周庭さんは「民主の女神」とも呼ばれる学生・民主派の政治活動家
香港の民主派・反中派の政治運動家として日本でも知名度が高い周庭さん（アグネス・チャン、チョウ・ティン）が、8月10日に香港国家安全維持法に違反したとして逮捕されました。
周庭さんは23歳の政治運動家の女性で、大学生の政治活動家として日本のマスメディアでも頻繁に取り上げられています。
簡単に言えば、周庭さんというのは「中国による香港の独裁的支配（中国共産党による自由・人権の抑圧や洗脳的な教育）」に反対している学生運動のリーダーの一人なのです。
ただし今回の逮捕と政治情勢の緊迫化（中国側の反中の言論・報道に対する本格的な取締り姿勢）により、さすがの周庭さんも今まで通りの反中かつ民主化の言論・デモを行い続けることはきわめて難しくなるか大きなリスクが伴ってしまうでしょう。
英領時代から続く香港の自由・人権を守ろうとする実際の政治活動の実績・影響力もさることながら、容姿（見た目）が可愛らしくて弾圧を恐れない勇気ある言動が目立つことからアイドル的な人気・求心力もあり、香港の現地でも周庭さんには「民主の女神・学民の女神」といったニックネームがつけられています。
周庭さんは学民思潮（学生運動）・香港衆志で影響力のあるスポークスマンを務めた
周庭さんは1996年12月3日生まれの23歳、生まれた時の香港はギリギリまだイギリス領の植民地で（1997年7月に中国に返還）中国政府の政治的な介入もなかった時期でした。
両親が周庭さんが幼い頃にイギリス国籍を申請していたため、2017年まではイギリス国籍を保有していましたが、香港特別行政区立法会地方選挙に立候補するために中国国籍に変更しています。
周庭さんは2012年の中学4年生（日本の高校1年生）の時に、香港政府が主導した中国寄りの国民教育の撤回を目指す「学民思潮」に参加したのが政治活動の始まりになっています。
2014年には「雨傘運動」で知られる香港反政府デモにもスポークスマンとして参加していますが、この運動・デモは中国の全人代が香港の選挙制度に介入して「民主派の立候補者数を制限したこと（親中派の行政長官・議員で議会を運営できるようにしたこと）」がきっかけで起こりました。
2016年に学民思潮（学生運動団体）は解散されましたが、周庭さんは羅冠聡（ネイサン・ロー）さんや黄之鋒（ジョシュア・ウォン）さんなどの学生運動のリーダー的な人物と協力して、香港の自決権を掲げる「香港衆志（デモシスト）」という政党を立ち上げました。
周庭さんは「香港衆志」の初代副事務局長を務めましたが、2020年6月30日、「香港国家安全維持法」が可決されて、香港衆志が「非合法の政治結社」と判断される恐れが強まったため解散しています。
中国共産党は周庭さんらの香港衆志を、中国からの分離・独立を目指す「反政府主義者・独立派」のようにみなして弾圧を強めていますが、実際には周庭さんでも「中国からの独立」までは主張しておらず、「一国二制度下における自由民主主義の長期継続」という現実的な目的を定めています。
2020年8月10日、周庭さんの逮捕と保釈
しかし、2020年8月6日に、2019年6月の「逃亡犯条例改正」に対する反対デモで警察本部を包囲する違法集会を扇動した罪で周庭さんに有罪判決が下り、8月10日には本当に逮捕されて身柄を拘束されました。
周庭さん逮捕には国際社会の厳しい目線も注がれていることもあり、さすがの中国も周庭さんに直接の危害を加えたり、不当に長期監禁（長期禁固）したりすることはありませんでした。
8月11日の夜に2万元の現金と18万元の保釈金で大埔警察署から釈放されてはいますが、今後再び周庭さんが反政府的な言動・デモをすればまた逮捕するという、中国側・香港政府側からの強い威嚇・脅しのメッセージがあるのは明らかでしょう。
周庭さんは逮捕後に、「明らかに政治的な弾圧。逮捕はとてもばからしく、なぜ逮捕されたのか分からない」「今回の逮捕は本当に怖かったし、今回の罪も今まで私が逮捕された4回の中で一番、重かった」というコメントを出していますが、今後、香港の民主主義・自由主義の維持のために何ができるのかに注目が集まります。
周庭さんは日本のポップカルチャー・芸能が好きで水泳が得意
中国の強権的な支配・弾圧にも負けずに、民主主義固守の持論を主張して戦い続けている勇敢な周庭さんですが、その素顔は若者らしくアニメ・漫画・音楽を愛好しています。
日本のアニメやポップカルチャーにも強い興味を持っていて、日本のアニメを見ながら日本語を覚えたそうです。そのため、周庭さんは日本語でもかなりのコミュニケーション能力があり、日本語でSNSの情報発信・主張を行ったりもしています（中国の監視が強まっているので今後も続けられるかは不透明です）。
日本のアニメでは「Fate/Zero」が好きなことを明かしていて、本人は「オタク」を自認しているといいます。モーニング娘。の香港公演に行ったり、佐藤健・嵐の二宮和也・有吉弘行のファンだったりもするようで、かなりの親日派と言えるでしょう。
日本の大学などの会場で政治的な講演会・勉強会を何度も行ったことがあり、香港の自由民主主義や反政府デモで実現したい自由社会のある種のモデルとして日本を見ている面もあるのかもしれません。
スポーツは水泳を幼い頃からやっていて、競泳水着姿でPVに出演していたりしていて、周庭さんがリスクのある政治活動だけでなく、普通の女子大学生らしいカルチャーやスポーツもたくさん楽しんできた人であることが伝わってきます。
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