結婚期のライフステージ(人生の段階)の初期にかかる費用として『結婚資金(結納・挙式・新生活の準備の資金)』と『育児費用(基本的生活費・学校教育費・補助学習費)』がありますが、結婚期も中盤にさしかかってきて経済的な収入が安定してくると、自分たちのマイホーム(持ち家)が欲しいという夫婦が増えてくるようです。『子どもの経済的自立の目処(めど)』が立ってからマイホームを買うのか、『子どもが自分の部屋を欲しがる思春期の時期』にマイホームを買うのか、『子どもが就職して以降の時期』にマイホームを買うのかといった『持ち家を取得するタイミング』には個人差があります。
また、月々の支払い額や引越しのしやすさなどを考えて、持ち家を買わずに賃貸のほうが良いという判断をする人もいますし、老年期になってから『終(つい)の住まい』としてバリアフリーのユニバーサルデザインを採用した高齢者でも暮らしやすい家を買おうとする人もいます。結婚してすぐに中古のマンションを賃貸で借りて、子どもが大きくなってから分譲マンションを購入し、子どもが経済的自立をしてからマンションを売却して新築の一戸建てを建てるというような感じで、家計のキャッシュフロー(収支)と貯蓄の資金繰りを考えながら、次々と家(マンション)を買い換えていく夫婦もいるでしょう。
住宅(持ち家)を取得しようとする場合には、『一戸建て(新築・建売・中古)』か『マンション(新築物件の分譲・中古)』のどちらかを購入することになりますが、住宅取得費が高い順番から並べると、『一戸建ての新築(注文住宅)→一戸建ての建売(たてうり)・新築分譲のマンション→一戸建てやマンションの中古物件』となります。ただ、住んでいる場所が都心か地方かによっても価格は変わりますし、住みたいと思う地域の地価にも大きく影響されますので、地方の田舎の新築一戸建てであれば1,000万円前後で買えることもありますし、都心部のマンションであれば中古でも5,000万円するような物件があります。
住宅を購入する場合に利用する人の多い住宅金融公庫の融資実績のデータなどを見ると、平成のデフレ不況の影響もあって、一戸建てやマンションを購入する際の予算は下落傾向にあるようです。住宅金融公庫は平成19年3月31日で廃止となり、平成19年4月からは住宅金融支援機構として再編成されます。
今まであった個人向けの住宅融資の内容は大幅に変更されることになりそうですが、民間金融機関と住宅金融公庫が提携して実現した「長期固定金利」の住宅ローン(証券化ローン)「フラット35」(100~8,000万円まで融資可能)に融資プランが統一される予定です。このフラット35の厳密な貸し手は民間金融機関ですが、その貸し手の持っている債権を住宅金融支援機構が買い取って管理する融資制度になります。また、平成19年度4月からの税制改正により、抵当権設定登記の登録免許税の取扱いが変更されるので、新たに住宅金融支援機構から融資を受ける場合には登録免許税として『融資額の0.1%(0.4%)』の税金を取られるようになります。
新築の一戸建てを購入する人の予算よりも、建売の一戸建てやマンションの物件を購入する人の予算のほうが低下傾向にありましたが、2005年頃からの景気回復を受けて若干購入予算が高くなってきているようです。日経住宅リサーチの記事では、2004年12月に実施したリサーチの結果が掲載されていますが、世帯の年収や住んでいる地域によって住宅取得のための予算が変わってくるものの、マンション購入で検討している予算は平均で“3560万円”ということでした。
3,500万円というのはマンションとしては決して安い金額ではありませんが、都心部で年収1,000万円以上の高額所得者層も含めて算出されているデータなので平均値としては妥当といえるでしょう。地方のマンションであれば、新築の物件であっても1,000万円~2,000万円で十分に優良な物件を探し出すことが可能です。物価が下落するデフレスパイラルの最中(2004年末)に行われたリサーチなので、『住宅ローンの低金利・マンションの販売価格の低下』に注目して住宅を購入したいと真剣に考えている人が多かったと思われますが、一戸建てやマンションを購入する場合には、一括で全額支払えるという余裕のある家計を除いて、『住宅ローンの金利』を検討することが大切になってきます。
