ポストモダン(postmodern)

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ポストモダン(postmodern)『近代(モダン)の後』という意味であるが、近代の後が現代(現在進行形の今)であるとしても『近代と現代の歴史時間的な区分』は必ずしも明確でない。近代主義(モダニズム)が成立するための前提条件やイデオロギーが失われた時代がポストモダンであるが、『近代主義の行き詰まり(自由の限界・可能性の閉塞)』を打破するための近代批判の思想としての側面もある。

近代(モダン)は『産業経済(第二次産業)の成長・国民国家(ナショナリズム)の統合・自由民主主義のイデオロギー・啓蒙思想の理性的な進歩・結婚や出産を前提とする画一的なライフサイクル』といった諸条件に支えられた時代であるが、これらの諸条件が『情報社会化・個人主義・価値観の多様化・思想の相対化』などによって崩されていく時代がポストモダン(近代の後)なのである。

ポストモダンは社会や人々に共通する画一的な価値観や前提となる範型(模範)が失われてくる時代であり、『人それぞれ(人に特定の価値観を強制することはできない)という考え方』が主流になるという意味では、『価値相対主義・文化多元主義の時代=ポストモダン』とも言えるだろう。

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例えば、現代で現在進行形である『晩婚化・未婚化・少子化』というのも、近代(モダン)であれば『人間は一定の年齢で結婚や出産をするのが当たり前であり社会的義務でもある』と考えられてきた近代に共通の価値観やライフサイクルが崩れてきたポストモダン的な現象として解釈できる。

性的マイノリティを社会の一員として積極的に承認するLGBT、誰もが自由な情報発信者になって既存メディアの権威が弱まるウェブ社会(情報化社会)、人間の知能や役割を超えるような働きをするAI(人工知能)・ロボット、国民国家の主権を弱めるグローバリゼーションや自由市場化なども『ポストモダンの現象』になってくるだろう。

近代(モダン)はジョン・ロックやモンテスキュー、ジャン・ジャック・ルソー、ヘーゲルなどの『西洋哲学の理想的な啓蒙思想』によって人々に共通する価値観や生き方が支えられた時代である。人権思想や社会契約論に刺激された『フランス革命後の国民国家・民主主義(立憲主義)』によって人々が国民主権・議会制で運営すべき近代国家の輪郭ができあがり、『イギリスの産業革命後の経済成長・所得上昇(一般市民の生活と教育の水準向上)』によって近代の非農民的な働き方・所得とライフスタイルが規定されていくことになった。

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ポスト・モダニズムという思想的な用語そのものは、1960年代から既に使われていたとされるが、『ポスト・モダニズム』という用語が今と同じような意味で使用されたのは、チャールズ・ジェンクス『ポスト・モダニズムの建築言語(1977年)』という建築デザインの分野の書籍である。

哲学の分野ではフランスの哲学者ジャン=フランソワ・リオタール(Jean-Francois Lyotard, 1924-1998)『ポストモダンの条件(1979年)』を書いて、『大きな物語の終焉』というコンセプトでポストモダンという時代を定義しようとした。

リオタールの『ポストモダンの条件』はフランスの現代思想に大きな影響を与えて、更にアメリカの哲学者・思想家の時代認識をも変革した。『国民国家・産業経済・自由民主主義・宗教規範・家族形成(子孫継承)』など、人間(社会共同体のメンバー)に共通する一つの大きな目的・目標としての『大きな物語』を喪失したという感覚、個人がバラバラな状態にあるという実感はますます強まっている。

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近代(モダン)を規定した近代啓蒙思想は、人間の理性を向上させることによって、国家・社会・経済・家族(子孫)が発展して人々の生活や精神、知性がどんどん豊かになっていくという『大きな物語』を背景に持っているが、この大きな物語が終焉して個人個人がバラバラに『島宇宙化』していく近代の後の時代が『ポストモダン』なのである。『個人単位の目標・楽しみ』ばかりをポストモダンの相対主義・多元主義の構造の中で追求することによって、ますます『人々に共通する価値観・規範・ライフスタイル』は失われていき、近代の大きな物語の共有と達成という主体的な目標からは遠ざかっていくのである。

ポストモダンという時代と思想の概念は『ポスト構造主義』を包摂しているが、唯一の真理がどこかにあるとするプラトニズムを徹底批判したジャック・デリダ、近代は人間の自由を解放・拡大したのではなく、反対に人々の内面・身体を規律訓練や環境操作で管理する技術を発達させたと批判したミシェル・フーコーなどもポスト構造主義(ポストモダン)の思想家と言える。

ポストモダンは『人間の主体性・経済と科学の進歩主義・人間の自由と解放・人権思想』などの近代啓蒙思想の理念や価値に支えられた近代主義(モダニズム)の原理を批判する時代区分であり、『近代の限界・矛盾・閉塞』を乗り越えるべく『近代後・脱近代』を目指していく思想潮流でもある。

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