哲学と思想を理解するための参考文献4(ドイツ観念論・実存主義・マルクス主義)
このウェブページでは、19世紀のカントからフィヒテ、シェリングへと継承され、ヘーゲルにおいて完成するドイツ観念論の近代哲学に関する書籍、そして、『死に至る病』のキルケゴールから始まり、『悲劇の誕生』『ツァラトゥストラはかく語りき』のニーチェへとつながる実存主義の参考文献を紹介します。20世紀の資本主義と共産主義(社会主義)の政治イデオロギー対立を準備したカール・マルクスのマルキシズムやマルクスの共著者であったエンゲルスの科学的社会主義に関する書籍も取り上げています。
カール・マルクスが提唱した史的唯物論に基づく共産主義思想は、資本家(ブルジョアジー)と労働者(プロレタリアート)の階級対立を止揚(アウフヘーベン)することで、個人の自由の抑圧や労働の搾取の存在しない理想的な平等社会を建設しようとする思想です。マルクス主義の源泉には、ヘーゲルを頂点とするドイツ観念論だけでなく、イギリスの古典派経済学やフランスの初期社会主義の影響が見られます。私的所有権を廃棄して生産手段(土地・工場・機械・設備)を共有化する共産主義革命を理論的に正当化したのは、『下部構造(物質経済による生産関係)が、上部構造(イデオロギーによる政治形態)を決定する』というマルクスの『資本論』のテーゼでした。
しかし、レーニンが主導するロシア革命によって成立したソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)は、理想的な共産主義社会を設立しようとする歴史的実験に失敗して、1991年に地上からその姿を消しました。実験的な社会主義を標榜した(標榜している)国家は、ソ連の他にも、中華人民共和国(中国)や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、ソ連崩壊以前のポーランドやハンガリー、ユーゴスラビアなど東欧諸国、ポルポト時代のカンボジア、アフリカや南米の開発途上国の一部などがありますが、それら全ての国は、本来のマルクス主義が目指した精神的自由と経済的豊かさを最大化する『人間解放の目的』を達成することが出来ませんでした。
マルクス主義を実際の政治に採用した多くの社会主義国家では、理想社会を実現できないばかりか、『共産党の特権集団化(計画経済を主導する官僚独裁体制)・労働意欲の低下・経済競争力の弱さ・全体的(平均的)な貧困の常態化・思想や言論の自由の抑圧・反体制的な人民の粛清』という多くの問題や悲劇をもたらしました。共産主義の歴史的実験を通して明らかになったのは『理論と実践の埋めがたい矛盾』でした。
人間の精神的な自由を最大限に尊重し、貧困や格差を撤廃した理想社会を建設するはずの思想が、反対に、人間の思想信条や言論・表現の自由を抑圧して反体制派の生命までも奪い、多くの人民の経済生活水準の低下を招いたことは、かつてマルクス主義に抱かれていたユートピアニズム到来の期待や憧れを雲散霧消させることになりました。しかし、社会主義思想の理念自体が完全に無効化したわけではなく、累進課税制に代表される『応能負担による社会福祉政策』の充実や『公的年金・公的健康保険』など相互扶助の社会保障システムとして、社会主義的な政治理念が実際の政治に採用されています。
とはいえ、日本の『小さな政府』を志向する新自由主義改革の流れの中では、社会民主主義的な応能負担による社会福祉政策や相互扶助的な社会保障制度のあり方が見直されようとしている現実もあり、相対的に見ると、2006年現在の日本やアメリカでは社会民主主義の福祉国家構想から遠ざかる方向へ政治がシフトしていっています。
マルクスやエンゲルスは、経済生産力や科学技術の進歩向上によって、人間社会の政治体制(経済制度)は『原始共産制→奴隷制→封建制→資本主義→共産主義』へと段階的に発展していく社会科学的な法則性を持つと説きました。下部構造(経済的な生産関係)の進歩や成長に突き動かされる形で、必然的に上部構造である政治形態が上記の順番で発展していくという歴史観を『史的唯物論』といいますが、現在では、この史的唯物論には(反証可能性を持つ)科学的という意味での法則性や妥当性はないと考えられています。
社会主義の歴史と理論に関する話が長くなりましたが、各参考文献は、Amazonの書籍販売ページへとリンクしています。現時点では、各参考文献のタイトル・年代・著者の基礎データを簡単に記しているだけですが、各参考文献の内容の解説や哲学者(思想家)の人生の概略のデータも少しずつ増やしていく予定です。
思想哲学・宗教・歴史を理解するための参考文献
古代哲学から中世神学までの参考書籍
宗教改革・ルネサンス・啓蒙主義の参考書籍
啓蒙思想・イギリス経験論・大陸合理論の参考書籍
言語哲学・現代思想・ポストモダンの参考書籍
哲学・思想を理解するための参考文献の略年表
年号 | 参考文献のタイトルと著者名 | 文献の付帯情報と関連書籍 |
1800 | フリードリッヒ・シェリング(Friedrich Wilhelm Joseph von Schelling, 1775-1854)『超越論的観念論の体系』
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1807 | ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1770-1831)『精神現象学(1807)』『歴史哲学講義(1837)』
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1808 | ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ(Johann Gottlieb Fichte, 1762-1814)『ドイツ国民に告ぐ』
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1809 | ジャン=バティスト・ラマルク(Jean-Baptiste Lamarck, 1744-1829)『動物哲学』
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1817 | デヴィッド・リカード(David Ricardo, 1772-1823)『経済学および課税の原理』
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1819 | アルトゥール・ショーペンハウアー((Arthur Schopenhauer, 1788-1860)『意志と表象としての世界』
