経済統計によって算出される景気指標

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ここでは、『景気とは何か?景気の変動と循環の指標』で書いた資本主義経済で逃れがたい「景気変動(business fluctuations)」を読む為の統計的データである景気指標にどのようなものがあるのかについて説明します。

景気変動を読む為の景気指標(economic indicators)

景気の状態を知る為に役立つ『数量化された統計データ』のことを『景気指標(economic indicators)』といいます。景気は、国家のヒト(労働)、モノ(商品やサービス)、カネ(資本)の3つの要素の相互作用によって形成されていく為、何が原因で景気が良くなるのか、あるいは悪くなるのかを一義的に確定することは出来ません。

政府や官庁が公表する経済統計としての景気指標(economic indicators)には、実にたくさんの種類があるのですが、代表的なものを以下に示しておきます。

雇用状況やサラリーマンの賃金水準などを計測できる経済統計(景気指標)

失業率……総務庁が毎月、労働力調査を行って計算する「完全失業率」のことです。算出方法はシンプルなもので、「就業者」と「完全失業者」の合計数に完全失業者が占める割合が「失業率」となります。
この景気指標の特徴として、「労働する意志がなく求職していない人=非労働力人口に含まれる人」は調査対象に入れませんので、厳密に「職業に従事していない失業者・無職者」の割合を計算できるものではありません。

有効求人倍率……失業率とこの有効求人倍率は雇用統計に分類され、景気の中でも特に雇用情勢に関する景気を推定することが出来ます。有効求人倍率とは、『ハローワーク(旧・職業安定所)に登録された有効求人数(仕事の数)』『有効求職者数(雇用保険受給者を含み仕事をハローワークで探している人)』で割った数値のことです。
有効求人率が1倍を超えれば、一人の求職者に対して一つ以上の仕事があることになり、雇用情勢は景気が良いことを意味しますが、1倍を下回ると求人数(仕事)が不足していることを意味します。
失業率と同じく、全ての労働者人口が対象となるわけではないので、厳密には、非労働力人口に分類される失業者(ハローワークに求職に来ていない失業者)も含んだ求人倍率は分かりません。

毎月勤労統計調査……厚生労働省が実施する経済統計調査で、サラリーマンの給与水準を測る為のデータです。働いている企業から支払われる1人当たりの現金給与の総額(給与・賞与の合計)の数値で表されます。規定の労働時間だけでなく、「所定外労働時間=残業時間」も調査されるので、景気が良くなってくると仕事が増え残業時間も増加する傾向が見られます。

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企業の経済活動(生産・供給)の景気を測る経済統計(景気指標)

国内総生産(GDP,Gross Domestic Product)……内閣府が四半期(3カ月)に一度ずつ発表する経済統計で、国家の経済生産力を示す重要な景気の指標です。一年間に国内で生産された財・サービスの最終生産物の価値を消費、輸出、投資などの総計で示すもので、国家の経済規模の大小や経済成長率を知ることが出来ます。
GNP(国民総生産,Gross National Product)は、GDPに海外進出企業の利益や海外在住の邦人の経済収入を加えたもので、国内・海外を合わせて国民が生産した財・サービスの総計です。GNPからは中間財(製品の原材料)の市場価格が差し引かれて、最終生産物の価格の合計で「国の生産力」が示されます。

第三次産業活動指数……経済産業省が発表する経済統計データで、第二次産業の生産活動を示す鉱工業生産指数に対して、サービス業や小売販売業など第三次産業の生産活動の景気を示す指標です。現代の先進国では、全産業に占める第三次産業の経済規模と従事者の割合が大きくなっているので、第三次産業活動指数は非常に重要な景気指標となっています。

鉱工業生産指数……鉱業・工業・製鉄業・機械など製造分野の産業が分類される第二次産業の経済活動の景気を示す指標で、第二次産業の経済規模が大きい段階の国にとって非常に重要な景気指標となります。

