スルピリド(ドグマチールなど)の効能・作用・副作用

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スルピリド(ドグマチールなど)についての基本情報

スルピリドの効能・作用……効能は『統合失調症・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・うつ病・うつ状態など』です。

スルピリドは1967年にフランスの製薬会社(Delagrange社)が胃潰瘍の治療薬として開発していたという異色の歴史を持つ薬であり、胃の循環運動(胃粘膜の血流)を改善して胃潰瘍・十二指腸潰瘍を改善する効果を持っている。統合失調症やうつ病に効く向精神薬としてはベンザミド系抗精神病薬に分類され、フランスで初めに開発・承認が進んだ経緯があるため、アメリカでは承認されていない。

統合失調症は脳内の神経伝達物質であるドーパミン(D)が過剰になることで幻覚・妄想などの『陽性症状』が発症したり、逆にドーパミンやセロトニンの分泌が減少・不足することで感情鈍麻・無為・ひきこもり(自閉)などの『陰性症状』が起こったりする精神病である。

ベンザミド系は、ドーパミンのD2受容体とD3受容体を選択的に阻害することが知られており、ヒスタミン、ムスカリン性アセチルコリン、αアドレナリンの受容体とは殆ど結合しない。その影響で、他の抗精神病薬で起こりやすい『眠気・ふらつき・過剰な沈静・脱力・心臓(循環器)への負担・錐体外路症状』などの副作用が比較的少なくなっている。

ただしスルピリドの特異的な用量依存性の副作用として、脳下垂体におけるドーパミン(D2)受容体の遮断作用が強くなりすぎて、『プロラクチン(授乳ホルモン)の濃度上昇』があり、男性だと『射精不能・性欲減退』、女性だと『月経異常・乳汁分泌』の副作用になりやすい。

50~150mgの低用量で『抗うつ作用』を発揮し、それ以上の高容量になると統合失調症の陽性症状を改善する『抗精神病作用』を発揮するというユニークな薬理特性を持っている。胃潰瘍などの胃腸症状に対しては、150mg以下の少量を用いることが多い。

スルピリドは非常に多様な症状に対して処方される薬で、『統合失調症・うつ病・消化器潰瘍』といった適応症以外にも、吐き気止め(制吐剤)、消化促進剤、摂食障害、自律神経失調症的な不定愁訴(めまい・頭痛・動悸・胃重・のどの詰まり感・腹部膨満感・倦怠感など)に対して使われることがある。

さまざまな原因疾患によって現れる不定愁訴的な身体症状、食欲低下、倦怠感に対して、スルピリドが第一選択薬として処方されることも多い。スルピリドには『食欲増進』という副次的作用があり、食欲低下が見られる摂食障害の患者に効果があることもあるが、精神疾患で服用している人の食欲が亢進して体重が増えすぎるという副作用が出ることもある。

スルピリドは低用量で前シナプスのドーパミン(D2)受容体を阻害して、高容量では後シナプスのドーパミン(D2)受容体を阻害することで、低用量でうつ病に効果があり、高容量で統合失調症に効果があるという効き目の違いが現れるようである。

抗精神病薬(メジャートランキライザー)は一般的に、脳内のドーパミン(D2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の過剰興奮で発症する『陽性症状』を抑制することができる。セロトニン(5-HT2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きが活性化されて『陰性症状』を改善することができる。

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スルピリドの商品名……アビリット(大日本住友)、  ドグマチール(アステラス)、  ピリカップル(コーアイセイ)、  マーゲノール(辰巳化学、日本ジェネリック)、  ミラドール(バイエル)

平均的な用法・用量……胃・十二指腸潰瘍に対しては、成人1日150mgを3回に分けて経口服用する。

うつ病・うつ状態に対しては、成人1日150~300mgを複数回に分けて経口服用する。1日600mgまで増量できる。

統合失調症に対しては、成人1日300~600mgを複数回に分けて経口服用する。1日1200mgまで増量できる。

疾患・年齢・症状に応じて、用量を調整する。

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副作用……プロラクチン血症による“女性の生理不順・乳汁分泌”と“男性の射精不能・性欲減退・女性化乳房”。めまい、口渇、こわばり、手の振るえ、眠気、不安感、吐き気、動悸、便秘、尿がでにくい、目のかすみ、体重増加、依存性など。錐体外路症状(手足のふるえ・体のこわばりやつっぱり、ひきつけ、無表情、よだれ、目の動きの異常、舌のもつれ、そわそわなど)。

長期服用・大量服用で『遅発性ジスキネジア』の副作用が起こることがある。遅発性ジスキネジアというのは、口周辺のもごもごする異常運動や舌が出たり振るえたりが続く副作用の症状で、一般に難治性である。指が震えたり腕がこわばるなどのパーキンソン病様症状が出ることもある。

重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin,身体が動かなくなり高熱がでて死亡リスクもある)、遅発性ジスキネジア(まばたき増加・口が不随意運動でもぐもぐ・舌が出やすいなど)、静脈血栓症・肺塞栓症(手足の痛みやむくれ・息切れや呼吸のしづらさ・視力低下や目の痛みなど)、無顆粒球症・白血球減少(免疫低下による発熱やのどの痛みなど)、重い不整脈、皮膚粘膜眼症候群(スティブンス-ジョンソン症候群)、肝臓の重い症状など。眠気や注意力・集中力の低下といった副作用が翌朝以降にも続く恐れがあるので、危険を伴う作業もしないようにして下さい。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、心臓疾患、低血圧、パーキンソン病、腎臓疾患、肝機能障害、脳の器質障害、脱水状態の人、寝たきり、高齢者(寝たきりや脱水状態にある人)、妊婦(胎児への悪影響の考慮)、肥満の人、認知症の人、希死念慮のある人など。

他の向精神薬と併用すると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が強まったりすることがあります。パーキンソン病の薬(レボドパ製剤など)、吐き気止めの薬(ドンペリドン、メトクロプラミド)との併用にも注意が必要です。その他にも飲み合わせの悪い薬があるので、必ず医師の判断・指示に従って服用してください。

『処方してはいけない禁忌』は、プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)、褐色細胞腫の疑いのある人。医師が状態・状況から不適と判断した人、本剤で過敏症を起こしたことがある人。必ず医師の判断・指示に従って服用してください

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