医学検査の種類と各検査の目的

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スクリーニングの集団検査・検査項目が豊富な人間ドック・疾病診断の為の検診

身体の健康状態や病気・異常の有無を調べる為の医学的な検査を大きく分けると、『集団健診(健康診断)・人間ドック・検診(診断の為の検査)』があります。『健康診断・人間ドック・診断治療の為の検診』は、いずれも日常生活における健康管理や体調維持の為に重要な検査ですが、健康診断は身体機能の基本的検査を行うものであり、人間ドックは健康診断よりも詳細で総合的な検査を行うものであるという違いがあります。

ここで分類している『診断の為の検診』というのは、乳ガン検診や胃潰瘍の内視鏡検査など特定疾患の発病の有無を調べる為の医学検査のことを指していて、調子の悪い部分や心配している病気がある場合などに受ける検査のことです。

学校や企業で実施される健康診断(集団検査)は、集団成員の個体差や一人一人の体調などを考慮する時間がありませんから、一斉に同じ内容の検査を実施して、検査結果の数値に異常が見られる人を選別することを目的にしています。

ツベルクリン反応検査とBCG(Bacillus Calmette‐Guerin)

乳幼児期や小学生の時に多くの人が経験したことのある『ツベルクリン反応検査』はスクリーニング(選別・ふるい分け)のための集団検査(健康診断)であり、その検査結果(陰性反応)によって判子注射(スタンプ注射)という通称で知られている『BCGのワクチン接種』を行っていました。BCG(Bacillus Calmette‐Guerin)というのは、パスツール研究所のカルメットとゲランが1921年に培養した牛型結核菌の弱毒生菌ワクチン株のことであり、人間に対する有害な病原性を失わせた結核のワクチンです。

BCGのワクチン接種による結核予防効果に疑問を差し挟む識者の意見や統計指標もありますが、ここでは、医学検査の種類を簡単に説明しているだけなので各ワクチンの有効性と副作用の問題については深入りしません。ツベルクリン反応検査というのは、結核感染の既往の有無を調べる為の検査であり、陽性であれば過去(あるいは現在)に結核菌に感染したことを示し、陰性であれば今まで結核菌の感染の既往がないことを示します。現在では、ツベルクリン反応検査を省略して、乳幼児にBCG接種が行われることもあります。

反応が陽性の場合には結核菌感染の既往があり、免疫がある一方で発症のリスク(生涯発病率5%)もあるとされます。陽性反応が強く出た人は、胸部X線撮影で結核検査を勧められることもあります。反応が陰性の場合には、結核菌に対する免疫がないと考えられますので、48時間以内にBCGの予防接種を打つことが推奨されますが、最近の疫学研究ではBCGを打つ予防のメリットは余り高くないとするものもあります。今までの日本の結核予防対策では、陰性反応の人にBCG接種をして免疫を高める予防法が重視されてきましたが、乳幼児期にBCG接種をすることを義務付けた国・地域ではほぼ全員がツベルクリンに陽性反応を示すので結核患者の鑑別診断が難しくなるという問題点もあります。

ツベルクリンの話が長くなりましたが、学校や企業・病院で集団を対象として行われる個体差を考慮しない同一内容の検査(健康診断)の目的は、病気の可能性のある個人を健康な個人から篩い分ける『スクリーニング(選別)』にあります。定期的に行われる集団検査(健康診断)のメリットは、苦痛や不調という自覚症状のない潜在的な患者を早期に発見でき、病気が悪化したり慢性化する前に早期治療を受けられるという事です。

ウイルス・細菌の感染や機能の障害、器官の病変を見つけ出す大まかな健康診断を行って、そこで異常な検査結果(測定値)が出れば、『詳細な再検査(二次検査・精密検査)』を改めて行い本格的な診断・治療につなげていくことが出来ます。

医療機関で比較的長い時間を掛けて行われる人間ドックの特徴は、半ば義務的に受けなければならない健康診断(会社や学校の集団検査)と違って、自分から希望して積極的に主体的に受ける医学健診であるということです。人間ドックは、検査項目が比較的少ないものでも、5時間以上はかかり、身体各器官の全てを細かく検査するような人間ドックの場合には病院に宿泊しながら行うこともあります。

