBの配合錠の色から、『赤玉』『白玉』というあだ名で呼ばれることもあった。しかし、依存性や乱用・ODのリスクなどが指摘され2016年末で販売中止となっている。公益社団法人・日本精神神経学会から『薬物乱用防止の観点からの販売中止』の要望が製造販売元の塩野義製薬に出されていた。
統合失調症は脳内の神経伝達物質であるドーパミン(D)が過剰になることで幻覚・妄想などの『陽性症状』が発症したり、逆にドーパミンやセロトニンの分泌が減少・不足することで感情鈍麻・無為・ひきこもり(自閉)などの『陰性症状』が起こったりする精神病である。
ベゲタミンは1957年に、広島静養院の松岡龍三郎院長により開発された複数の種類を混ぜた配合剤である。べゲタミンにはバルビツール酸系睡眠薬のフェノバルビタール、抗精神病薬のクロルプロマジン、抗ヒスタミンの作用が強いプロメタジンの3剤が配合されている。特に現在ではほとんど処方されていないバルビツール酸系睡眠薬のOD(オーバードーズ=過量服用)の副作用(昏睡・筋肉への後遺症・呼吸抑制や不整脈などによる死亡)が問題視されることが多かった。
古典的な強い効き目の睡眠薬として知られる『バルビツール酸誘導体』そのものは、1865年にドイツの医師アドルフ・バイエルが尿中の尿素とリンゴ中のマロン酸から合成した化合物であり、1882年から催眠・鎮静の目的で医学的に利用されるようになっていったものである。
主に脳内のドーパミン(D2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の過剰興奮で発症する『陽性症状』を抑制することができる。セロトニン(5-HT2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きが活性化されて『陰性症状』を改善することができる。
プロメタジンは催眠作用として働くヒスタミン(H1)受容体の遮断作用を持っているが、プロメタジンはクロルプロマジンの副作用である手足の振るえのパーキンソン症状を抑えることも期待できるとされている。
クロルプロマジン+プロメタジン+フェノバルビタールの商品名……べゲタミンA(塩野義)、 べゲタミンB(塩野義)
平均的な用法・用量……成人は鎮静用途では1日3~4錠を分けて経口投与する。催眠用途では、成人は1日1~2錠を就寝前に経口投与する。
疾患・年齢・症状に応じて、用量を調整する。
副作用……めまい、口渇、こわばり、手の振るえ、眠気、動悸、便秘、尿がでにくい、目のかすみ、体重増加、生理不順、乳汁分泌、依存性など。錐体外路症状(手足のふるえ・体のこわばりやつっぱり、ひきつけ、無表情、よだれ、目の動きの異常、舌のもつれ、そわそわなど)。
長期服用・大量服用で『遅発性ジスキネジア』の副作用が起こることがある。遅発性ジスキネジアというのは、口周辺のもごもごする異常運動や舌が出たり振るえたりが続く副作用の症状で、一般に難治性である。
重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin,身体が動かなくなり高熱がでて死亡リスクもある)、遅発性ジスキネジア(まばたき増加・口が不随意運動でもぐもぐ・舌が出やすいなど)、腸閉塞・麻痺性イレウス(ひどい便秘・吐き気・腹痛など)、静脈血栓症・肺塞栓症(手足の痛みやむくれ・息切れや呼吸のしづらさ・視力低下や目の痛みなど)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH,だるくて喉の渇きが出る、頭痛・吐き気・意識障害・けいれん)、横紋筋融解症(手足のしびれとけいれん、脱力感・筋肉痛・歩行困難・赤褐色の尿)、溶血性貧血、重い不整脈、重い血液成分の異常、皮膚粘膜眼症候群(スティブンス-ジョンソン症候群)など。眠気や注意力・集中力の低下といった副作用が翌朝以降にも続く恐れがあるので、危険を伴う作業もしないようにして下さい。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、肝機能障害、脳の器質障害、心臓疾患、腎臓疾患、緑内障、前立腺肥大、てんかん、呼吸器の重い疾患、肥満の人、脱水状態の人、寝たきり、高齢者(寝たきりや脱水状態にある人)、妊婦(胎児への悪影響の考慮)、認知症の人、希死念慮のある人など。
他の向精神薬と併用すると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が強まったりすることがあります。抗真菌薬のボリコナゾール、肺高血圧症治療薬のタダラフィルやマシテンタン、抗エイズウイルス薬のリルピビリン、C型慢性肝炎治療薬のダクラタスビル、アスナプレビルなどは併用禁止になっています。その他にも飲み合わせの悪い薬が多くあるので、必ず医師の判断・指示に従って服用してください。
『処方してはいけない禁忌』は、医師が状態・状況から不適と判断した人、本剤で過敏症を起こしたことがある人。必ず医師の判断・指示に従って服用してください
トップページ> 薬の説明>
向精神薬>現在位置
Encyclopedia
プライバシーポリシー