日本国憲法 第四章 国会 第49条〜第56条

アメリカ合衆国や中国と戦った『アジア太平洋戦争』に敗れた日本は、1945年(昭和20年)8月15日に『日本軍の無条件降伏・日本の民主主義的政体(国民主権)の強化・基本的人権の尊重・戦争を起こさない平和主義』などを要求する『ポツダム宣言』を受諾した。明治期の1889年(明治22年)に公布された『大日本帝国憲法』は立憲君主制を規定する近代的な欽定憲法(君主・元首が作成する憲法)であったが、『天皇主権(天皇の大権事項)・国民を臣民(家臣)とする天皇への従属義務・国家主義による人権の制限可能性・国体思想による言論出版の自由の弾圧』などがあり、アメリカが日本に要求する近代的な自由民主主義や個人の人権保護とは相容れない欽定憲法であった。

ポツダム宣言受諾の無条件降伏によって、日本政府はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の助言と監督を受けながら、『憲法改正草案要綱』を作成して大日本帝国憲法73条の憲法改正手続の条文に従った上で、1946年(昭和21年)11月3日に現行の『日本国憲法』を公布し、翌1947年(昭和22年)5月3日に施行した。1946年(昭和21年)5月16日に開かれた『第90回帝国議会』で、日本国憲法は審議を受けているため、GHQが無理矢理に押し付けた憲法というよりは、日本が『敗戦の講和条件・厭戦(疲弊)と平和希求の民意』に従って正規の手続きを経て改正された憲法である。

日本国憲法は『個人の尊厳原理』に立脚することで、国家主義(全体主義)や専制権力の抑圧から国民を守る立憲主義の構成を持っており、『国民主権・基本的人権の尊重・平和主義(戦争放棄)』の基本的な三原則(三大要素)を掲げている。天皇は天皇大権(政治権力)を持たずに国民統合の象徴になるという『象徴天皇制+国民主権(民主主義)』が採用され、国民はすべて個人として尊重され各種の憲法上の権利(自由権)が保障されるという『基本的人権の尊重』が謳われた。過去の戦争の惨禍に学び、戦争の放棄と軍隊(戦力)の不保持を宣言する『平和主義』も掲げられた。

ここでは、『日本国憲法』の条文と解釈を示していく。

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『日本国憲法』(小学館),『日本国憲法』(講談社学術文庫),伊藤真『日本国憲法』(ハルキ文庫),『英文対訳日本国憲法』(ちくま学芸文庫)

第四章 国会(続き)

第四九条

両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第五○条

両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第五一条

両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五二条

国会の常会は、毎年一回これを召集する。

[解釈]

第49条は、国会議員の給料に当たる『歳費』について、国庫から支出(歳出)されるということを定めている。第50条は、国会議員の特権としての『不逮捕特権』を定めている。つまり、国会議員は『国会の会期中』に限っては、法律に特別の定めがなければ原則として逮捕されることがないし、『国会の会期前』に逮捕されていても議院からの要請があれば会期中は釈放される。

第51条は、国会議員が『議院の中』で行ったあらゆる言論活動について、院外においてその責任を問われないことを保障している。即ち、国会議員は議会(議院)においては、名誉毀損罪・侮辱罪・脅迫罪などに問われることがないという『完全な言論の自由』という特権が保障されており、国民からの権力の負託を受けたその責任は当然に重いのである。第52条は、国会の常会を毎年1回、必ず召集しなければならないことを定めている。

第四章 国会(続き)

第五三条

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第五四条

1.衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

2.衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

3.前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

第五五条

両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第五六条

1.両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

2.両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

[解釈]

『国会』の臨時会や衆院解散後の総選挙についての詳細な規定が続く。第53条は、衆参院いずれかの議会の総議員の4分の1以上の要求があれば、『臨時会』を開かなければならないと記しており、第54条では『衆議院解散後の具体的な手続きとその日取り』が規定されている。衆議院を解散した場合は、40日以内に衆院の総選挙を実施しなければならず、選挙後には30日以内に国会を召集しなければならない。衆議院の解散時には、参議院も同時に閉会となるが、内閣はなお参議院の緊急集会を要請する権限を留保している。

衆院解散後の参議院の緊急集会は、飽くまで『臨時の議決』ができるだけであり、次の国会開会後に衆議院がその議決に同意しなければ有効とはならない。第55条は、国会議員の弾劾(資格争訟)について定めた条文であり、出席議員の3分の2以上の賛成があれば、その議員の資格を剥奪して失職させることができる。第56条は、両院の定足数に関する規定であり、『総議員の3分の1以上の出席』がなければ議決することはできない。両院の議事の議決は、出席議員の過半数の賛成によって可決することができ、賛成と反対が同数の場合には議長が判断することになる。

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