販売価格そのものが安いと感じても、金利が高い好景気の時期に住宅(一戸建て・マンション)を購入すれば、必然的に『ローン終了までの支払い総額』がとても大きくなるからです。住宅の購入予算を約3,000万円とすると、多くの人は、自己資金として“約1,000万円”、借入金として“約2,000万円”を予定しているようです。しかし、安心して無理なく住宅ローンを返済していくためには、出来るだけ自己資金の比率を上げて、金利の安い時期を見計らって借入金を少なくしなければなりません。住宅ローンには公的融資と民間融資がありますが、どちらを利用する場合にも、『月々の支払額の減少・ボーナス払いが小さいプラン・ローンの支払期間の短縮』を意識してローンを組むようにしましょう。
住宅を新築・購入する場合には、建設工事費や購入費といった直接費以外にも以下のような間接費がかかってきますので、住宅取得費の予算は絶えず大目に見積もっておいたほうが安心です。
住宅ローンには、公共の金融機関から借りる『公的融資』と民間の金融機関から借りる『民間融資』がありますが、公的融資の代表的なものとして住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の融資(フラット35=長期固定金利融資)があり、それ以外には、年金資金運用基金が行う年金住宅融資や雇用・能力開発機構が行う財形住宅融資といった公的融資があります。サラリーマンの厚生年金や自営業者の国民年金に3年以上加入していて、安定した所得が確保されていれば年金住宅融資を受ける資格があり、一定期間以上財形貯蓄していれば財形住宅融資を受けられます。
住宅取得の民間融資は、民間の銀行や保険会社が行っていますが、一般的に公的融資のほうが融資の審査基準が緩いので借りやすく、長期固定金利で金利上昇のリスクが低いといえます。公的融資の場合にも、二段階方式で金利が変動するものが多いのですが、その場合にも金融市場の金利と連動しておらず『初めから決まった金利』なので住宅ローンの返済プランが立てやすいのです。
住宅ローンの返済方式には、大きく『元利均等返済方式』と『元金均等返済方式』の2つがあります。元利均等返済方式というのは、元金と利息の合計額(毎回の返済額)を同じにする返済方式で、返済の負担は比較的軽いのですが、返済当初は元金がなかなか減らないので『返済総額(支払利息)』が大きくなるというデメリットがあります。元金均等返済方式というのは、毎回の元金の返済額を一定にする返済方式で、初めの返済の負担はやや重いのですが、返済しなければならない元金が確実に減っていくので『返済総額(支払利息)』が小さくなるメリットがあります。
元利均等返済方式の金利(利息)と元金返済額は、以下のように計算できます。
単純に考えると、『元利均等返済方式』よりも『元金均等返済方式』のほうが支払うお金が結果として少なくなるので有利に思えますが、住宅ローンが始まってからの返済金額が数万円ほど大きくなる場合もあり、毎月の負担は確実に重くなります。元金均等返済方式は返済総額が小さいのが魅力ですが、現在の所得水準で『毎月の返済金額』をきちんと支払えるかどうか考えてから決めましょう。また、元利均等返済方式であっても、住宅ローンの途中で返済方法を見直すことで、住宅ローンを早く終わらせたり金利(毎月の返済額)を安くしたりすることができます。住宅ローンを借りっぱなしにしてそのまま返し続けると、殆どの場合にはかなりの損をしますから、定期的に住宅ローンの見直しをして『早期返済・返済額の減少』を目指しましょう。
住宅ローンの見直しの方法には大きく分けて『一部繰上げ返済』と『借換え(かりかえ)』があります。一部繰上げ返済というのはローンの返済途中で『借入元金』を減らすために、返済予定よりも早く返済してしまう方法です。簡単にいえば、まとまったお金を一気に返して元金を大きく減らし『利息の総支払額』を下げる方法です。一部繰上げ返済をする場合には、『毎回の返済額を変えずに、返済期間を短縮する方法(期間短縮型)』と『毎回の返済額を少なくして、返済期間は据え置く方法(返済額圧縮型)』とがあります。利息の総支払額は、返済額を圧縮するよりも返済期間を短縮するほうが少なくなります。
住宅ローンの借換えというのは、民間の金融機関(銀行)から金利の安い『新規の借換えローン』を借り入れて、今まで支払っていた住宅ローンの利息と元金を全額繰上げ返済してしまう方法です。借入利率(金利)の低いローンに借り換えることで、『総支払額』を減少させることが目的ですが、新規ローンを組む場合には『一定の借入経費』が発生するので、『金利差による利益』が『借入経費』よりも大きいかどうかを比較する必要があります。また、新規ローンが変動金利型ローンである場合には、将来の金利上昇リスクがヘッジできないことがあるので十分慎重に検討しましょう。将来、金利が下がるという明確な見通しが立っている場合は別ですが、出来るだけ変動金利型のローンは組まないほうが安全です。