中国(中華人民共和国)の憲法 第二九条~第三二条

スポンサーリンク

中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

参考文献(ページ末尾のAmazonアソシエイトからご購入頂けます)
初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

楽天AD

第二九条(国防)

1.中華人民共和国の武装力は、人民に属する。その任務は、国防を強固なものとし、侵略に抵抗し、祖国を防衛し、人民の平和な労働を防衛し、国家建設事業に参加し、人民に奉仕することに努力することである。

2.国家は、武装力の革命化、現代化、正規化の建設を強く推進し、国防力を増強する。

[解釈]

中華人民共和国は日本から見ると、尖閣諸島問題・不透明な国防白書などから『軍拡路線・軍国主義の体制』の国であるように受け取られることが多いが、憲法29条において『軍隊の現代化(近代化)』を理由とした軍拡路線が示唆されている。

中国は近代化・国防力強化に失敗して欧米列強・日本に『半植民地化』された歴史的トラウマから、『国防力・国家安全保障のための軍事力強化』に熱心に取り組む傾向が顕著である。中国の武装力は『人民解放軍』という名称からも伺い知れるように、建前の上では祖国と人民を外国の侵略から守るための『人民の権限に帰属して人民に奉仕する軍隊・国家建設事業にコミットする軍隊』と定められている。

楽天AD

第三○条(行政区画)

1.中華人民共和国の行政区画区分は以下のものとする。

一、全国は、省、自治区、直轄市に分かれる。

二、省、自治区は、自治州、県、自治県、市に分かれる。

三、県、自治県は、郷、民族郷、鎮に分かれる。

2.直轄市及び比較的大きな市は、区、県に分かれる。自治州は、県、自治県、市に分かれる。

3.自治区、自治州、自治県は、すべて民族自治地方である。

[解釈]

中華人民共和国の行政区画について整理分類している条文である。中国全土は『省・自治区・直轄市』に分類されており、それぞれが更に細分化された行政単位として分けられている。

少数民族などが居住して一定の自治権が認められている地方は『民族自治地方』とされ、『自治区・自治州・自治県』などがその地方に該当するものとして分類されている。

スポンサーリンク

第三一条(特別行政区)

国家は、必要なときには、特別行政区を設置することができる。特別行政区において実行する制度は、具体的状況に基づいて全国人民代表大会が法律を以て定める。

[解釈]

中国は国家として、規制緩和・減税措置を講じた経済特区などをはじめとする『特別行政区』を任意に設置することのできる権限を持っている。中国はグローバル市場経済に適応するための手段として、この『特別行政区(経済特区)の設置』を行っている。

特別行政区の中では、一般の中国人民には認められていないカジノや投機市場などが外国人観光客・投資家などに対して解放されたりもしている。また、政策的な効果検証のための実験の場として、特別行政区の制度が活用されることもある。

楽天AD

第三二条(外国人)

1.中華人民共和国は、中国領内における外国人の合法的権利及び利益を保護し、中国領内の外国人は、中華人民共和国の法律を遵守しなければならない。

2.中華人民共和国は、政治的原因により避難を求める外国人に対して、庇護を受ける権利を与えることができる。

[解釈]

『外国人の権利・利益の保護』を訴えると同時に、大使館・領事館などの例外を除いて治外法権を認めないという中華人民共和国の国家主権を宣言する条文にもなっている。中国は自国の法律を遵守する限りにおいて、外国人の合法的な権利と利益を保護する義務を負うという当たり前の国家原則が定められている。

中国にはチベット族・ウイグル族の自治を十分に認めずに弾圧するという『少数民族問題』があるのだが、その一方で、中国は外国人の『政治的亡命・政治的庇護の要求』を受け容れるということについても明記されている。

スポンサーリンク
Amazon
Copyright(C) 2015- Es Discovery All Rights Reserved