出雲神話2:大国主命の国づくりと因幡の白兎

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オオナムチと因幡の白兎のエピソード

前回の記事では、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治する神話物語を紹介しましたが、そのスサノオとクシナダヒメの6世の孫で葦原中国(日本国)の統治者となるのが大国主命(オオクニヌシノミコト)・大穴牟遲神・大己貴命(オオナムチノミコト)です。大国主命には『八十神』と呼ばれる大勢の兄弟神がいました。その中で末弟だった大国主は兄たちに袋を担がせられて、稲羽(因幡)のヤガミヒメ(八神上売)に求婚する旅へ付き添っていきました。記紀ではその地名は稲羽と記されており、それが後世の因幡(現在の鳥取県)に当たるのかどうかは定かではありませんが、鳥取県にはこの神話にちなんだ白兎海岸(はくとかいがん)という海岸があります。

ヤガミヒメに求婚に行く途中の気多崎(けたのさき)で、皮を剥がれた赤膚の兎(ウサギ)に出会い、兎はその痛みと苦しさのために伏せっていたのですが、兄達の八十神は兎を騙して『海の塩水を浴びて風に当たり、高い山の尾根の上で横になっていれば良くなる』と嘘をつきました。八十神の言葉を信じて、海水に身を浸して風に吹かれていたウサギは余りの激痛に泣き叫んで伏せっていましたが、そこに最後から荷物を担いでやってきていたオオナムチ(後の大国主命)が通りかかります。ウサギは『淤岐嶋(おきのしま)からこの稲羽の地に渡ろうと思い、ワニたちにワニの同族の数を数えてウサギの数と比べて上げるといって騙し、ワニの背の上を飛んで渡ってきたのですが、最後の一匹の前で「海を渡りたくてお前たちを騙したんだよ」と言うと、怒ったワニに捕まえられて皮を剥がれてしまったのです』と、皮を剥がれてしまった事情を説明しました。更に、八十神に騙されて塩水を浴びて苦しんでいることを語り、オオナムチに助けてほしいとお願いしました。

ウサギの苦しみと痛みを癒してあげようと思ったオオナムチは、『今すぐに水門に行って水で身体を洗い、蝦蟇(ガマ)の油の上を転げまわれば、炎症を起こした皮膚は回復して元通りになるだろう』と正しい治療法を教えて上げました。オオナムチの言った通りにすると、ウサギの赤くなっていた皮膚は元通りになり剥がれた皮と毛も回復して、『稲羽の白兎(いなばのしろうさぎ)』と呼ばれるように白い毛を持ったウサギの姿になりました。すっかり良くなった因幡(稲羽)の白兎は、『兄の八十神はヤガミヒメを決して得ることができない。袋を背負って後から行ったとしても、オオナムチ様がヤガミヒメと結婚することになるでしょう』という予言の言葉を述べました。

果たしてその白兎の予言の通りに、オオナムチがヤガミヒメと結婚することになったのですが、それに激怒した兄の八十神たちは弟・オオナムチに復讐を企てて、イノシシと偽った焼けた大石を転がしてオオナムチを焼き殺してしまいました。オオナムチの母親(一説にはクシナダヒメ)の願いで、カミムスビが蘇生の特殊能力を持つ赤貝・蛤(はまぐり)の女神を遣わして、オオナムチを生き返らせますが、八十神の兄は再び大木の割れ目の中にオオナムチを押し込んで圧殺します。母のクシナダヒメはもう一度オオナムチを生き返らせて、紀伊のイタケルの元に逃げさせますが、八十神の兄の追撃が激しいので、夫のスサノオが住んでいる『根の国(黄泉の国)』へと逃がしました。

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大国主命と少名毘古那神の『国づくり』

オオナムチ(大国主命)は根の国へと行ったのですが、スサノオはオオナムチを助けてはくれず、逆に『蛇の室(むろや)・ムカデの室・蜂の室』など恐ろしい爬虫類や毒虫のいる部屋にオオナムチを閉じ込めました。オオナムチは婚約者であるスサノオの娘のスセリビメ(須勢理毘売)から不思議な防御力を持つ『比礼(布)』を貰っていたので、何とか危険な部屋から自分を守ることができました。スサノオは野原に矢を射て、その矢をオオナムチに探して来いと命じて、野原に放火し焼き殺そうとしますが、ネズミの助言で地下の穴倉に隠れて一命を取り留めます。

スサノオは更に自分の頭の中にいる虱(しらみ)をオオナムチに取らせるのですが、スサノオの髪にいたのは虱ではなくムカデであり、オオナムチはスセリビメがくれた椋の実と赤土を口に含んで吐き出し、あたかもムカデを噛み潰して処理しているように見せかけました。健気なオオナムチの作業に満足したスサノオが居眠りをしだすと、オオナムチはスサノオの髪を垂木(たるき)に結びつけて、妻のスセリビメを連れて『生大刀(いくたち)・生弓矢(いくゆみや)・天の詔琴(あめののりごと)』といった宝物を持って逃げ出しました。生大刀・生弓矢というのは蘇生の特殊能力を持つ神々の武具であり、天の詔琴というのは詔勅(権威ある命令)を出すときに奏でる神器でした。スサノオは結び付けられた髪をほどして追いかけてきましたが、根の国との国境に来た時に二人の結婚を遂に認めます。

宝物の武具を持って葦原中国(日本国)に帰った大国主命(オオナムチ)は、兄の八十神を打ち倒してこの国の統治者(主人)となり、ウツシクニダマノカミとなって宇迦(うか)の山麓に拠点を構え、国づくりの作業を始めました。大国主命が出雲の美保岬にいた時、海の沖合いから天の羅摩船(あめのかがみのふね)に乗って、鵝(蛾)の皮を来た小さな神がやってきたが、誰もこの神の名前を知らず、この神に名前を尋ねても答えがありませんでした。ヒキガエルの多邇具久(タニグク)に神の名前を質問すると、『博識なカカシの久延毘古(クエビコ)ならきっと知っているでしょう』と言ったので、クエビコに尋ねると『その小さな神は神産巣日神(カミムスビ)の子の少名毘古那神(スクナビコナ)である』と答えました。

カミムスビが、大国主命にスクナビコナと義兄弟になって国づくりをするように言ったので、大国主はスクナビコナと協力して葦原中国の国づくりを進めていきました。しかし、その後にスクナビコナは粟の茎に弾き飛ばされてしまい、常世国へと去っていってしまったのです。一人でどのようにして国づくりを完成させれば良いのかと大国主命が孤独に悩んでいると、再び海原を照らしながら近づいてくる神があり、幸魂奇魂(さきみたまくしみたま)というその神が『私を丁重に大和の地に祀れば、国づくりが順調に進む』というので、大和の御諸山(三輪山)に祀りました。この三輪山に祭祀された幸魂奇魂という不思議な神が、大物主神(おおものぬしのかみ)となりました。

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