白血球数(WBC)・血小板数(PLT)・赤血球沈降速度(ESR)

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白血球数(WBC)と白血球の免疫機能

細菌やウイルスによる感染症の有無や免疫能の程度、自己免疫疾患を診断するために行う血液一般検査が、血液1μl中の白血球数を測定する『白血球数(WBC)の検査』です。白血球(white blood cell, leukocyte)は、赤血球と同様に骨髄の造血幹細胞に由来する血球であり、外部から侵入した異物(ウイルス・細菌・有害物)を認識して攻撃(排除)する免疫能を担当しています。

白血球は、体内に侵入した病原菌を捕食して無毒化する好中球食作用に代表される免疫機能を持っていて、体内に細菌・ウイルスなどの有害な異物が侵入すると骨髄の造血幹細胞で白血球が増産されます。白血球は大きさが7~25μmで赤血球(約120日)と比較するとその寿命が短く、5日程度で破壊されます。

白血球は、自己に属する細胞・組織・血液成分と自己に属さない異物(細菌やウイルス)を識別して排除する免疫能を持っていますので、白血球は『自己と非自己の境界線』を認識する防衛メカニズム(抵抗力・免疫力)の重要な一翼を担っているといえます。白血球の種類を大きく分けると『顆粒球・単球・リンパ球』に分けることが出来ます。それぞれが白血球に占める割合は、『好中球:40%~60%程度、好酸球:1%~5%、好塩基球:0~2%、単球:2%~7%、リンパ球:30%~40%』となっています。

上記のように白血球を『好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球』の5つの分画(種類)に分けて、その割合を調べる検査を『白血球分画(血液像)』といいます。白血球に分類される血球成分(免疫細胞)は、それぞれ独自の機能や特性をもっていますから、基準値の割合から大きく外れると様々な疾患(感染症・貧血性疾患や敗血症など血液障害・免疫疾患)の徴候である場合があります。

顆粒球には、ギムザ染色の染まり方の違いによって区別される好中球(neutrophil)・好酸球(eosinophil)・好塩基球(basophil)があります。好中球は、細菌やウイルスを取り込んで無毒化する食作用(貪食能力)を持っていますが、好酸球はそれに比べるとやや弱い食作用を持っています。好塩基球についてはアレルギー反応に関与していると言われていますが、具体的に免疫能のどういった役割を果たしているかがまだ十分に明らかにされていない状態です。顆粒球のうち、最も大きな割合を占めるのは好中球で、白血球の40~60%が好中球となっています。

リンパ球は、免疫機能の中核を担う免疫細胞で、抗原抗体反応でウイルスや細菌などの異物(抗原)を攻撃するための抗体を産生する特徴を持っています。リンパ球には、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、T細胞(ヘルパーT細胞・キラーT細胞・サプレッサーT細胞・レギュラトリーT細胞)、B細胞、マスト細胞などの種類があり、それぞれ抗原抗体反応で身体を感染症から守る為の役割を分担しています。

単球(monocyte)も顆粒球と同様に、ウイルスや細菌といった異物を捕獲して消化(無毒化)できる食作用を持っています。単球は免疫反応の開始に重要な役割を果たしていて、血管外の場所にいる単球はマクロファージ(大食細胞)と呼ばれます。感染症などに抵抗するために、単球は消化した異物を細胞表面に付着して抗原抗体反応をスタートさせる役目を持っています。また、アメーバ運動で自律的に運動することが出来る特徴を持っています。単球は、顆粒球やリンパ球よりも大きな免疫細胞です。

白血球の数は喫煙・食事・運動・精神的ストレス・入浴・怪我(外傷・火傷)などの影響を受けて変動しますが、安静時における成人男女の基準値は『3200~8500個/μl』となっています。血液中の白血球数を測定することで、身体の抵抗力(免疫力)の強さや自己免疫疾患や感染症の有無を診断することが出来ます。

白血球数が異常に増加している時には、肺炎・膵炎・虫垂炎・慢性気管支炎・扁桃炎・腎炎などの感染症による炎症疾患が考えられます。白血球数の増加はそういった感染症以外にも、骨髄の造血幹細胞の異常による白血病(慢性・急性)でも起こってきますので、骨髄の精密検査で確定診断を行う必要があります。

反対に、白血球の数が異常に減少している場合には、骨髄の造血機能の障害や脾臓の白血球破壊作用の異常が考えられ、疾患としては再生不良性貧血や脾臓機能亢進症が疑われます。それ以外にも、抗がん剤治療や悪性新生物(がん)に対する放射線治療によって、白血球の数が著しく減少することが考えられます。白血球は人間の身体を外部の異物から守るという免疫機能を発揮していますから、白血球の数が極端に少なくなると抵抗力が落ちて感染症に罹患しやすくなります。1000個/μl以下にまで落ち込んでしまうと、敗血症のリスクが高くなります。

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血小板数(PLT)

血液成分である血小板は、血液の凝固作用を持っていて外傷などで出血した時に止血の働きをします。血球は全て骨髄の造血幹細胞で作られるので、血小板も骨髄で産生されます。血小板は、骨髄の“成熟した巨核球”の細胞質を材料として作られる成分で核を持っていません。

血小板の大きさは約1~4μmで小さく、寿命は3~10日で脾臓で破壊されることになります。血液一般検査における血小板数の基準値は、『14.0万~38.0万個/μl』で、10万個以下になると止血能力が低下するとされています。5万個以下になると些細な衝撃や弾みで鼻の粘膜や歯茎の粘膜から出血が起こるようになり、肘や膝といった打ちつけやすい部分に紫斑が出来やすくなります。3万個以下で尿に血液が混じる血尿が出たり、内臓から出血が起こる危険があり、2万個以下では出血多量による死亡リスクが高くなります。

血小板数が異常に減少する代表的な病気には、白血病や骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、肝硬変などがありますが、原因不明の血小板減少性紫斑病などによっても減少します。反対に、血小板が多くなりすぎると血栓が生じやすくなりますが、70万個以上になると血小板血症の可能性が高くなり、脳梗塞や心筋梗塞を警戒する必要が出てきます。血小板数の異常が見られる場合には、専門医による精密検査による確定診断と医学的治療が必要になってきますが、血小板の数が少ない場合には止血能力が低下しますので、怪我や歯磨き、髭剃りなどで出血しないように日常生活で注意しなければなりません。

赤血球沈降速度(ESR)

赤血球沈降速度(ESR)は、血液に抗凝固剤を加えて試験管に入れ、赤血球が沈む速度を計測する検査です。赤血球が1時間の間に何mm沈んだかによって結果を判定しますが、基準値は『男性:1~10mm, 女性:2~15mm』で、20mm以上になると異常値とされ更なる精密検査(二次検査)が行われます。

赤血球沈降速度は病気のスクリーニング(ふるいわけの選別)のために行われる検査で、慢性気管支炎や肺結核などの感染症や心筋梗塞や関節リウマチなどの疾患で異常値を示してきます。50mm以上になると、悪性新生物(ガン)や肺炎などの深刻な疾患がある可能性が出てきますが、100mm以上の高い数値を示す場合には、マクログロブリン血症などの血液疾患や多発性骨髄腫などのガン、内臓破裂や潰瘍の悪化による腹膜炎などが疑われてきます。

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