中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。
社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。
中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。
ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。
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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)
第五三条(秩序遵守の義務)
中華人民共和国市民は、憲法及び法律を遵守し、国家の機密を保守し、公共財産を愛護し、労働規律を遵守し、公共秩序を遵守し、社会公徳を尊重しなければならない。
[解釈]
個人の自由・権利の尊重が不十分な中華人民共和国では、国家主義的な秩序と規律が遵守されるが、この条文では『国家権力・公衆道徳・労働規範・社会秩序』を総合的にまとめて規定している。
第五四条(祖国の安全・栄誉・利益を護る義務)
中華人民共和国市民は、祖国の安全、栄誉及び利益を護る義務を有し、祖国の安全、栄誉及び利益を害する行為があってはならない。
[解釈]
中華人民共和国の市民・国民の『愛国心』と『国家の栄誉・利益の保護』を規定した条文であり、市民・国民は祖国の栄誉と利益の保護に努めてそれを侵害しないようにしなければならない。
第五五条(祖国防衛の責任・兵役)
1.祖国を防衛して侵略に抵抗することは、中華人民共和国の一人一人の市民の神聖な職責である。
2.法律に従って兵役に服して、民兵組織に参加することは、中華人民共和国市民の光栄な義務である。
[解釈]
中華人民共和国の市民・国民の『国防(祖国防衛)の義務』を『栄光ある義務』として定めている条文であり、中国の『徴兵制・兵役の合法性』を担保している。中国の憲法でも、アメリカ合衆国憲法にあるような『民兵(民兵組織)』に言及されており、近代市民革命に由来する啓蒙思想である『武装した市民(民兵の側面を持つ主権者)による国防意識の高揚』が意図されている。
第五六条(納税の義務)
中華人民共和国市民は、法律に従い納税する義務を有する。
[解釈]
中華人民共和国に居住して国籍を持つ市民・国民の『納税の義務』について定めた条文である。
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