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1830 | コント(Auguste Comte, 1798-1857)『実証哲学講義』 | |
1841 | ルートヴィヒ・アンドレアス・フォイエルバッハ(Ludwig Andreas Feuerbach, 1804-1872)『キリスト教の本質』
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1841 | セーレン・キルケゴール(Soren Aabye Kierkegaard, 1813-1855)『イロニーの概念について(1841)』『あれかこれか(1843)』『死に至る病(1849)』
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1844 | カール・マルクス(Karl Heinrich Marx, 1818-1883)『経済学・哲学草稿(1844)』『経済学批判(1859)』
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1848 | カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルス(Friedrich Engels, 1820-1895)『共産党宣言(1848)』
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1848 | ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill,, 1806-1873)『経済原理(1848)』
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1856 | アレクシス・ド・トクヴィル(Alexis de Tocqueville,1805-1859)『アンシャン・レジーム』
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1859 | チャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin, 1809-1882)『種の起源』
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1860 | ヤコブ・ブルクハルト(Jacob Burckhardt, 1818-1897)『イタリア・ルネサンス期の文化』
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1864 | フュステル・ド・クーランジュ『古代都市』 | |
1867-1894 | カール・マルクス『資本論』
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1872 | フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche, 1844-1900)『悲劇の誕生(1872)』『ツァラトゥストラはかく語りき(1883-1885)』『善悪の彼岸(1886)』
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1872 | ルドルフ・フォン・イェーリング(Rudolf von Jhering, 1818-1892)『権利のための闘争』
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1878 | アンリ・ファーブル(Jean-Henri Casimir Fabre, 1823-1915)『昆虫記』
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1884 | ゴットローブ・フレーゲ(Friedrich Ludwig Gottlob Frege, 1848-1925)『算術の基礎』
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1886 | アーネスト・マッハ(Ernst Mach, 1838-1916)『感覚の分析』 | |
1887 | フェルディナンド・テンニエス(Ferdinand Tonnies, 1855-1936)『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』
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1889 | アンリ・ベルグソン(Henri Bergson, 1859-1941)『時間と自由(1889)』『物質と記憶(1896)』
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1890 | ジェームズ・ジョージ・フレーザー(James George Frazer, 1854〜1941)『金枝篇』
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1895 | エミール・デュルケーム(Emile Durkheim, 1858-1917)『社会学的方法の諸規則』 | |
1900 | シグムンド・フロイト(Sigmund Freud, 1856-1939)『夢判断(1900)』『日常生活の精神病理(1901)』
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1900 | マックス・プランク(Max Planck, 1858-1947) 『量子論』 | |
1902 | ゾンバルト(Werner Sombart)『近代資本主義』 | |
1903 | ジョージ・エドワード・ムーア『倫理学原理』 | |
1903-1910 | ディールスとクランツ『ソクラテス以前の哲学者断片集』
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1907 | ウィリアム・ジェイムズ『プラグマティズム』 | |
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