コリンエステラーゼ(ChE)・クレアチンキナーゼ(CK)・ロイシン・アミノペプチターゼ(LAP)

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コリンエステラーゼ(ChE)と肝機能障害

コリンエステラーゼ(ChE)は、コリンエステルというアミノ酸をコリンと酢酸に分解する酵素であり、大きく『特異的ChE』『非特異的ChE』とに分類することができます。特異的ChEは、神経伝達活動に関与するコリンエステラーゼで、神経・筋肉・赤血球に多く含まれています。非特異的ChEは、特異的ChEよりも多くの種類のコリンエステルとコリンを含まないエステルを分解する酵素で、血清・肝臓・膵臓・腸に多く含まれています。

肝機能障害の早期発見を目的とするコリンエステラーゼ検査は、非特異的ChEを対象にして行われますが、非特異的ChEの大部分は肝臓で産生されます。コリンエステラーゼ検査は、肝機能検査では最も重要な検査の一つですが、A/G比(アルブミン・グロブリン比)と同時に測定することで、急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変・ネフローゼ症候群の早期発見に役立てることができます。コリンエステラーゼの正常な基準値は、個人差が大きく検査法によっても変わってくるのですが、P‐ヒドロキシベンゾイルコリン基質法では『186-490U/l』が基準値とされています。コリンエステラーゼの数値は個人差が大きいので、他人の数値と比較して大きいのか小さいのかを考えることには意味がなく、『過去の測定データ・既往歴』を参考にしながらChEの高低を判断していきます。

男女差は、男性のほうが女性よりもChEの数値が大きいですが、妊娠したり生理になった時には女性のChEの数値は大きく上がります。睡眠導入薬や麻酔薬、カフェインを服用していると、ChE値は下がりますが、臨床的診断とChEの数値の相関を大まかに言うと、『高値で腎臓障害の可能性・低値で肝障害の可能性』ということになります。ChEは肝臓で生産されるので、肝細胞が破壊されたり減少したりすると、ChEの数値は大幅に低下することになるのです。有機リン系の農薬などを大量に吸い込んでしまった場合などにも、ChEの機能が大幅に抑制されるのでChE値は低下します。ChEの数値が過度に大きくなっている時には、肝臓でつくられたChEを排泄する腎機能に何らかの障害が起こっていることになり、エフローゼ症候群や腎炎、甲状腺機能亢進症などを疑うことができます。

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クレアチンキナーゼ(CK)と心疾患・筋疾患

クレアチンキナーゼ(CK)とは、収縮‐弛緩の筋肉運動に必要なエネルギーを代謝する酵素であり、心筋・骨格筋・脳に多く存在しています。その一方で、肝臓・腎臓・膵臓・血球には含まれていないので、血液中のクレアチンキナーゼ(CK)を測定することで、筋肉の疾患や脳疾患、心筋梗塞などの診断をかなり的確に行うことができます。

クレアチンキナーゼは骨格筋の部位で生み出され筋肉量に応じて増減しますが、男女差では筋肉の多い男性のほうが女性よりも多くクレアチンキナーゼを持っています。女性は妊娠中と出産前後にクレアチンキナーゼの数値が高まりますが、男女ともに激しい運動を行った後では数値が高くなります。アルコールの飲用によってもクレアチンキナーゼは上昇し、筋肉や血管への注射、心臓・脳の手術といった外部刺激によっても数値が高くなります。

クレアチンキナーゼの数値が基準値よりも大幅に上昇した場合には、心筋梗塞や筋ジストロフィーを発症している恐れがあり、それ以外にも狭心症や筋炎、神経性筋萎縮症、甲状腺機能低下症などの可能性があります。反対に、基準値よりも低下した場合には、妊娠初期や甲状腺機能亢進症、高ビリルビン血症の可能性があります。クレアチンキナーゼには『CK-MM, CK-MB, CK-BB』の3種類のアイソザイムが確認されており、それぞれのアイソザイムの存在部位の違いによって、『CK-MM=筋疾患,CK-MB=心疾患,CK-BB=脳疾患』などの鑑別的な判断を下すことができます。

ロイシン・アミノペプチターゼ(LAP)

ロイシン・アミノペプチターゼ(LAP)は、ペプチドからロイシンを切り離す作用を持つ酵素であり、肝臓・膵臓・小腸・胆嚢(胆汁)などに多く含まれていて、それ以外にも身体各部の組織・細胞に存在しています。ロイシン・アミノペプチターゼ(LAP)は肝臓や胆道に病変が発生すると血液中に漏出してくるので、一般的に肝機能障害や胆管の疾患の早期発見を目的としてLAPの量を測定しています。胆汁の中にLAPは非常に多く含まれているので、胆道が閉塞したり炎症を起こしたりすると『胆汁うっ滞』が起こってLAPの数値は急速に上昇することになります。

筋運動と関連するクレアチンキナーゼと違って、ロイシン・アミノペプチターゼ(LAP)のほうは男女差や食事・運動の影響をほとんど受けませんが、アルコールや副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)による影響を受けることがあります。LAPの上昇は急性肝炎や慢性肝炎の可能性を感じさせますが、LAPの数値が異常に高くなっている時には『肝臓がん・すい臓がん・ウイルス性肝炎・胆道がん』といった悪性新生物(がん)を発症していることも考えられます。女性の場合には女性特有の器官である子宮や卵巣のがんによってLAPが急速に上昇しますが、妊娠中毒症の場合には反対にLAPの値が低下します。ロイシン・アミノペプチターゼ(LAP)検査は、肝臓や胆道の異常・疾患の早期発見には便利な検査ですが、LAPは漠然とした肝疾患の有無を判断するだけなのでLAPだけで確定診断をすることはできません。GOP・GPT・γ‐GTPなど他の肝機能検査(血液生化学検査)を行い、更に必要であれば、CTスキャンなどの画像診断検査や腹部超音波検査、胆管・胆嚢検査を実施していくことになります。

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