中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。
社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。
中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。
ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。
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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)
第四五条(ハンディキャップある市民への政策・軍人優遇)
1.中華人民共和国市民は、高齢、疾病または労働能力を喪失するという状況の下においては、国家及び社会から物質的援助を受ける権利を有する。国家は、市民がこれらの権利を享受するために必要となる社会保険、社会救済および医療衛生事業を発展させる。
2.国家及び社会は、傷痍軍人の生活を保障し、殉難烈士の家族に補償を与え、軍人の家族を優遇する。
3.国家及び社会は、視覚障害者、聴覚障害者、言語障害者その他の障害を有する市民の労働、生活及び教育を援助し適切に配慮する。
[解釈]
中華人民共和国では、ハンディキャップを持つ市民や各種の障害者、社会的弱者に対して物質的援助(生活保護的な公的扶助)をはじめとする社会保障政策の発展を目指している。人民が労働能力を喪失した場合には、国家・社会から公的扶助を受ける権利を有しており、そのために必要な社会保険・社会救済・医療衛生事業を実施しなければならないと定めている。
中国の軍事優先の政策方針を反映して、『傷痍軍人の生活保障・殉難烈士(戦死者・殉職者)の家族への補償・軍人の家族の優遇』なども憲法で保障されているのは特徴的である。
第四六条(教育を受ける権利及び義務)
1.中華人民共和国市民は、教育を受ける権利及び義務を有する。
2.国家は、青年、少年、児童を養成して、品徳、知力、身体能力等の面において全面的に発達させる。
[解釈]
中華人民共和国の憲法では日本国憲法と同じく『子女に普通教育を受けさせる義務及び子女が教育を受けられる権利』が定められていて、中国の人民の親(保護者)は子供に国が定める義務教育を受けさせなければならない。
国家は少年・青年・児童の徳性・知力・身体能力などを高めるための教育行為を行うのであり、『少年・青年の心身・知性の健全育成』に対して責任を負っている。
第四七条(文化活動の自由)
中華人民共和国市民は、科学研究、文学芸術創作およびその他の文化活動を行う自由を有する。国家は、教育、科学、技術、文学、芸術及びその他の文化事業に従事する市民の人民に有益な創造的任務遂行に対して、奨励及び援助を与える。
[解釈]
中華人民共和国市民の『文化活動の自由・科学研究(学問)の自由・芸術創作の自由』などについて定めた条文であるが、現実の中国では中国共産党の指導体制や中心思想に反対するような文化芸術活動・学問の自由は認められないことも多い。しかし、基本的には中国も文化活動の自由を認めて、精神的かつ文化的な豊かさを奨励・促進していくようなスタンスを取っている。
第四八条(男女平等)
1.中華人民共和国の女性は、政治、経済、文化、社会及び家庭の生活等の各方面において、男性と平等の権利を享有する。
2.国家は、女性の権利及び利益を保護し、男女同一労働同一報酬を実行し、女性幹部を養成して選抜する。
[解釈]
中華人民共和国では『男女平等』が前提とされており、政治・経済・文化・社会・家庭などの生活のあらゆる側面において、女性は男性と同等の権利を有するものとして扱われ、男女平等を推進する法律が定められることになる。
実際、中国は男女・夫婦の共働き世帯が多く、近しい学歴で同じような仕事をしている場合には男性と女性の賃金格差も小さくなっている。『男女同一労働・同一報酬の原則の実行』や『女性の管理職・幹部職の積極的な養成と選抜』が憲法に明記されている辺りは、条文としてはかなり先進的でもある。
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