酸性フォスファターゼ(ACP)・アルカリ性フォスファターゼ(ALP)・アミラーゼ(AMY)

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酸性フォスファターゼ(ACP)と前立腺がんの検査

酸性フォスファターゼ(ACP)は、前立腺に最も多く含まれているリン酸化合物の分解酵素で、前立腺以外にも肝臓や脾臓をはじめとする身体各部に存在する酵素です。リン酸化合物を分解する酵素である酸性フォスファターゼ(ACP)は酸性の環境で活発に働くのですが、器官(臓器)や細胞が損傷すると血液中に漏出してきます。前立腺に存在する酸性フォスファターゼ(ACP)は、特に前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)と呼ばれており、前立腺がんの腫瘍マーカー(腫瘍の存在を示す目印)として活用されています。

その為、酸性フォスファターゼ(ACP)の血清中の分量を測定することで、前立腺がんの早期発見に役立てることができますが、ACPには男女差があり、男性のほうが女性よりも高い数値を示すことが多くなっています。酸性フォスファターゼ(ACP)は、年齢・性別・環境条件・物理的刺激などによって基準値が大きく変化するのですが、前立腺にあるPAP以外のACPでは『新生児が成人の二倍以上のACP』を持っています。反対に、前立腺にあるPAPでは、年齢が高くなって成人するまで比例的にその分量が増えていきます。ACPの測定法は複数あるのですが、もっともポピュラーなキンド・キング法による基準値は『0~4.7KA単位』とされています。

温度や血液凝固などの環境条件による影響は身体各部のACPでは顕著に見られますが、前立腺にあるPAPのほうは温度や血液状態の影響を余り受けません。そのため、ACPの測定によって前立腺疾患の大まかなスクリーニングを行い、その後にPAPの測定とPSAやγ‐Smの検査をして鑑別診断を下すといった使い方が為されています。ACPやPAPの数値が高くなると前立腺がんのリスクが格段に上がるのですが、PAPが『3.0~4.9ng/ml以上』になってくると6割以上の人が前立腺がんと診断されることになります。前立腺がんでない場合でも、PAPの数値が高ければ前立腺肥大がある可能性はかなり高くなり、10ng/ml以上になってくると前立腺がんの骨や周辺組織への転移が心配されることになります。

ACPの数値が上昇する原因としては、前立腺がん以外にも、骨髄腫・骨肉腫など骨のがん、肝がん・肝硬変など肝疾患、白血病・ホジキン病などの造血障害を考えることができます。レントゲン撮影や糖尿病のインシュリン投与によってもACPが若干高くなることがあります。

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アルカリ性フォスファターゼ(ALP)

アルカリ性フォスファターゼ(ALP)とは、酸性フォスファターゼ(ACP)と同じようなリン酸化合物の分解酵素ですが、ALPは『pH10付近のアルカリ性』で活発に機能し、ACPは『pH5付近の酸性』で活発に機能するという特徴があります。アルカリ性フォスファターゼ(ALP)は、肝臓・腎臓・骨・小腸をはじめとする身体各部の組織・細胞に含まれていますが、ALPは胆汁中に排出される酵素であり胆汁経路に何らかの障害が起こると、ALPの測定値は急速に高くなります。新しく形成される骨の中にもALPは多く含まれているので、骨へのがん転移の検査に用いられたり、子どもの骨の成長状態を調べたりする目的でALP値が測定されることもあります。

アルカリ性フォスファターゼ(ALP)の数値は安定しておらず、検査の測定法や血液型(B型・O型はALPが多い)の違いによってその基準値もかなり大きく変化してきます。ALPの男女差では男性のほうが女性よりも高い数値を示しますが、妊娠後期の女性では胎盤からのALP排出によって、普段の数倍以上のALP値になってきます。アルカリ性フォスファターゼ(ALP)には、アミノ酸配列が異なるアイソザイムが6種類存在していて、ALP1~ALP6までのアイソザイムの増加量を調べることで、『どの器官・臓器に疾患があるのか』を特定していくことができます。ALP1とALP2は主に肝機能障害と胆道の病変に関係しており、ALP3は骨の疾患や副甲状腺機能亢進症、ALP4は肺疾患や妊娠の問題、膵臓疾患、ALP5は腎不全や肝機能障害、小腸の疾患、ALP6は肝機能障害や潰瘍性大腸炎と関係しているとされています。骨の疾患には、骨軟化症やくる病、骨の形成不全などが考えられます。

ALPの数値が極端に低い場合には、甲状腺機能低下症や腎炎、壊血病などのリスクが考えられますが、ALP単独では確定診断を下すことは難しく、GOP・GPT・γ‐GTPなどと合わせて総合的な観点から診断を行っていきます。

アミラーゼ(AMY)

アミラーゼは、炭水化物やグリコーゲンといった多糖類を分解するもっともポピュラーな消化酵素の一つで、唾液腺(唾液)や膵臓(膵液)に多く含まれています。膵臓に何らかの異常や損傷が起こると血液や尿にアミラーゼが漏出してくるので、膵臓の病気のスクリーニング検査として『血中・尿中のアミラーゼの量』を利用することができます。膵臓は肝臓と並ぶ『沈黙の臓器』と呼ばれ、重篤な疾患が発症しても早期発見をすることが難しいのですが、血液と尿に含まれるアミラーゼを測定することで膵炎やすい臓がんの早期発見に役立てることができます。血液中のアミラーゼの数値は時間による変化が大きいですが、尿中のアミラーゼの数値は安定しているので、血液と尿の両方でアミラーゼを測定していきます。

『血清アミラーゼの数値』と『尿アミラーゼの数値』のバランスからどんな病気を発症しているのかを推測することができますが、酵素法という測定法を用いた場合のアミラーゼの基準値は『血清アミラーゼ:60~200IU/l,尿アミラーゼ:160~960IU/l』となっていて個人差が大きくなっています。血清アミラーゼと尿アミラーゼの両方が高い数値の場合には、急性膵炎・慢性膵炎・膵臓がんなどの膵臓疾患が考えられますし、それ以外にも、胃・十二指腸潰瘍あるいは穿孔などの消化器疾患の可能性があります。血清アミラーゼの数値だけが高い場合には、マクロアミラーゼ血症や腎障害の可能性が考えられます。両方の数値が極端に低い場合には、高度の糖尿病や重症の膵臓がんなどの可能性が出てきます。アミラーゼには、膵臓から分泌される『P型アミラーゼ』と唾液腺から分泌される『S型アミラーゼ』という二つのアイソザイムが存在しており、これらの違いからどこの器官(臓器)に病気が起きているのかを大まかに判断することもできます。

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