デカン酸フルフェナジンの効能・作用……効能は『統合失調症』です。
デカン酸フルフェナジンは、フェノチアジン系抗精神病薬であるフルフェナジンにデカン酸をエステル結合させた注射用デポ製剤である。1960年に、アメリカのスクイブ医学研究所で合成された薬剤で、日本では1993年から承認されて使用が開始された。副作用に気をつける必要があるが持効性の統合失調症治療薬なので、服薬遵守が難しい患者でも4週間に1回の筋肉内注射で済むというメリットがある。
統合失調症は脳内の神経伝達物質であるドーパミン(D)が過剰になることで幻覚・妄想などの『陽性症状』が発症したり、逆にドーパミンやセロトニンの分泌が減少・不足することで感情鈍麻・無為・ひきこもり(自閉)などの『陰性症状』が起こったりする精神病である。
筋肉内注射をしてから4~6時間後に最高血中濃度に達して、4週間にわたって定常濃度が維持されるという持効性の抗精神病薬である。最高血中濃度に達するまでの時間は、エナント酸フルフェナジンよりも早く、注射後は緩徐(かんじょ)に本剤が血液中へと移行する。デカン酸フルフェナジンは、血液中のエステル分解酵素で加水分解されてフルフェナジンへと変換される。
効果の持続期間が約4週間と長いため、統合失調症の維持療法や再発防止に適した薬剤であり、服薬遵守が上手くできない寛解した精神病患者の再発を予防する目的でも使われることがある。統合失調症の幻覚・妄想・自我意識障害といった『陽性症状』に特に効果が期待される。デカン酸フルフェナジンの注意すべき副作用としては、『アカシジア・ジストニア・パーキンソン症状』などの錐体外路症状があるが、長期投与では下に示しているような『血液障害・血圧低下・体重増加・高プロラクチン血症』などの副作用にも気をつける必要がある。
抗精神病薬(メジャートランキライザー)は一般的に、脳内のドーパミン(D2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の過剰興奮で発症する『陽性症状』を抑制することができる。セロトニン(5-HT2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きが活性化されて『陰性症状』を改善することができる。
デカン酸フルフェナジンの商品名……フルデカシン(田辺三菱)
平均的な用法・用量……成人は注射製剤・1回12.5~75mgを4週間間隔で投与(筋肉内注射)する。一般的な維持量は25~50mgである。
疾患・年齢・症状に応じて、用量を調整する。
副作用……めまい、立ちくらみ、口渇、こわばり、手の振るえ、眠気、不安感、吐き気、動悸、便秘、尿がでにくい、目のかすみ、体重増加、依存性など。錐体外路症状(手足のふるえ・体のこわばりやつっぱり、ひきつけ、無表情、よだれ、目の動きの異常、舌のもつれ、そわそわなど)。高プロラクチン血症(生理不順・乳汁分泌・女性化乳房・性機能障害)。
長期服用・大量服用で『遅発性ジスキネジア』の副作用が起こることがある。遅発性ジスキネジアというのは、口周辺のもごもごする異常運動や舌が出たり振るえたりが続く副作用の症状で、一般に難治性である。指が震えたり腕がこわばるなどのパーキンソン病様症状が出ることもある。
重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin,身体が動かなくなり高熱がでて死亡リスクもある)、遅発性ジスキネジア(まばたき増加・口が不随意運動でもぐもぐ・舌が出やすいなど)、静脈血栓症・肺塞栓症(手足の痛みやむくれ・息切れや呼吸のしづらさ・視力低下や目の痛みなど)、無顆粒球症・白血球減少(免疫低下による発熱やのどの痛みなど)、麻痺性イレウス(吐き気や食欲低下・腹部膨満感・激しい腹痛)、重い不整脈、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、肝臓の重い症状など。眠気や注意力・集中力の低下といった副作用が翌朝以降にも続く恐れがあるので、危険を伴う作業もしないようにして下さい。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、心臓疾患、低血圧、腎臓疾患、肝機能障害、脳の器質障害、甲状腺機能亢進症、てんかん、脱水状態の人、寝たきり、高齢者(寝たきりや脱水状態にある人)、妊婦(胎児への悪影響の考慮)、認知症の人など。
他の向精神薬と併用すると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が強まったりすることがあります。アドレナリン(ボスミン)とは併用しないでください。他の安定剤、パーキンソン病の薬(抗コリン薬・レボドパ製剤など)、吐き気止め(ドンペリドン、メトクロプラミド)カルバマゼピン(テグレトール)などとの併用にも注意が必要です。その他にも飲み合わせの悪い薬があるので、必ず医師の判断・指示に従って服用してください。
『処方してはいけない禁忌』は、バルビツール酸誘導体の睡眠薬などの影響下にある人、昏睡状態の人、重症の心疾患のある人、エピネフリン投与中の人、パーキンソン病の人、妊娠の可能性がある人。医師が状態・状況から不適と判断した人、本剤で過敏症を起こしたことがある人。必ず医師の判断・指示に従って服用してください。
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