ここでは、“国民主権(主権在民)・基本的人権の尊重・平和主義(戦争放棄)”を三原則とする日本国の最高法規である『日本国憲法』について解説します。『憲法(Constitution)』は国家権力の範囲と政治のあり方、人権(権利)の保障を規定する国家の最高法規ですが、日本国憲法は憲法13条の『個人の尊厳の原理』を目的とする近代憲法です。国民主権は『民主主義』によって実現され、基本的人権の尊重は『自由主義・平等主義』によって実現され、平和主義は『専守防衛・自衛権』によって実現されると考えられています。
日本国憲法の条文には、自由主義・人権思想を原理とする近代啓蒙思想のエッセンスが凝縮されており、現実の政治状況や人間精神の“理想的な到達地点”を志向する『理念的・普遍的な内容』となっています。戦争放棄や軍隊の不保持を明記した平和主義規定の“憲法9条”をはじめとして、この理想主義的な側面については賛否両論(改憲論・護憲論の対立)があります。日本国憲法の基本原理である『自由主義・個人主義』に基づく人権保障および戦争放棄(平和主義)は、『人類が目指すべき普遍的な目標・理想』として位置づけられますが、“普遍的な理想主義”と“政策オプション(外交・軍事・公共の福祉・国民の義務)の拡張性”を巡っては様々な憲法論議が生まれています。
憲法は絶対に改正してはならない『不磨の大典(ふまのたいてん)』では当然ありませんが、憲法を改正しても民主主義で多数決の賛成があっても、原理的に変更・規制できないものとして『個人の人権=消極的自由』があります。この場合の人権というのは、『社会権』のように国家(政府)から最低限度の文化的生活を福祉政策で保障してもらう『保護される人権=積極的自由』のことではありません。社会権・生存権のように、無条件に文化的な基本的生活を保障する『積極的な自由権』は国家財政の状態や個人の労働可能性によって部分的に制限される可能性があるからです。
それに対して、国家(政府)から強制的に自分の意志に反する命令をされない権利、最終的な“自分の言動・身体・財産に関する意志決定”は本人(個人)が行えるという『強制的に権力から干渉されない人権=消極的自由』は普遍的な人権として解釈することができます。他者の人権侵害に当たる行為、犯罪に対する刑罰、公務員に課される職務事項、明らかな犯罪行為(迷惑行為)、違憲ではない裁判所の命令を除いては、『国民の言論・行動の自由』を本人の意志に反する形で政府が制限することはできないという『消極的な自由権』の保障は、近代憲法における最も重要性の高い原則です。
ここでは、日本国憲法が規定する『人権』と『統治機構』の項目について、各条文を参照しながら解説していきます。近代憲法では、最高規範たる憲法が国家権力を制約して下位法(一般の法律)を規制するという『立憲主義』が採用されていますが、日本国憲法は改正要件が厳しい『硬性憲法』の体裁を取っています。
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