人事アセスメントと適性検査・360度評価・アセスメントセンターメソッド

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このウェブページでは、『人事アセスメントと適性検査・360度評価・アセスメントセンターメソッド』の用語解説をしています。

人事アセスメントとしての適性検査

人事アセスメントとしての多面観察評価(360度評価),アセスメントセンター・メソッド


人事アセスメントとしての適性検査

心理テストや行動観察などを行って、人間の知能・性格・精神病理・適応などを測定する臨床心理学の分野を『心理アセスメント』という。人間のさまざまな能力・特性・適応を測定するこの心理アセスメントの方法論や実施プロセスを、経営上の目的(人材の活用)のために応用したものが『人事アセスメント』である。

人事アセスメントの代表的な手法には、以下のようなものがある。

人事アセスメントとしての『適性検査』には、多くの心理テスト(心理検査)の手法が応用されており、人事アセスメントと心理アセスメントには技法上の共通点が多い。例えば、人事アセスメントにおいても心理アセスメントと同じような『質問紙法・投影法・作業検査』が用いられている。

『学歴・専攻』によっておおまかな学習能力のスクリーニングや知的作業の得意分野の推定を行うことはできるが、ビネー式知能検査やウェクスラー式知能検査は『職務遂行可能な人材の最低限度の知能水準・専門的業務の適性』を平均的知性からの偏差(=IQの知能指数)、結晶性知能と流動性知能の観点から測定することが可能である。

人事アセスメントの適性検査でもっともポピュラーな形式は、多肢選択式の複数の質問項目を呈示して応募者に回答してもらう『質問紙法』であり、基本的には心理テスト(心理検査)で被検者の性格傾向や人格特性を調べる『性格検査(パーソナリティー検査)の質問紙法』に似たものになっている。

根気や精度が必要な作業の適性を調べる検査として作業検査の『内田クレペリン検査』があるが、この検査では『能力面の特徴』『性格行動面の特徴』の双方を、短時間で実際の計算作業を通して調べることができる。

能力面の特徴というのは『作業の効率性・正確性(正答率)』のことであり、性格行動面の特徴というのは『作業時にでやすい性格傾向や癖』のことである。内田クレペリン検査では1分毎の作業量と正答率を記した『作業曲線』を描いて分析することで、『発動性・可変性・亢進性』からさまざまな性格の傾向や癖(素直さ・安定性・柔軟性・自主性・強気・耐久性・温和など)を合理的に推測できるのである。

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適性検査の優れた長所は、一般的な人が人の能力・適性を面接で判断する人事査定と比較して、『上司(評価する人間)の主観的な判断・思い入れ』が影響しにくいということである。客観的で公平な人事アセスメントのツールとして開発された適性検査は、学習された知識・情報や職務経験(実体験)の多寡ができるだけ影響を与えないように質問項目の内容や選択肢、判定方法が工夫されているのである。

適性検査の課題は、人事アセスメントに応用する場合に心理アセスメント(心理検査)についての一定の『専門的な知識・経験』が必要になってくるということである。特定の被検者に対して、どの適性検査を選んで実施すれば良いのかを判断する場合にも、利用者は『心理評価尺度の質・目的』を評価するために心理検査の技法と解釈の基礎知識を持っていなければならない。適性検査の測定結果がどのような意味を持つのかを解釈(診断)する場合にも、『測定結果と人格構造・職務遂行能力(職業適性)との相関関係』について十分に専門的で実際的な解釈の知識・経験を持っている必要が出て来るのである。

人事アセスメントのための適性検査を実施する場合には、その実施に先立って『適性検査の目的・方法・結果の利用方法』を被検者が十分に納得するまで説明する義務があり、これは医療における『インフォームド・コンセント(正しい情報提供と納得に基づく医療)』とも重なる同意・納得を重視する考え方である。

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人事アセスメントとしての多面観察評価(360度評価),アセスメントセンター・メソッド

人事アセスメントとして活用される『多面観察評価』『360度評価』と呼ばれることもある従業員の評価手法であり、簡単に説明すれば従業員の仕事ぶりをお互いに相互評価させるという方法である。多面観察評価では『本人(被検者)の自己評価』『周囲の同僚・関係者など複数の他者の評価』を照らし合わせる形で、被検者の職業上の能力・適性・実績などを公平かつ総合的に査定していくことができるのである。

