日本国憲法 第四章 国会 第41条〜第48条

アメリカ合衆国や中国と戦った『アジア太平洋戦争』に敗れた日本は、1945年(昭和20年)8月15日に『日本軍の無条件降伏・日本の民主主義的政体(国民主権)の強化・基本的人権の尊重・戦争を起こさない平和主義』などを要求する『ポツダム宣言』を受諾した。明治期の1889年(明治22年)に公布された『大日本帝国憲法』は立憲君主制を規定する近代的な欽定憲法(君主・元首が作成する憲法)であったが、『天皇主権(天皇の大権事項)・国民を臣民(家臣)とする天皇への従属義務・国家主義による人権の制限可能性・国体思想による言論出版の自由の弾圧』などがあり、アメリカが日本に要求する近代的な自由民主主義や個人の人権保護とは相容れない欽定憲法であった。

ポツダム宣言受諾の無条件降伏によって、日本政府はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の助言と監督を受けながら、『憲法改正草案要綱』を作成して大日本帝国憲法73条の憲法改正手続の条文に従った上で、1946年(昭和21年)11月3日に現行の『日本国憲法』を公布し、翌1947年(昭和22年)5月3日に施行した。1946年(昭和21年)5月16日に開かれた『第90回帝国議会』で、日本国憲法は審議を受けているため、GHQが無理矢理に押し付けた憲法というよりは、日本が『敗戦の講和条件・厭戦(疲弊)と平和希求の民意』に従って正規の手続きを経て改正された憲法である。

日本国憲法は『個人の尊厳原理』に立脚することで、国家主義(全体主義)や専制権力の抑圧から国民を守る立憲主義の構成を持っており、『国民主権・基本的人権の尊重・平和主義(戦争放棄)』の基本的な三原則(三大要素)を掲げている。天皇は天皇大権(政治権力)を持たずに国民統合の象徴になるという『象徴天皇制+国民主権(民主主義)』が採用され、国民はすべて個人として尊重され各種の憲法上の権利(自由権)が保障されるという『基本的人権の尊重』が謳われた。過去の戦争の惨禍に学び、戦争の放棄と軍隊(戦力)の不保持を宣言する『平和主義』も掲げられた。

ここでは、『日本国憲法』の条文と解釈を示していく。

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『日本国憲法』(小学館),『日本国憲法』(講談社学術文庫),伊藤真『日本国憲法』(ハルキ文庫),『英文対訳日本国憲法』(ちくま学芸文庫)

第四章 国会

第四一条(国会の地位・立法権)

国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第四二条(両院性)

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

第四三条(両議院の組織)

1.両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

2.両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第四四条(議員・選挙人の資格)

両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

[解釈]

『立法・行政・司法』の三権分立を前提とする日本の政治体制で、国会は『国権の最高機関・唯一の立法機関』であると定められている。第42条と第43条は、日本の国会が衆議院と参議院からなる『二院制(両院性)』を採用していることを示し、更に『衆議院議員・参議院議員の定数』は法律でこれを定めるとしている。2013年6月の時点では、衆議院議員の定数は『480名』、参議院議員の定数は『242名』である。

第44条は、両議院議員の議員資格とそれを選挙する有権者の資格を別の法律で定めるとしており、その資格について『人種・差別・性別・社会的身分・門地・教育・財産・収入』による差別をしてはならないとしている。だが、厳密には被選挙権を行使するためには、『候補者の無秩序な乱立』を防ぐ意図もあって、一定の財産(供託金)が必要になっている。

第四章 国会(続き)

第四五条(衆議院議員の任期)

衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

第四六条(参議院議員の任期)

参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

第四七条(選挙関連事項の法定)

選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

第四八条(衆参議員の兼職禁止)

何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

[解釈]

第45条では衆議院議員の任期を『4年』と定めており、その例外(任期満了前の終了)として首相の判断による『衆議院解散(解散総選挙)』が上げられている。第46条では参議院議員の任期を『6年』と定めているが、衆議院議員とは違って参議院議員は『3年ごとに議員定数の半数を改選する(一度に全ての議員を選びなおすわけではない)』という規定が為されている。

第47条では選挙区・投票方法などの選挙関連事項を、別の選挙管理法で定めるとしており、第48条では一人の個人が『衆議院議員』と『参議院議員』の両方の議員になることはできないと禁じている。

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