泡盛(あわもり)

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泡盛(あわもり)というのは、沖縄県特産の焼酎(しょうちゅう)のことであり、焼酎の醸造中に盛んにポコポコと泡が出て来る現象から泡盛(あわもり)と名付けられた。醸造中に出て来る泡の量や出方によって、大よそのアルコール濃度を測っていたという説もあるが、いずれにしても醸造している最中に盛んに泡が出て来るところから泡盛と名付けられている。

泡盛(あわもり)は米を原料として作られているが、使われる米は主に硬質米でサラサラとしていて米麹にする時に使いやすく、アルコール発酵の温度管理がしやすいとされる『タイ米(タイ砕米)』である。大正期からタイ米が泡盛醸造のために輸入され始めたのだが、昭和初期頃には泡盛醸造の米としてタイ米が一般的なものとして定着することになった。

黒麹菌のアワモリコウジカビを用いた米麹である『黒麹(くろこうじ)』で米のデンプンを糖化し、酵母でアルコール発酵させたもろみを一回だけ蒸留させて醸造する沖縄県産(琉球諸島産)の蒸留酒である。単式蒸留焼酎(旧焼酎乙類)の一種に分類されており、3年以上かけて貯蔵したものを『古酒(クース)』と呼んで珍重している。

地域団体商標制度で『琉球泡盛』の名称を用いることができるのは沖縄県内で醸造された泡盛だけであり、『本場泡盛・琉球泡盛』という商標で販売されている泡盛は基本的に沖縄県産である。『泡盛』という沖縄県産の酒の呼び方は、元々は近代日本の本土側が『沖縄の特産品』として呼んだものだとも言われ、琉球諸島では元々は『サキ・焼酎・シマーグヮー』という呼ばれ方がされていたようである。

第二次世界大戦後の一時期には、奄美群島で『泡盛』と称する『黒糖焼酎』が作られていたことがあり、その時には黒糖を使った焼酎であることを示す意味で『純良泡盛』という表記がなされていた。

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琉球王国の酒の蒸留技術は、日本の室町時代に相当する応永年間(1394年~1428年)に、中国(明)あるいはシャム国(タイ)から伝えられたとされる。その時に、焼酎を作るために必要な『蒸留器・タイ米・甕(貯蔵容器)』なども一緒にもたらされた。琉球王国の温暖な気候に適した『黒麹菌』を導入したことで、現在の『泡盛』につながる新たな琉球特有(沖縄特有)の蒸留酒が開発されることになったのである。

15世紀にはまだ泡盛は一般化しておらず、1460年に第一尚氏王朝の尚泰久(しょうたいきゅう)が朝鮮に使者を派遣した時に、朝鮮国王・世祖に『天竺酒(てんじくしゅ)』というサトウヤシの実から醸造した蒸留酒を送っている。『桄榔樹の漿、焼きて酒を成す』といったサトウヤシの水分を原料とした天竺酒の製法についての記載も残っている。

15世紀に沖縄本島に漂着した朝鮮人が、那覇には『清酒・濁酒・南蛮酒』があり、南蛮酒の味は朝鮮の焼酒に似ているということを語っている。1534年に明の冊封使・陳侃(ちんがく)が琉球に派遣されてきた時の記録である『陳侃使録(ちんがくしろく)』では、南蛮酒はシャム(タイ)からもたらされた焼酎であり、その醸造法は中国の露酒に似ているとしている。

東恩納寛淳(ひがしおんなかんじゅん)『泡盛雑考(1941年)』の論考で、タイに沖縄県にあるものと類似の蒸留器があることなどから、琉球の泡盛の起源はタイの『ラオロン』にあるという仮説を提示している。

『琉球国由来記(正徳3年・1713年)』には、『当国その濫觴(らんしょう)光武の初め中華に通ず、この時伝来し来りてこれきびを製す。米・麦・粟・稗を以てこれを醸造し月余にして成る。この国の名酒なり』という泡盛の製造法とその味の美味さを賞賛する記録が残されている。泡盛は15世紀から19世紀まで、朝貢的な奉納品として中国・日本の権力者に献上されるならわしがあった。

日本に対しては、薩摩藩の藩主・島津家を通して徳川幕府に泡盛が献上され続けており、『徳川実紀・駿府記(天保12年・1841年)』には慶長17年(1612年)に薩摩の島津家久が将軍の徳川家康に『琉球酒(泡盛)』を献上したことが記されている。『琉球酒』はその後に『焼酒』と呼ばれるようになり、1671年(寛文11年)からは今と同じように『泡盛』と呼ばれることになった。

『本朝食鑑(元禄8年・1695年)』では、江戸にある薩摩藩邸でも盛んに泡盛が醸造されていたことが記録されており、原料の米と硬水に『黒麹菌(アスペルギルス・アワモリ)』を加えて十分に発酵させてから蒸留するという製造法についても説明されている。泡盛は壺に保存して熟成させると、更に泡盛に特有の芳醇で甘い香りとまろやかな舌触りが強まる特長があり、3年以上の長期間の熟成によって『古酒(クース)』となる。

泡盛には、アルコール度数が40度を超える高いものから、20度くらいの低いものも売られているが、沖縄県内で一般的に市販されている泡盛はアルコール度数が30度くらいのものが多い。泡盛はストレート、オン・ザ・ロック、水割り、お湯割り、炭酸割り(ソーダ割り)など様々な飲み方が可能であり、近年では泡盛をベースにした様々なカクテルのレシピも考案されている。

泡盛(特に古酒)をストレートで飲む時には、猪口と泡盛用の伝統的酒器『カラカラ(壺屋焼かガラス製)』を用いると雰囲気が出るが、泡盛の水割りではカラフルな琉球ガラス製のグラスが用いられることも多い。

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