多面観察評価において本人と周囲にいる関係者の評価の対象にされるのは、主に『期待される職務行動・取り組みの姿勢・勤労意欲・周囲との協力・向上心』などで、その評価対象となる職業能力・適性は多岐にわたっている。このテストによって得られた複数の関係者の評定点は平均化され、本人の自己評価と共に提示されるが、大勢の人が職務行動や仕事の姿勢の評価に関わることで、『多面的かつ有意義な人事評価データ』を効率よく集めることができるというメリットは大きい。

多面観察評価の結果は本人にもフィードバックされるが、このフィードバックは『職場における自分の客観的な評価』『今後の職業上の努力目標・改善点についての自己認識の深まり』『会社の経営ポリシーの理解および能力開発の方向性』に役立つのである。

複数の同僚の評定点を平均することで、特定の評価者が持つ職業観や好き嫌い、固定観念が影響する『評定バイアス』を減らすことができる。被検者の職業能力や成果・実績を直接的に評定させるのではなく、『被検者の職務行動・態度・意欲・取り組み姿勢』などを評定させるというのもポイントである。そのことによって、特定の評価者の持つ職業観・能力観・スキルの影響によるバイアスを減らしているのである。

複数の同僚が評価に関わっている、複数の人が自分につけた点数を平均化しているという『多面性・多様性』によって、被検者の『評価・評定に対する納得感(公平さの認識)』が高まりやすくなるというメリットもある。

多面観察評価の『信頼性』は、『評定項目の内容・表現・数』『評定者の数・質(偏り)』に依存する側面が強いので、信頼性係数の推定のために『評定項目間の内的整合性・評価者間の評定の一致度・再検査法による再現性』などが用いられている。多面観察評価の『妥当性』は、『評定項目・評価者の特性・評価尺度の内容』だけではなくて『人事方針の目標設定やビジョン・組織風土や企業目標と人材の適合性』の影響を受けることになる。

多面観察評価の評定に参加するメンバーについては、『被検者よりも上位の上司だけが評価者になる方法』『被検者と対等な同僚も含める方法』『上司・同僚に加えて部下・後輩・関係者なども幅広く含める方法』があり、特にあらゆる関係者から多面的かつ多様な評価を含める多面観察評価のことを『360度評価』と呼ぶことが多い。

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多面観察評価の実施に当たっては、『導入の目的・評定結果の利用法・被検者へのフィードバックの方法・応用と展開の可能性』について十分な説明を行って、評価される人と評価する人の双方の同意を取り付けておく必要がある。同じ職場で毎日一緒に働いている同僚・上司・部下の仕事ぶりを評価することになるので、誰が誰を低く評価したかが分かると職場の人間関係や空気が険悪になることもある。そのため、被検者に対する評定方法とフィードバック方法として『匿名性の保障』が重要になってくることも多い。

アセスメントセンター・メソッドというのは、『経営者層や管理職層に向けられた課題解決能力(目標達成能力)・対人関係調整の能力・専門的スキルの評価方法』であり、2泊から3泊程度の長さを想定した研修プログラムとして実施されることが多い。

アセスメントセンター・メソッドの具体的な評価手法としては、『シミュレーション演習課題(ロールプレイの実践課題)・グループセッション(集団的ディベートや討議)・心理検査(心理テスト)・面接技法』などがある。研修プログラムで得られたデータや観察・評定の結果は、アセッサー(専門的訓練を受けた評価者)によってそれぞれの被検者の個人差が点数化・尺度化されることになる。

他の人事部門のデータや評価プロセスと紐付けられていないので、アセスメントセンター・メソッドの『妥当性』は高いとはいえないが、アセッサー(評価者)の間の評価の一致度やグループセッション及び演習の内的整合性によって一定以上の『信頼性』は担保されている。

参加した経営者・管理者の主観的な満足度や能力向上の動機づけは高いものがあるが、アセスメントセンター・メソッドの最大の問題は、宿泊を必要とする研修プログラムなので『時間・費用・労力の負担とコストが大きい』ということである。個人の能力・適性・態度に関する尺度の妥当性が弱いという問題も抱えているが、人事データの効率的な収集・活用を実現するためには、人員管理や能力開発、目標達成などの『多面的な目的意識』を研修内容に取り込んでいく必要があるだろう。

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