ピモジドの効能・作用……効能は『統合失調症』です。統合失調症以外にも、小児の自閉性障害、知的障害(精神遅滞)に伴う『動作・情動・食欲・対人関係パターンに見られる異常行動』『睡眠・食事・排泄・言語などに見られる病的症状』『常同行動』に対して処方されることがあります。
ピモジドはドーパミンD2受容体の選択性が強い『第一世代の定型抗精神病薬』であり、ドーパミンD2受容体と結合することによって精神病で起こる『精神運動亢進(幻覚・妄想の陽性症状)』を抑制する。ピモジドの抗ドーパミン作用は、ハロペリドールと並んで抗精神病薬の中では最も強い部類である。セロトニン2Aの受容体を遮断する作用も持っているが、抗ドーパミン作用よりは弱い。
統合失調症は脳内の神経伝達物質であるドーパミン(D)が過剰になることで幻覚・妄想などの『陽性症状』が発症したり、逆にドーパミンやセロトニンの分泌が減少・不足することで感情鈍麻・無為・ひきこもり(自閉)などの『陰性症状』が起こったりする精神病である。
ピモジドは1974年に発売された第一世代の定型抗精神病薬で、今では古典的な抗精神病薬になっているが、発売当初から1980年代にかけては『陰性症状の改善(自発性を高める効果)』を期待できる数少ない薬であった。ピモジドは『自発性・精神運動性』を高める効果が期待できるということで、当時から統合失調症以上に自閉症の人に処方されることが多かった薬でもある。
現在では、ドーパミン遮断にセロトニン受容体の拮抗作用を加えて『陰性症状』にも効くように改良された『第二世代抗精神病薬』が使われることが増えて、ピモジドの処方は減少している。ピモジドには服用後に『脳内移行性』が優れているという特徴があり、血中半減期が長いので作用時間も長くなり、1日1~2回の服薬で十分な抗精神病作用を発揮することができる。常用量であれば副作用が比較的少なく(それでも錐体外路症状・高プロラクチン血症・不整脈の副作用などには注意が必要である)、統合失調症の維持療法に向いた薬だとされている。
ピモジドは鎮静作用が弱いので、『過鎮静・意識消失』の副作用が抑えられており、自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)や知的障害の小児の各種症状・問題行動にも処方しやすくなっている。ピモジドはかつて統合失調症の『陰性症状(無為・自発性低下・自閉・感情鈍麻など)』に特に効果が期待できる薬とされており、1日1回の投与でも十分な臨床効果があるのもメリットの一つである。
抗精神病薬(メジャートランキライザー)は一般的に、脳内のドーパミン(D2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の過剰興奮で発症する『陽性症状』を抑制することができる。セロトニン(5-HT2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きが活性化されて『陰性症状』を改善することができる。
ピモジドの商品名……オーラップ(アステラス)
平均的な用法・用量……成人は初期量は1~3mg、症状に応じて4~6mgにまで漸増するが、1日の最大量は9mgである。1日1~3回に分けて服用する。維持量は通常6mg以下とされる。
小児は1日1回で、1日量は1~3mgである。1日量は6mgまで増量することができる、場合によって1日2回に分けて服用することもある。本剤服用によって症状が安定した状態が得られた場合、適当な休薬期間を設けて、その後の投薬を継続するか否かを担当医師が判断する。
疾患・年齢・症状に応じて、用量を調整する。
副作用……めまい、立ちくらみ、口渇、こわばり、手の振るえ、眠気、不安感、吐き気、動悸、便秘、尿がでにくい、目のかすみ、体重増加、依存性など。錐体外路症状(手足のふるえ・体のこわばりやつっぱり、ひきつけ、無表情、よだれ、目の動きの異常、舌のもつれ、そわそわなど)。高プロラクチン血症(生理不順・乳汁分泌・女性化乳房・性機能障害)。
長期服用・大量服用で『遅発性ジスキネジア』の副作用が起こることがある。遅発性ジスキネジアというのは、口周辺のもごもごする異常運動や舌が出たり振るえたりが続く副作用の症状で、一般に難治性である。指が震えたり腕がこわばるなどのパーキンソン病様症状が出ることもある。
重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin,身体が動かなくなり高熱がでて死亡リスクもある)、遅発性ジスキネジア(まばたき増加・口が不随意運動でもぐもぐ・舌が出やすいなど)、静脈血栓症・肺塞栓症(手足の痛みやむくれ・息切れや呼吸のしづらさ・視力低下や目の痛みなど)、無顆粒球症・白血球減少(免疫低下による発熱やのどの痛みなど)、重い不整脈、けいれん発作、重い肝臓の症状など。眠気や注意力・集中力の低下といった副作用が翌朝以降にも続く恐れがあるので、危険を伴う作業や車の運転もしないようにして下さい。
注意・禁忌……『注意を要する人』は、心臓疾患、パーキンソン病、うつ病、腎臓疾患、肝機能障害、脳の器質障害、てんかん、脱水状態の人、寝たきり、高齢者(寝たきりや脱水状態にある人)、妊婦(胎児への悪影響の考慮)、認知症の人など。
他の向精神薬と併用すると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が強まったりすることがあります。アドレナリン(ボスミン)とは併用しないでください。他の安定剤、パーキンソン病の薬(抗コリン薬・レボドパ製剤など)、吐き気止め(ドンペリドン、メトクロプラミド)などとの併用にも注意が必要です。その他にも飲み合わせの悪い薬があるので、必ず医師の判断・指示に従って服用してください。
以下の薬は飲み合わせが悪く、不整脈の副作用発現リスクを高めるとされます。
スルトプリド(バルネチール)、テラプレビル(テラビック)、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、エリスロマイシン(エリスロシン)、キヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド)、アプレピタント(イメンド)、ホスアプレピタント(プロイメンド)、パロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)、HIVプロテアーゼ阻害薬(ノービア)、アゾール系抗真菌薬(イトリゾール)など。グレープフルーツジュースも不整脈リスクを高めます。
『処方してはいけない禁忌』は、昏睡状態の人、重症の心疾患のある人、エピネフリン投与中の人、バルビツール酸誘導体などの中枢神経抑制剤の強い影響下にある人。医師が状態・状況から不適と判断した人、本剤で過敏症を起こしたことがある人。必ず医師の判断・指示に従って服用してください。
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