コンテクスト(context)

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コンテクスト(context)は現代の論説や批評でも多様されている概念で、一般に『文脈(ぶんみゃく)・状況』と訳されることが多い。コンテクストは言語学・言語哲学(分析哲学)で用いられていた用語で、一つの文章がテクストであり、複数のさまざまなテクストが集まってできたものがコンテクストである。だから、山が集まったものを『山脈』というように、文章が集まったものを『文脈(コンテクスト)』といっているのである。

一つ一つの個別の文章(テクスト)を正しく理解するためには、テクストが集まっている全体の文脈(コンテクスト)を見なければならないということが、『コンテクストの語法・用法』の原点にある。コンテクストの流れや状況を見てから、初めてテクストの意味合いが分かるという感覚は、他者との『会話(言語的コミュニケーション)』において特に顕著である。

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会話(言語的コミュニケーション)で用いられる一つ一つの言葉や文章は、『辞書的な意味の定義』だけでは意味を確定することはできず、『それ以前にどのような会話をしてきたのか・話している人と聞いている人の関係性はどのようなものか・会話の背景や前提にどのようなことがあったのか』などのコンテクストを含めて考えないと、言葉や文章の意味を正しく理解することはできない。

例えば、『あの人は本当に一人で何もできないダメな人だから』というテクスト(発言)も、そのテクストの前にあった会話の流れ、言及している相手との関係性というコンテクスト(文脈)によって、その意味が良い意味なのか悪い意味なのかが大きく変わってくるのである。会社の同僚に対して『何もできないダメな人』と言っているのであれば、その言葉のまま『何もできない足でまといになるダメな人』という意味合いになってくるが、長年連れ添っていて仲のいい夫婦(夫婦の片方だけ入院したようなケース)であれば『何もできないダメな人』は必ずしも否定しているのではなく、親愛や心配の情を込めている可能性も出てくるのである。

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フランスの人類学者スペルバルとイギリスの言語学者ウィルソンの『関連性理論』では、コンテクスト(文脈)があらかじめ客観的に存在しているのではなく、他者との会話(コミュニケーション)が進行していくごとに新たに形成されていくとしている。個別の文(テクスト)の意味を理解するためには、全体的な流れや状況(前後関係)としてのコンテクスト(文脈)を見て理解する必要があるのである。コンテクストは文脈と訳されることが多いが、『状況・背景・前後関係』と訳したほうが日常的な言語感覚では分かりやすいだろう。

コンテクスト(文脈)はコミュニケーションの場で使用される言葉・表現を定義づけする背景・状況を指すことも多く、他者とのコミュニケーションを円滑に成立させるための共有情報・前提(前後関係)のことを『コンテクスト』と呼ぶことも多い。

アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールは、コンテクスト(前提)の共有性が高く言葉であまり詳しく説明しなくても適切に察し合える『ハイコンテクスト文化』、コンテクスト(前提)の共有性が低く言葉で詳しく説明することで確実に理解し合おうとする『ローコンテクスト文化』を区別する理論を提唱している。

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文脈依存のハイコンテクスト文化では、『曖昧で婉曲な表現が多い・多弁ではない・直接的な質疑応答を好まない(察し合う文化)・論理性にこだわらない・言葉の価値が低くて討論(ディベート)に消極的』などの特徴がある。言語依存のローコンテクスト文化では、『直接的で分かりやすい表現が多い・多弁である・直接的な質疑応答を好む(はっきりと言い合う文化)・論理性にこだわる・言葉の価値が高くて討論(ディベート)に積極的』などの特徴がある。

一般に、日本は言語・文化・価値観・体験といったコンテクストの共有度が高い『ハイコンテクスト文化(コンテクスト依存文化)』、欧米は多民族国家が多く言語や文化、習慣の違う人同士が会話をする機会が多いのでコンテクストの共有度が低い『ローコンテクスト文化(言語依存文化)』として区分されている。

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