人間ドックは、一律的な集団検査よりも検査項目が多く、詳細で精密な検査を行うという特徴があります。また、同一の医療検査機関で定期的に人間ドックを受けると、保存した検査記録をもとに検査値の比較検討が出来るので病気の早期発見や体調の異常発見を効率的に行うことが出来ます。そういった多くのメリットがある一方で、『検査時間が長い・健康保険が効かず検査費用が高い・高齢者には体力的にきつい』といったデメリットもあります。

人間ドックは、小さくない時間的・経済的なコストを支払わなければなりませんが、医師から詳細な検査項目の説明と生活習慣改善のアドバイスをして貰えるという健康管理面での大きなメリットがあります。自分の健康に関して漠然とした心配や不安がある人の場合は、定期的に人間ドックのような総合的検査を受けることで病気でなく健康であることを確認できます。しっかりとした詳細な検査と丁寧な医師の説明を必要とするかどうか、費用対効果のバランスをどう考えるかによって人間ドックや精密検査を受けるべきかどうか判断するといいと思います。

健康診断(集団検査)や人間ドックはどちらかというと身体各部を全体的(マクロ)な観点から検査する手法であり、ガン検診や脳の画像診断検査など『各種の検診』は身体各部を部分的(ミクロ)な観点から検査する手法ということになります。食事をする前の空腹時に激しい胃痛を生じる人が、胃ガンや胃潰瘍を心配して胃・十二指腸の内視鏡検査を受ける場合や女性で乳房に異常なしこりや張りを感じて乳ガンに特化したマンモグラフィなどの検査を受ける場合が、『診断治療を目的とする検診』に該当します。人間ドックにも、有料のオプションで、こういったガンや心疾患、乳房などの詳細な検診が用意されていることが殆どです。

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医学検査の目的としての『早期発見・早期治療』と一般的な検査手順

上述したような医学検査で、スクリーニングされて再検査の必要ありと判定されても、数値の異常や病気の影像が発見されても悲観的に落ち込んで苦悩すべきではなく、『早期発見されたことで治癒の可能性が高くなったことを肯定的に考えるべき』だと思います。現代医療の知識と技術の進歩発展は目覚ましく、完全には治せない慢性疾患や特定疾患はまだ多くあるものの、大抵の身体疾患は早期に治療に取り掛かれば治癒可能であるか悪化を抑制することが出来ます。

特に、高血圧や高脂血症、メタボリック・シンドローム、糖尿病、動脈硬化による心疾患など生活習慣病の場合には、検査をして早期発見することで合併症や重症化を生活習慣の改善や適切な投薬によって防ぐ事が出来ます。心理臨床における肯定的な認知の効果を考えても、医学検査の異常値による病気の発見は『消極的な落胆や悲観的な病気への絶望』を導くものではなく、『積極的な治療や意欲的な病気との対決』につなげるべきものなのです。

医学検査は、身体の健康と病気の境界、器官の機能の正常性と異常性の境目を判別するものですが、特定疾患の検診や精密検査ではない健康診断・人間ドックの場合には、健康な個人の正常な機能(基準値)を前提として検査を行っていきます。また、医学検査の検査数値が正常圏内の基準値であっても、暴飲暴食や徹夜、運動不足、過度の喫煙などの生活習慣の乱れによって異常値へと変化することもあります。その時々の検査結果に一喜一憂するのではなく、規則正しい生活習慣を形成して精神的ストレスを緩和することで健康管理に努めることが大切です。

一般的に、医療機関を受診した体調不良を訴える患者に対する医学検査は、病名診断と治療方針決定の為に行われますが、検査手順は次のような感じで行われることになります。

『患者の問診→視診・聴診・打診といった診察→検査項目・検査方法の検討→スクリーニング検査(第一次検査)→スクリーニングされた患者の確定診断のための精密検査(第二次検査)→病名の確定診断と治療方針の決定、薬物や手術などによる治療の開始』
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