国会(議会)と議院内閣制・大統領制

国会・議会とは何か?
議院内閣制と大統領制

国会・議会とは何か?

『国会』とは、日本国において立法府の役割を果たす『議会』のことです。議会というのは、複数の対等な権限を持つメンバー(議員)が集まって話し合う『政府機関』のことですが、議会を構成するメンバーは主権者(有権者)である国民の『選挙』によって選ばれる必要があります。日本の国会を含む議会は、立法を中心とする国政の重要事項に対する『決定権』を持ち、国民の選挙によって選ばれた議員によって構成される『合議制機関』です。平等な権限を持った複数のメンバーによって構成される政府機関を『合議制機関』と呼び、首相(内閣総理大臣)や閣僚(国務大臣)など定員が“1名”の政府機関を『独任制機関』といいます。

日本国憲法では『国会』の権限や組織、議員の任期などについて、『第四章 国会(第41条〜第64条)』で規定しており、第41条では『国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である』として国会を日本で唯一の立法機関として位置づけています。日本が衆議院と参議院の二院制(両院制)を採用する根拠として、第42条に『国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する』とあり、衆議院議員の任期4年と参議院議員の任期6年(3年ごとに半数を改選)については憲法の第45条(衆議院議員)と第46条(参議院議員)に記されています。

『国会』は国権の最高機関として立法権を掌握していますが、憲法第65条の規定により行政権は『内閣』に所属しています。第66条に、『内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する』とあるように、内閣は1名の内閣総理大臣(首相)と規定数の国務大臣(閣僚)によって構成されています。第74条の規定により、国会によって議決された『法律』及び政府(内閣)が出す『政令』は、『国務大臣の署名+内閣総理大臣の連署』によって公的な有効性を持つことになります。首相を代表とする『内閣』は閣議によって運営される合議制の『最高行政機関』であり、行政委員会(人事院・会計検査院・国家公安委員会・公正取引委員会……etc)など一部の例外を除いて、ほぼすべての省庁及び公的機関(政府機関・行政法人)を管理・監督する権限を持っています。

議院内閣制と大統領制

行政の最高機関が議会(国会)の信任を受けた『内閣』である政治体制を『議院内閣制』と呼びます。日本の議院内閣制では第69条にあるように、衆議院で『内閣不信任決議案』が可決されたり『内閣信任決議案』が否決された時には、10日以内に衆議院を解散するか、内閣が自ら総辞職をしなければならないと定められています。議院内閣制とは、政府(内閣)が『議会(二院制の場合は主に下院=衆議院)』の信任を失った時に、その行政権の正当性を失うという仕組みであり、内閣は連帯責任による『議会(衆議院)の解散権』を持っています。

議院内閣制では、国会(衆議院)と内閣との間には『抑制と均衡』が働く相互関係が成り立ちますが、『国会の多数派(過半数)』を形成する政党・連立与党の党首(代表)が必然的に首相(内閣総理大臣)に指名されることになるため、『大統領制』と比較すると『立法と行政の分立』が不完全であるという特徴を持ちます。議院内閣制では、衆議院(議会)の多数派(与党)の支持を受けている内閣が衆議院に対して責任を持ちますが、『立法最高機関である議会(国会)』『行政最高機関である内閣』とは密接につながっており、立法と行政の分立は必ずしも明確ではありません。

一方で、アメリカやラテンアメリカ諸国に代表される『大統領制』の国の場合には、『議会(議員)による選挙』ではなく『国民による直接選挙』によって、行政最高機関である大統領が選出され、大統領によって非議員の閣僚(国務大臣)が任命されます。大統領制の場合には、議会多数派の支持を受けた『内閣』という合議制が存在しないので、大統領は議会(下院)に対して責任を持たず、『大統領の政策・主張』と『議会の決議』が対立することがあります。議会多数派によって内閣が信任されている議院内閣制の場合には、『内閣・首相の政策方針』『議会の決議』が対立する可能性がまず考えられず、通常、大統領制よりも安定した政権運営が為されやすいとされています。

行政の最高機関である大統領は『立法権』を持たないので、法案提出権がありませんが、アメリカ大統領のように法案拒否権を持っていることが多く、大統領個人に強大な権限が集中します。大統領制という場合には、通常、首相や内閣が存在せず、国民から選出された大統領個人が行政最高機関として実質的な行政の権限を掌握しています。その為、名目上・儀礼上の国家元首としての『大統領』がいるだけで、『首相』が実際の行政権を掌握しているドイツやイタリアは、『大統領制』の国には分類されず『議院内閣制』の国に分類されます。

議院内閣制には、君主・大統領などの『形式的・儀礼的な国家元首』が内閣を任免する実質的権限を持っていない『一元型議院内閣制』と、君主・大統領が内閣を任免するだけの実質的権限を持っている『二元型議院内閣制』との二種類があります。『一元型議院内閣制』というのは、内閣が議会だけに責任を持つ政治体制で、内閣は国家元首(君主・大統領)には責任を持ちません。『二元型議院内閣制』というのは、内閣が国家元首(君主・大統領)と議会の双方に責任を持つ政治体制で、歴史的には内閣が国家元首(国王)だけに責任を持つ『大権内閣制』から『二元型議院内閣制→一元型議院内閣制』へと進展しました。つまり、『国家元首(君主・国王)の実質的権限』が形骸化されて効力を持たなくなったというのが、近代的な立憲君主制・議会制民主主義の特徴だと言えます。

日本・イギリス・ドイツ・イタリア・オランダ・スペイン・スウェーデンなどは、内閣が議会だけに責任を持つ『一元型議院内閣制』の国に分類されます。歴史的には議院内閣制は『大権内閣制→二元型議院内閣制→一元型議院内閣制』へと展開して、内閣は『国民の民意(選挙の結果)』を反映する議会のみに責任を持つということになりましたが、フランス・ロシア・韓国は大統領制と一元型議院内閣制の中間形態である『半大統領制』と呼ばれる制度を採用しています。『半大統領制』では、議会の過半数の支持を受けている内閣(首相)が存在していながら、首相を解任するような強い権限を持つ大統領がいるという特徴があります。

議院内閣制の定義としては、内閣が議会に対して責任を持ち議会の過半数の支持によって内閣が成立するという『責任本質説』と内閣が議会解散権を持つことによって内閣と議会の権力の均衡が図られるとする『均衡本質説』とがありますが、一般的には『責任本質説』のほうが通説と考えられています。

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