消費動向調査……内閣府経済社会総合研究所が調査を行う消費動向調査は、景気の動向を判断するために、消費者の意識の変化に着目して行われるものです。各種のサービス業に対する家計の支出、耐久消費財などの保有状況と購入予定などを質問して、消費者の意識の変化で景気の変化を予測しようとするものです。
「暮らし向き」「収入の増加」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目を調査し、今後の半年間にそれらがどう変化するかを5段階評価で答えてもらいます。景気の変動に関する「消費者の考え(意識)」という消費に関係する心理的な部分を調査するのが目的です。
質問に対しては、「良くなる(1点)」「やや良くなる(0.75点)」「変わらない(0.5点)」、「やや悪くなる(0.25点)」「悪くなる(0点)」の5段階評価で採点し、その合計点数を加重平均して指数にします。計測された指数が、50以上ならば今後、半年間の景気の見通しは良いと判断し、50以下であれば景気の見通しは悪いというように判断されます。

市場で流通しているお金の価値(物価)やお金の供給量を測る経済統計(景気指標)

消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)……総務省統計局が毎月1回発表する消費者物価の動きを表す景気指標です。一般消費者の家計支出において、日常的に購入する商品(消費財・耐久消費財)とサービスの販売での値段の動きを示す統計データである。
消費者物価指数は、日本銀行が発表する企業物価指数(旧卸売物価指数)と並ぶ代表的な物価指数です。
その計算方法は、購入頻度が高く、一般的に消費される傾向のある商品・サービスを580品目程度選んで、毎月中旬の値段を調査するというものです。消費者物価指数の基準となる年を100として、それとの相対比較によって物価の変動を示します。
基準とされる年は、5年ごとに更新されます。消費の主体である家計において、購買頻度の高い商品・サービス(消費財)の価格の変動を指数として表すもので、物価の変動によって家計の支出や需要がどのような変化を見せるのかを知ることが出来ます。

通貨供給量(Money Supply)……日本銀行が毎年発表する、日本の通貨の総流通量を示す景気指標です。前年度の流通量と比較して、相対的な伸び率でマネー・サプライは示されますが、一般に貨幣の供給が多くなり過ぎると貨幣価値は下がり少ないと上がります。景気が良い時には、貨幣の消費量が増えるので、一般にマネー・サプライの数値は大きくなります。
ゼロ金利政策や量的緩和政策などの金融緩和政策を取るか取らないかの判断などにも、このマネー・サプライの指標が参考にされます。代表的な指標として「M2+CD」と言われるものがあり、「現金、普通預金、当座預金、定期預金、譲渡性預金」の合計によって計算されます。

金利……金融市場で変動する金利、銀行の預貯金に付く金利、ローンにかかる金利、日本銀行が定める金利、金利は統計データではありませんが、自由市場経済の経済活動(消費・貯蓄・投資・融資)を規定していく非常に重要な経済の要素です。

総合的な景気判断をする経済統計(景気指標)

景気動向指数……内閣府経済社会総合研究所が毎月発表する景気指標で、景気の動きや変化を総合的に見る事の出来る統計データです。複数の指標を組み合わせることで、多面的な観点から景気局面の判断を行うことが出来ます。上述した各種景気指標のデータも取り入れながら、生産活動、雇用情勢、マネー・サプライ、税収などの要素を総合的に分析して、「改善・横ばい・悪化」といった景気判断の材料にされます。
景気動向指数を大きく分類すると、景気変動を先取りして動いていく「先行指数」、景気と並行して一緒に動く「一致指数」、景気の変化よりも遅れて動いてくる「遅行指数」に分けることが出来ます。

景気ウォッチャー調査……内閣府が、街角で実感できる景気状況を毎月調査するのが「景気ウォッチャー調査」です。客観的なデータを下にした数量的なデータとは異なり、実際に街で働いている人たちの景気の実感を大まかに調べるものです。
例えば、タクシー運転手や飲食店の従業員、スーパーやコンビニの店長、アミューズメント施設の店員など街中の景気を実感しやすい仕事に従事している人たちを対象として景気ウォッチャー調査は行われます。3ヶ月前と比較した景気状況、今後数ヶ月の景気の見通しなどを5段階評価で質問して、結果を指数化していきます。実際に仕事をしている人の「生の声」から得られるデータなので、物価指数や平均所得、失業率などの客観的データに表れてこない「現場の景況」を知ることが出来ます。

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