1. クラスター(感染者集団)の早期発見・早期隔離
日本では新型コロナ感染者が発見された場合に、その感染者が直近に接触した人たちやその空間(ナイトクラブなどの場所)を特定して、「クラスター(感染者集団)」をできるだけ全体的に二週間以上は隔離する政策(自宅待機含む)を取ってきました。
感染ルートを完全にはたどれない感染者も多く出ましたが、可能な限りクラスターに含まれていたと考えられる人たちを隔離しました。
この隔離・自宅待機の対応で、「不特定多数への追加的感染」を防御したことで感染者数増加に歯止めがかかったのではないかと考えられます。
2. 新型コロナ重症患者に医療資源を集中できた医療体制の維持
日本では感染者数が爆発的に増加しなかったため、厳しい基準によりトリアージ(救命率・年齢などによる患者選別)は行われませんでしたが、「軽症患者」と「重症患者」の治療対応には明らかな区別をつけてきました。
自力歩行できて高熱が出ておらず呼吸器への負担も少ない軽症患者は、ほとんどの人が自宅待機での治療(悪化したら入院対応)をさせられましたが、このことが「医療資源の絶対的不足(=医療崩壊につながるプロセス)」を防いだとも言えそうです。
感染症専門医や医療スタッフ、ICU(集中治療室)、人工呼吸器やECMOなどの医療資源を、「死亡リスクも想定される重症患者」に集中させることで、「感染者に対する死亡者の比率」を下げられた可能性があります。
3. 日本人の清潔観念と新しい行動様式への適応
日本は元々公衆衛生が優れていて、公共の施設・トイレなども諸外国と比べると清潔な状態が保たれやすくなっています。手洗い・うがいの習慣も、コロナ前にはいい加減な部分があったとしても、それなりに外出から帰ったら手洗いをする人の比率が高かった可能性があります。
また新型コロナウイルス感染予防に役立つとされる「新しい行動様式」への適応度が、日本人は欧米人よりも高いとも言われています。元々、日本人は「お辞儀の文化」で顔見知りの人と会っても、「お互いの身体に触れるあいさつをする文化」を持っていません。
感染者・死亡者の多いイタリアやスペイン(フランスも)は特にそうですが、友人知人と道端で会った時などにも、ハグをしたり頬に触れたり軽くキスをしたりするような文化が根付いていて、「スキンシップゼロの新しい行動様式」にはなかなか馴染みにくいと言われています。
ウイルスの飛沫感染を防ぐため、約2メートル以上は他者と距離を取りなさいという「ソーシャル・ディスタンス」にしても、日本人のほうが欧米人よりも実践できている率が高いと推測されます。
4. 日本人のBCG接種率の高さ・新型コロナに対する一定の免疫力
日本人の新型コロナの感染率・死亡率が低い生物学的理由として、「BCG接種率の高さ」によって「新型コロナに対する弱い免疫」をすでに持っている人が多いという仮説もよく挙げられています。
BCG接種が弱い免疫獲得の原因として有力視されていますが、BCGでなくても「過去に、新型コロナと類似した構造・特性を持つ別種のウイルスに感染した履歴を持つ人」が日本人には多いのではないかと合理的に推測することができます。
一般的な感染症進行のプロセスでは、ウイルス感染後に「IgM(抗体)が急激に上昇して、その後にIgGが上昇しながら重症化するケース」が多くなります。
しかし、日本人は「先にIgGが上昇する人(IgM上昇速度が緩やかでそこまで増えない人)」が多いという違いがあり、その違いが「新型コロナウイルスに対する弱い免疫がある状態(過去に類似ウイルス感染歴があるために重症化しにくい状態)」を示唆しているのではないかという仮説もあるようです。
現時点では「日本人・アジア人が新型コロナウイルスに感染しにくく重症化(死亡)しにくい理由」は特定されていませんが、統計的な数値から「日本人・アジア人は欧米人と比較すると新型コロナウイルスの人的被害が小さく死亡リスクは低い」ということまでは言えそうです。
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