親密化過程を説明する段階理論と初期分化現象:人は他者とどのように親しくなるか?

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人間関係の親密化プロセスを説明する段階理論

親密化理論の分類と初期分化現象理論


人間関係の親密化プロセスを説明する段階理論

人は新生児として生まれてからすぐに父母(養親)との親子関係を築き始めるが、その後も、『友人関係・恋愛関係・夫婦関係・親戚関係』などの様々な人間関係を自分の年齢・心情や社会的な位置づけ、他者からの要求に合わせて築いていくことになる。

親子関係や兄弟姉妹との関係は『血縁による必然的・形式的な関係』なので、その関係を築くために特別な親密さを深めるようなプロセス(働きかけ)はない。だが一般的な友人や異性、他人との人間関係ではお互いに親しくなるプロセスがないと『(赤の他人・ただの顔見知りとは違う)誰かとの特別な人間関係』は出来上がらない。毎日ただ顔を合わせるだけ(知っているだけ)の人は、知人ではあっても友人や恋人では有り得ないからである。

自分と他人(他者)とがお互いに親しくなっていく過程(プロセス)のことを『親密化過程・親密化プロセス(close relationship process)』というが、親密化過程を分析して人間関係の成立や破綻などを考える理論のことを『親密化理論』と呼んでいる。親密化理論には、夫婦・恋人・友人・家族との『二者関係』の推移や変化を時間の経過と共に分析した理論があるが、それ以外にも各種の人間関係の成立・進展(維持)・崩壊(別離)を生み出す要因が何かに注目して分析した理論もある。親密化理論は『夫婦関係・恋愛関係(異性関係)・友人関係・家族関係』といった様々な形態の人間関係を対象としている。

親密化プロセスの理論とは、『親密になるプロセスと要因』や『疎遠になるプロセスと要因』を分析するものであり、二者の親密さのレベルによって各段階に分類する『段階理論(stage theory)』、二者の関係性が親密なものに分化(変化)するプロセスや要因に注目した『初期分化現象理論(early differentiation of relatedness theory)』などがある。二者関係の親密化プロセスを各段階(各ステージ)ごとに分析した『段階理論』には以下のようなものがある。

親密化理論の分類と初期分化現象理論

人間関係の親密化過程(親密化プロセス)を分析する『段階理論(Stage theory)』では、各段階で関係性の維持発展にとって重要になる課題があるということ、各段階で『実行すべき行動・働きかけ』をしないと人間関係が次の段階に進めず、そのまま解消されてしまうこともあるということが前提になっている。親密化のプロセスが進展して他者とより親しくなると、『質的に異なる特別な相互作用・役割関係・援助行動(依存性)』などが見られるようになってくるのである。

日本の心理学者の下斗米淳(しもとめあつし)は、『親密化過程の三位相説』において、親密化プロセスを説明する段階理論に共通する要素として『自己開示・類似性と異質性の認知・役割行動の遂行(承認)』という3つを上げている。R.A.ルイスの6段階説やB.I.マースタインのSVR理論は、結婚や恋愛に至るまでの親密化プロセスを研究対象にしているが、G.レヴィンジャーとD.J.スヌークの相互依存性と関係した親密化理論は、異性関係ではなく一般的な友人関係を研究対象にしている点で違いがある。

R.A.ルイスの6段階説やB.I.マースタインのSVR理論のほうは、『人間関係の各段階』においてその関係の維持・進展(発展)に必要となる要因(関係発展の課題的なもの)に注目しているという特徴があるが、G.レヴィンジャーとD.J.スヌークの理論のほうは、人間関係の各段階で見られる相互作用・役割行動をそのまま記述しているだけという特徴がある。

『初期分化現象理論(early differentiation of relatedness theory)』は段階理論とは異なり、二人が親密な関係になっていくかどうかは、関係のごく初期の間に決定されてしまうという前提を取っている。自分と性格的に合う相手なのか合わない相手なのか(今後も継続的に交際したい相手なのか否か)が、知り合ってから短期間で直感的に判断されてしまうというのが『初期分化現象理論』であり、この立場に立つ心理学者には大学の新入生がお互いに友達になれるかどうかは、知り合ってから2週間以内に決定される(その結果は長期的にも変わらない)と主張する者もいる。

親密化理論には、人間関係を『維持・発展・崩壊(別離)』に導くような少数の限られた要因に注目する理論も多くあるが、その代表的なものには以下のようなものがある。

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