恋人のどこに魅力を感じるか?自分と似ている人を好きになるか、違っている人を好きになるか?
人に好かれやすい性格:自己評価と社会的望ましさ
恋愛心理学が研究対象にする性格的・心理的な特性として、『対人魅力(interpersonal attraction)』があります。対人魅力というのは、『人間(他者)に対する魅力』のことであり、同性間・友人間(仲間間)の魅力だけではなく、異性に対する魅力も取り扱います。
恋愛心理学における対人魅力の研究で、もっともダイレクトかつシンプルな質問は、『あなたはどんな異性を好きになりますか?今付き合っている恋人のどこに魅力を感じますか?どのような特徴を持った異性を魅力的だと感じますか?』というものですが、大学生・青年期(20~30代半ば程度)の男女にこの異性の対人魅力についての質問をすると概ね以下のような項目を上げてきます。
恋愛において、人は自分と似た人を好きになるのか、それとも、自分とは違っている人(自分が持っていないものを持っている人)を好きになるのかという論争は古くからあります。自分と似た性格・態度・生き方の人を好きになるという仮説を『類似説』、自分とは異なる性格・態度・生き方の人、自分が持っていないものを持っている人を好きになるという仮説を『相補説』といいます。相補説を現すことわざとして『破れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)』というものもあります。
類似説と相補説のどちらのほうが正しいのか、現段階の恋愛心理学(社会心理学)の統計的研究では、D.バーン(D.Byrne)とD.ネルソン(D.Nelson)の『見知らぬ他者実験(1965年)』などをはじめとして、類似説のほうが支持されています。
『見知らぬ他者実験』はテキサス大学の学生168名を被験者として実施されたもので、様々な社会事象・政治や経済・物事の是非について賛成か反対かを『6段階』で答えさせる心理テスト(態度調査)を行い、それぞれの被験者の回答に合わせて『類似した回答』と『類似していない回答』を作成しました。そして、それらの『類似した回答』と『類似していない回答』を『あなたが会ったことのない学生が回答した結果である』と教示して渡し、その架空の会ったことのない学生の適応度・人間性などを評価させました。
その評価項目の中には『その人を好きになれそうな度合い』と『その人と一緒に仕事をしたい度合い』の項目も含まれていましたが、この実験結果は『自分と類似度の高い架空人物に対して、人はその対人魅力を高く評価する』というものでした。一般的に、人は自分と意見・態度・価値観が類似している似通った相手に対して魅力を感じやすい傾向があることが分かっています。
アメリカの社会学者のウィンチは、学生結婚をしたカップルの面接調査の結果を元にして、恋人の一方がある欲求を強く持っている時には、他方はその欲求が弱くなる、恋人の一方が依存的で甘える時には、他方は受容的で世話を焼くようになるという『相補説(自分が持っていない特徴を持つ異性に惹かれる)』を主張しました。
しかし、このウィンチの相補説はその後の追試研究で支持されておらず、また厳密には『付き合う前に自分と異なる特徴を持った異性に惹かれている』わけではなく『付き合ったり結婚したりした後に相手の要求や請願に応えざるを得ない関係になってしまった』という風に解釈されるべきという反論もあります。
しかし、性格特性(性格傾向)については『相補説』も『類似説』もどちらも当てはまらない可能性が高いことが、いくつかの性格特性の調査研究から分かっています。例えば、大学生を対象にした見知らぬ他者実験では、『外向性の性格の人と内向性の性格の人のどちらを好ましく思うか?』の質問項目において、自分が外向的である人も内向的である人もどちらも『外向性の性格の人のほうが好ましい』という判断をしていたのです。
外向性の性格というのは、元々はC.G.ユングの性格心理学で用いられた精神分析的な概念なのですが、リビドー(興味・欲求)が自分の外部にある他者や物事に向いており、人付き合い(社交)や社会生活に積極的に向き合う性格のことを意味しています。内向性の性格というのは、リビドー(興味・欲求)が自分の内面や信念に向いており、自分の世界にこもって人・社会と積極的には向き合いたがらない性格のことを意味しています。
外向性の人が一般的にみんなから好かれやすいように、人に好かれやすい性格には『自分に似ているか似ていないか』よりも『一般的にみんなに好かれやすい性格かどうか』のほうが大きく影響していると考えられています。人(異性)に好かれる性格というのは、類似説でも相補説でもすべてを適切に説明することができず、『一般的にみんなから好かれやすい性格』や『一般的に社会的に望ましいとされている性格』が存在するようなのです。
しかし、大学生を対象にした調査研究では、自己評価(自尊心)が高い人ほど『社会的望ましさの性格特性の影響』を受けにくいことが分かっています。自己評価(self esteem)というのは、自分で自分の魅力や価値をどのくらい高く評価しているか、自分をどれくらい受け容れていて自信があるかということです。そして、この自己評価が高い人になるほど『社会的望ましさの性格特性を持つ人(みんなから好かれやすそうな人)』よりも『自分に似ている人』を好む類似説の結果が見られたのです。
自己評価が低い人ほど、『容姿が良い・明るい・面白い・外向的・社交的』といった社会的に望ましい性格の人を好む傾向が強く見られますが、自己評価が高い人になると『自分に似ている性格の人』を好む傾向が強く見られるという違いがあります。
その理由としては、自己評価が低い人は『自分が付き合う相手の社会的望ましさ(みんなが認めてくれる恋人の価値)』によって自分の魅力・価値を高めようとする動機づけが高いが、自己評価が高い人は既に自分自身を受け容れていて自信があるので『自分が付き合う相手の社会的望ましさ(みんなが認めてくれる恋人の価値)』にあまり強くこだわる必要性がないのだと推測されています。
各種の調査から、男女に共通する社会的に望ましい性格、対人魅力を感じる人物の特徴として『明るい・優しい・知的な・思いやりがある・清潔な・健康な・生き生きしている・積極的な』が上げられていますが、これらの特徴は時代・地域・男女が変わってもほとんど変わらない普遍的な魅力を持つと考えられています。企業が新入社員として採用したい人物のイメージとしても、『明るさ・意欲(積極性)・協調性』が上げられており、社会一般的に望ましいとされる性格特性には共通性が見られるのです。
『魅力を感じる異性像の一般的パターン』は男性と女性ではやや異なっていて、以下のようになっています。
『魅力を感じる男性像の一般的パターン』は次の5パターンであり、すべてに合致していなくてもどれかのパターンに当てはまる場合には、異性から魅力的な人物として認識される可能性がある。
『魅力を感じる女性像の一般的パターン』は次の6パターンであり、すべてに合致していなくてもどれかのパターンに当てはまる場合には、異性から魅力的な人物として認識される可能性がある。
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