『論語 顔淵篇』の書き下し文と現代語訳:2

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孔子と孔子の高弟たちの言行・思想を集積して編纂した『論語』の顔淵篇の漢文(白文)と書き下し文を掲載して、簡単な解説(意訳や時代背景)を付け加えていきます。学校の国語の授業で漢文の勉強をしている人や孔子が創始した儒学(儒教)の思想的エッセンスを学びたいという人は、この『論語』の項目を参考にしながら儒学への理解と興味を深めていって下さい。『論語』の顔淵篇は、以下の3つのページによって解説されています。

[白文]9.哀公問於有若曰、年饑用不足、如之何、有若対曰、盍徹乎、曰、二吾猶不足、如之何其徹也、対曰、百姓足、君孰与不足、百姓不足、君孰与足、

[書き下し文]哀公、有若(ゆうじゃく)に問いて曰く、年饑えて(うえて)用足らず、これを如何(いかん)。有若対えて曰く、盍ぞ(なんぞ)徹せざるや。曰く、二たりとも吾猶足らず、これを如何ぞ、それ徹せんや。対えて曰く、百姓足らば、君孰(たれ)と与(とも)にか足らざらん。百姓足らずんば、君孰と与にか足らん。

[口語訳]哀公が有若に尋ねて言われた。『今年は不作で民が財政が不足しているが、どうしたら良いだろうか。』。有若がお答えした。『どうして収穫の10分の1を収税する徹の税にしないのでしょうか。』。哀公が言われた。『10分の2の税金でも不足しているのに、どうして10分の1の徹の税にするのだろうか。』。有若は申し上げた。『人民の生活が満足していれば、主君は誰と一緒に不足していると言うのでしょうか。また、人民の生活が不足していれば、主君は誰と一緒に満足したと言えるのでしょうか。』。

[解説]哀公が農業の不作によって財源不足に陥った時に有若に助言を求めた章であるが、有若は徳治主義の根本にある『人民の保護の原理』を持ち出して、増税よりも減税によって人民の生産力を養うことを勧めたのである。

[白文]10.子張問崇徳弁惑、子曰、主忠信徒義、崇徳也、愛之欲其生、悪之欲其死、既欲其生、叉欲其死、是惑也、

[書き下し文]子張、徳を崇くし(たかくし)惑いを弁ずることを問う。子曰く、忠信に主しみて(したしみて)義に徒る(うつる)は、徳を崇くするなり。これを愛するときはその生を欲し、これを悪む(にくむ)ときはその死を欲す。既にその生を欲して、またその死を欲するは、これ惑いなり。

[口語訳]子張が、『徳を崇敬して、惑いを弁ずる』という言葉の意味を質問した。先生がお答えになられた。『忠義と誠実がある人間と交流して、正義に近づくことが徳を敬うことである。愛する時にはその人の生存を願い、憎悪するときにはその人の死を願うものがある。このように、かつてはその人の生を願って、その後にその人の死を願うというのが惑いなのである。』。

[解説]『徳を崇敬して、惑いを弁ずる』という古来から伝わる諺の意味を子張に問われた孔子は、愛欲と憎悪の二律背反(アンビバレンス)について言及して見事に分かりやすく解説している。

[白文]11.斉景公問政於孔子、孔子対曰、君君、臣臣、父父、子子、公曰、善哉、信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾豈得而食諸、

[書き下し文]斉の景公、政を孔子に問う。孔子対えて曰く、君君たり、臣臣たり、父たり、子子たり。公曰く、善いかな、信に如し(もし)君君たらず、臣臣たらず、父父たらず、子子たらずんば、粟(ぞく)ありと雖も、吾豈(あに)得て諸(これ)を食らわんや。

[口語訳]斉の景公が、政治について孔子にお聞きになられた。孔子はお答えした。『主君は主君らしく、臣下は臣下らしく、父は父らしく、子は子らしくあれ、ということです。』。景公は言われた。『その通りであるな。もし本当に主君が主君らしくなく、臣下が臣下らしくなく、父は父らしくなく、子が子らしくないのであれば、米があっても私はそれを食べられなくなるだろう。』。

[解説]儒教は、社会秩序を維持する為に封建主義的な身分制を擁護したとされるが、特に『君臣の義』と『親子の孝』を最も重要なものと見なした。儒教の道徳観では、『親子の忠孝』を『君臣の忠義』よりも価値が高いものと考え、父母と君主が対立した時に父母に仕えることが正しいとされるので、儒教の仁徳の根本には血縁主義が濃厚に関わっている。

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[白文]12.子曰、片言可以折獄者、其由也与、子路無宿諾、

[書き下し文]子曰く、片言(へんげん)以て獄え(うったえ)を折む(さだむ)べき者は、それ由か。子路、諾を宿むる(とどむる)こと無し。

[口語訳]先生が言われた。『裁判で一方だけの訴えを聞いて判決を下せるのは子路だけだな。』。子路は、承諾したことを引き延ばすようなことがなかった。

[解説]直情径行の気質があり物事の決断が早かった子路は、裁判においても原告・被告片一方だけの意見を聞いて判決を出すような拙速なところがあった。拙速ではあるけれど仁徳と人情重視の判決を出すということで、徳治主義の儒教的観点から孔子は子路のそういった側面も好意的に評価していたようである。もちろん、現代の法治国家の立場からすると、こういった子路の人治的態度は許されないものではあるが。

[白文]13.子曰、聴訟吾猶人也、必也使無訟乎、

[書き下し文]子曰わく、訟えを聴くは、吾猶人のごときなり。必ずや訟え無からしめんか。

[口語訳]先生は言われた。『訴訟の訴えを聴いて判決を下す場合には、私も一般の人と同じようなものである。訴訟そのものを無くすようにしたいものだ。』

[解説]孔子は、訴訟による強制的な紛争解決よりも啓蒙強化による自発的な問題解決をより理想的なものであるとした。

[白文]14.子張問政、子曰、居之無倦、行之以忠、

[書き下し文]子張、政を問う。子曰く、これに居りて倦むことなく、これを行うには忠を以てせよ。

[口語訳]子張が政治について質問をした。先生は言われた。『政治の議会にある時にはぼんやりと怠けてはならない。人民に対して政治を行うにあたっては、忠義(まごころ)を忘れてはならない。』

[解説]孔子が政治について質問してきた子張に対して、為政者である君子の心構えを説いたものである。政治的な議論に真剣に取り組み、人民の期待に対して忠義心を忘れないことが為政者としての基本であった。

[白文]15.子曰、君子博学於文、約之以礼、亦可以弗畔矣夫、

[書き下し文]子曰わく、君子博く文を学びて、これを約するに礼を以てすれば、亦以て畔(そむ)かざるべし。

[口語訳]先生がおっしゃった。『君子は学問を幅広く学んで、その知識を礼制によって集約すれば、人としての道を踏み外すことはないだろう。』。

[解説]君子は学問によって身につけた表層的な知識を、『礼の精神』によって統一し人格の陶冶に心血を注がなければならない。そのことを熟知していた孔子は、幅広い学問のみならず、その学問の知見を実際の人格性に反映させるための『礼』を重んじたのである。

[白文]16.子曰、君子成人之美、不成人之悪、小人反是、

[書き下し文]子曰く、君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是に反す。

[口語訳]先生は言われた。『君子は他人の善きことを支援し、悪しきことを援助しない。徳のない小人はこれとは反対のことをする。』

[解説]善事を推進して悪事を抑制するという君子の道徳規範とその実践のあり方を示したものである。

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