中国(中華人民共和国)の憲法 第一条~第四条

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中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

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中華人民共和国憲法 第1章 総綱

第一条(国体)

1.中華人民共和国は労働者階級が領導し、労農同盟を基礎とする人民民主独裁の社会主義国家である。

2.社会主義制度は中華人民共和国の根本制度である。いかなる組織または個人にも社会主義制度を破壊することを禁じる。

[解釈]

トウ小平の『改革開放路線』を経由している現在の中国は、外国に市場を開放して為替相場にも参加しており、建前は社会主義国家であるが実際は資本主義国家になっていて、中国人の間での経済格差は非常に大きなものとなっている。

だが、中国憲法では中華人民共和国はあくまで労働者と農民の同盟を基礎に据えた社会主義国家であるとされ、資本家や経営者にだけ富が集中する『資本主義』を否定するという国家原則が宣言されている。社会主義制度の否定と破壊は、いかなる個人にも組織にも禁止されているのである。

第二条(政体)

1.中華人民共和国の全権力は、人民に属する。

2.人民が国家権力を行使する機関は、全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会である。

3.人民は、法律の定めに従って、各種の手段及び形式を通じて、国家事務を管理し、経済及び文化事業を管理し、社会事務を管理する。

[解釈]

中華人民共和国は実際には『共産党一党独裁体制』であるが、社会主義と共産主義の建前として国家権力はすべて人民に帰属しており、その人民から完全な信任と委託を受けた唯一の政党として共産党が存在しているのである。中国人民は通称『全人代(ぜんじんだい)』と呼ばれる全国人民代表大会と地方各級人民代表大会を通じて、その国家権力を行使することが可能とされている。

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第三条(民主集中制)

1.中華人民共和国の国家機構は、民主集中制の原則を実行する。

2.全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会は、すべて民主的選挙によって生み出され、人民に対して責任を負い、人民の監督を受ける。

3.国家行政機関、裁判機関、検察機関は、すべて人民代表大会によって生み出され、これに対して責任を負い、この監督を受ける。

4.中央及び地方の国家機構の職権の区分は、中央の統一領導の元に、地方の主体性・積極性を十分に発揮する原則に従う。

[解釈]

中国の国家機構は『民主集中制』という独自の政治制度によって運営されるが、それは民主主義的な権力行使を集中的に共産党に委任する制度であり、結果として『共産党一党独裁体制の継続(共産党への権力集中)』を憲法が保証することになっている。

憲法が定める民主主義や選挙制度の建前では、国家権力の機関を人民や人民代表大会が監督したりその代表者を選挙することになっている。だが、実際には共産党の領導する国家機構の命令に反対することが不可能に近い仕組み(そもそも共産党以外の政党への政権交代そのものが有り得ない仕組み)になってしまっている。

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第四条(民族間の平等)

1.中華人民共和国の各民族は、一律に平等である。国家は各少数民族の合法的な権利及び利益を保障し、各民族の平等、団結、互助の関係を護りかつ発展させる。いかなる民族差別及び抑圧も禁止し、民族の団結を破壊し及び民族の分裂を生じさせる行為を禁止する。

2.国家は各少数民族の特徴と必要とに基づき、各少数民族地区が経済及び文化の発展を加速することを援助する。

3.各少数民族の集居地方は、区域自治を実行し、自治機関を設置し、自治権を行使する。各民族の自治地方は、すべて中華人民共和国の不可分の部分である。

4.各民族は、すべて自らの言語文字を使用し及び発展させる自由を有し、自らの風俗習慣を保持または改革する自由を有する。

[解釈]

多民族国家である中華人民共和国では、少数民族を含むすべての民族の自由・平等・自治が形式的に保障されているが、『チベット問題・ウイグル動乱(ムスリム抑圧)』などの少数民族の抑圧・差別の問題も少なからず発生している。中国の理想は多民族国家の団結と共生にあるが、『合法的な権利・利益の範囲内』でしか各民族の自由・自治は保障されておらず、各民族の自治している地域はすべて『中華人民共和国の不可分の部分』であることから少数民族の分離独立運動などは容認されない。

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