新約聖書の内容構成

キリスト教の聖典である『新約聖書』の編纂は、大体、紀元50年くらいから始められ2世紀の終わり頃にはその原形が完成したと言われている。旧約聖書(ヘブライ語聖書)全39巻の文書から成り立っているが、新約聖書(ギリシア語聖書)は全27巻の文書から成り立っている。

イエスの直弟子の記憶が消滅する前に、新約聖書にイエス・キリストの生涯と言動(福音)が記録され『福音書(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ)』となった。

新約聖書は、コイネーと呼ばれる口語ギリシア語で筆記され、『福音書』以外にも使徒の言動や初期教会の歴史を刻んだ『使徒言行録』や終末思想を孕んだ『ヨハネの黙示録』、使徒の書簡(手紙)などがあり、その成立背景(年代・場所・著者)はそれぞれ異なっている。

新約聖書の大雑把な原形は2世紀頃に出来上がったと推測されるが、その後、多くのキリスト教関連の書物が非正統的な異端の文書として廃棄され、何が正典なのかを巡って喧々諤々の議論と集会が繰り返された。キリスト教聖典である新約聖書の正典化の流れは、旧約聖書を排除しようとしたシノペのマルキオンを異端と認定したところから始まったといわれる。紀元200年頃には、『ムラトリ断片』という現在の新約聖書の構成に近い正典一覧表が作成されていた。

旧約聖書の歴史と教義を無視しようとしたマルキオンの正典化に多くのキリスト教徒が同意しなかったように、新約聖書は旧約聖書の内容を前提にしないと物語的にも契約的にも極めて不完全なものになってしまう。あらゆるキリスト教の信仰に共通する中核的信念は、ナザレのイエスこそがこの世界に生きる人々を救済するメシアであるということである。正典も正典でないものも含めて、新しく正しい生き方の象徴がイエス(=神)であり、イエスこそがこの世界の創造者であり人間の支配者であるという認識が、キリスト教信仰の根底にある揺るぎなき確信なのである。

旧約聖書は、民族と世界を救うメシア出現の期待と約束によって終わっているが、新約聖書はメシアとしてのイエス・キリストの誕生と布教を受けて編纂されたものである。無論、ユダヤ教徒にとっては、イエス・キリストは神であるヤーヴェとは無関係な人間に過ぎないが、キリスト教徒にとっては旧約聖書の歴史と思想は『神との原初的契約』であり、その信仰の正当性にとって欠かすことが出来ないものなのである。

新約聖書の内容構成は、以下のようなものになっている。

新約聖書の内容構成

福音書

1.マタイによる福音書(共観福音書)
2.マルコによる福音書(共観福音書)
3.ルカによる福音書(共観福音書)
4.ヨハネによる福音書(第4福音書)

ルカによる初代教会史
5.使徒行伝

パウロの手紙
6.ローマ人への手紙
7.コリント人への第一の手紙
8.コリント人への第二の手紙
9.ガラテヤ人への手紙
10.エペソ人への手紙
11.ピリピ人への手紙
12.コロサイ人への手紙
13.テッサロニケ人への第一の手紙
14.テッサロニケ人への第二の手紙
15.テモテ人への第一の手紙
16.テモテ人への第二の手紙
17.テトス人への手紙
18.ピレモン人への手紙
19.ヘブル人への手紙

ヤコブの手紙
20.ヤコブの手紙

洗礼準備講義
22.ペテロの第一の手紙
23.ペテロの第二の手紙

ヨハネの手紙
24.ヨハネの第一の手紙
25.ヨハネの第二の手紙

ユダの手紙
26.ユダの手紙

迫害下にある信徒への激励文書
27.ヨハネの黙示録
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