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映画『寝ても覚めても』の感想

寝ても覚めても 映画

『寝ても覚めても』のストーリー自体は予測可能なもので、真面目で優しくて責任感のあるサラリーマンの亮平と交際を深めていき、朝子が亮平と結婚間近になった段階で、朝子の前に再びモデルとして成功した鳥居麦が姿を現すことになります。

亮平は朝子から「前の恋人の麦と似ているから、初めは惹かれた」という事実を打ち明けられていましたが、亮平は努めて麦のことを意識しないようにしていました。

ところが、麦が「迎えに来たよ」と来た瞬間に、朝子は反射的にそれまでの亮平との関係が何もなかったかのように、レストランを飛び出して麦についていってしまうのです。

タクシーに追いすがって止めようとする亮平、亮平の顔も見ずに車を出してという冷たい朝子のシーンは、「恋愛の理不尽劇の極み」を巧みに描いていますが、普通の幸せに至れる結婚直前の段階で元恋人からかっさらわれるのプロットは、古典的な恋愛映画では王道でもあります。

朝子から何の説明もなく立ち去られた亮平は茫然自失の態となっているが、朝子も「理性の停止した本能の揺さぶり」によって何の倫理的な抵抗も感じずに、麦と一緒に車に乗り込んでしまったのでした。

麦と亮平はまったく同じ顔をした二人の男ですが、性格や生き方の中身は正反対であり、ある意味この時点の朝子は「初期に刷り込まれた愛情・衝動」に突き動かされているように見えます。

しかも実際に唐田えりかが劇外において東出昌大に惚れてしまった裏面もあるので、「理性の停止した本能の欲望・刷り込み」で人の道を踏み外すという図式が二重性と予兆性を帯びています。

映画「寝ても覚めても」では、朝子が亮平の存在と今までの付き合い・人柄を思い出し、最終的には麦との関係に終止符を打って、自分の意志で亮平の元に戻るのですが、リアルでもありそうな無さそうな(対照的な性格・生き方の二人を巡る)三角関係の恋愛話になっています。

自分を確実に幸せにしてくれそうな真面目な亮平をいったん裏切ったことで、朝子は「俺はお前のことを一生信じないから」と言い放たれるのですが、それでも亮平と一緒にいたいという辺り、麦と相手は変わっても二人の運命や朝子の狂気をふと感じさせるエンディングになっています。

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