中国(中華人民共和国)の憲法 第三七条~第四○条

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中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

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第三七条(人身の自由)

1.中華人民共和国市民の人身の自由は、侵犯を受けない。

2.いかなる市民も、人民検察院が許可し、もしくは決定し、または人民法院が決定し、警察機関が執行するのでなければ逮捕されない。

3.違法に拘禁し、およびその他の方法を以て市民の人身の自由を違法に剥奪し、または制限することを禁止し、市民の身体を違法に捜索することを禁じる。

[解釈]

中華人民共和国は人民の人権を侵害するような強権のイメージがあるが、憲法では『身体の自由(身体を不当に拘束・監禁・捜索されない自由)』が保障されている。しかし、中国共産党の政治体制や社会秩序に逆らわない範囲での人身の自由であるため、かなりの制限つきの自由権と見なされるものである。

国家権力が人民の身体(人身)の自由を制限できる但し書きの条文として第2項があり、『人民検察院の許可・人民法院の決定・警察機関の執行』という手順を踏むのであれば、中国共産党の政府・権力は人民の人身の自由を合法的に制限することが可能である。

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第三八条(人格の尊厳)

中華人民共和国市民の人格の尊厳は、侵犯を受けない。市民に対してはいかなる方法による侮辱・誹謗・誣告も行うことを禁じる。

[解釈]

中華人民共和国の憲法では、『近代法的な人格権(人格の尊厳)』が保護されている。個人の尊厳だけでなく社会的評価とも相関する人格権を毀損する犯罪行為としては、『名誉毀損罪・侮辱罪』などが想定されるが、中国の憲法では人格の尊厳が不可侵の人権の一部として承認されている。

市民の人格の尊厳を侵犯する行為としては、侮辱・名誉毀損・誹謗中傷・誣告(悪評の告げ口)などがある。中国国内で実際に近代的な人格権がどのくらい守られているかは分からない部分があるが、大都市でも市民同士の大声での口喧嘩・罵倒や暴言などが見られることがあるが、そういったマナーや道徳規範などの問題も考慮されているのかもしれない。

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第三九条(住宅の不可侵)

中華人民共和国市民の住宅は、侵犯を受けない。市民の住宅を違法に捜査し、または違法に侵入することを禁じる。

[解釈]

中華人民共和国市民の住宅と居住権の保障であり、不法な住宅への侵犯を禁止している。

検察当局の令状なしには、市民の住宅を強制捜査できないというのは近代法の前提でもある。

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第四○条(通信の自由及び秘密)

中華人民共和国市民の通信の自由及び通信の秘密は、法律の保護を受ける。国家の安全または刑事犯罪を追及する必要により、警察機関または検察機関が法の定める手続きに従って通信に対して検査を行う場合を除いては、いかなる組織または個人も、いかなる理由を以てしても、市民の通信の自由及び通信の秘密を侵犯してはならない。

[解釈]

中華人民共和国のインターネット上のやり取りは、中国共産党・警察当局から常に監視されている状態にあるとされ、体制にとって不都合な政治・歴史・弾圧の情報はインターネットでも検索されないように通信が制御されている。

Googleが中国市場から撤退したように、中国の体制護持のためのネット規制には多くの問題があり、電話・無線・メールなどの通信内容も状況によっては当局に傍受(盗聴)されている可能性があるが、市民社会の基本原則としては憲法によって『通信の自由及び秘密』が守られているのである。

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